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電卓の歴史


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全体の流れ

最初の電卓は米国で開発されたが、すぐに日本メーカーが参入した。電卓は日本の「ものづくり」技術に合致した製品であり、世界市場を席巻した。
 電卓の技術は、情報機器の発展に大きな貢献をしている。その多くは、日本が最初に実現したのである。

電卓の生産・需要の推移
出典:瀬尾悠紀雄「電子式卓上計算機技術発展の系統化調査」
http://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/021.pdf

国内需要は急速に増大したが、国内メーカーの生産はそれをはるかに上回り、1980年代までは生産の大部分は輸出向けであった。
 1970年代初頭は多数の電卓メーカーが出現したが、価格競争、品質競争により次第に撤退し、1980年代にはシャープ・カシオ2社の独占状態になった。

1990年代になると状勢が一変した。国内市場は飽和状態になり新規需要は低下した。また、価格競争の激化により、生産を中国などに移転して逆輸入するようになった。量販店などでは日本メーカーのブランドが多いが、中国などで生産されたものである。

それに伴い、国内生産は多機能高級機へシフトした。安価な機種は数百円なのに、国内生産の平均単価が5千円程度で推移しているのはそのためである。

1990年代後半からは、パソコンが普及した。パソコンには電卓機能が標準装備されているだけでなく、表計算ソフトもある。そのためビジネス用や固定型の電卓の需要が低下した。
 さらに、携帯電話やスマートフォンなどが電卓機能をもつようになり、個人用モバイル型の分野でも単体としての需要が低下した。


主要年表と代表的な機器

ここでは日本メーカーが世界をリードしていた1970年代までを対象にする。

1960年代前半:電卓の誕生

  • 1963:Anita Mark8(Anita C/VIII)(英Bell Punch and Sumlock-Comptometer)
    世界最初の量産電卓。真空管式
    大きさ 376(W)×450(D)×255(H)mm、重量 13.9kg 現在のノートパソコンより大きく重い
    価格 約 $1,000
    写真出典:Rick Bensene「the Old Calculator Web Museum」(Anita C/VIII)
  • 1964:CS-10A(シャープ 当時早川電機工業)
    日本最初の電卓。世界で最初のオールトランジスタ型電卓(トランジスタ 530個、ダイオード 2300個)
    大きさ 420(W)×440(D)×250(H)mm、重量 25kg、消費電力 90w
    価格 535,000円(当時の1,300CCの乗用車日産ブルーバード(540,000円)とほぼ同価格)
    写真出典:シャープ「液晶電卓進化の歴史(年表)」
    これを皮切りに、1964年にはキャノンの「Canola 130」 、大井電気の「アレフゼロ 101」などが販売され、日本の電卓元年になった。
  • 1965:Casio-001(カシオ)
    最初のテンキ-電卓
    現在の電卓シェアのトップメーカーであるカシオは、機械式(リレー式)計算機で成功していたので、電卓への参加は1965年の「001型」が最初である。カシオは以前からフルキーではなくテンキ-を採用していたが、これが最初のテンキ-電卓になる。
    写真出典:カシオ「電卓の歴史 電卓草創期」

1960年代後半:IC/LSIの採用

  • 1966:CS-31A(シャープ)
    世界初のバイポーラ型ICを採用。
  • 1966:Busicom 161(ビジコン 当時日本計算器販売)
    最初の超小型コアメモリを採用
    メモリーがついた高性能電卓
  • 1967:ICC-500(SOBAX)(ソニー)
    ソニーも1964年電卓の試作品を発表していたが、量産したのはこれが最初。
    充電池を搭載できる最初の電卓。6.3kgで現在からみれば重いがポータブル電卓として注目された。
  • 1967:CS-16A(シャープ)
    世界で最初のMOS・ICを採用(小消費電力 10w、軽量化可能 4kg)価格 230,000円
    写真出典:電卓博物館「CS-16A (Sharp)」

  • 1969:QT-8D(シャープ)
    世界初のLSI化電卓(LSI 4個、IC 2個)
    10万円を切り、「電子ソロバン」と呼ばれて普及
    135(W)×247(D)×72(H)mm、重量 1.4kgとかなり軽量化した。
    写真出典:シャープ「液晶電卓進化の歴史(年表)」

  • 1971:Busicom 141PF(ビジコン)
    その後、ビジコン社は電卓用のチップの開発に取り組み、インテル社の最初のマイクロプロセッサ4004の共同開発を行い、それを電卓に搭載した。
    写真出典:電卓博物館「ビジコン デスクトップ電卓」

1970年代前半:現在の電卓へ進化

ポケット電卓の誕生

  • 1970:Pocketronic(カシオ)
    世界で最初のポケット電卓
    テキサス・インスツルメント「Cal Tec」の設計に基づきカシオが量産
    蛍光管は搭載せずソリッドステートサーマルプリンタ方式を採用
    101(W)×208(D)×49(H)mm。本体820g。「ポケット」というにはやや大きいが・・・
    写真出典:電卓博物館「Pocketronic (Canon)」
  • 1971:LE-120A(ビジコン)
    実際の最初のポケット電卓
    ワンチップLSIにより、64(W)×123(D)×22(H)mmを実現
    写真出典:電卓博物館「ビジコン社の歴史」

価格競争

  • 1971:Omron 800 (オムロン)
    ワンチップLSIを採用したデスクトップ電卓で、49,800円(当時の電卓の価格相場の半額程度)で発売。これより低価格競争が激化。1970年での電卓市場は1000億円に達した。
  • 1972:カシオミニ(カシオ)
    カシオが、軽量化、低価格競争に勝った電卓。
    サイズは、当時主流であった電卓の4分の1以下。価格は3分の1以下の1万2800円まで下げ、パーソナル電卓市場が創出された(発売後10ヶ月で 100万台、累計で1000万台を販売)。
    写真出典:カシオ「電卓の歴史 カシオミニの誕生」

液晶電卓の登場

  • 1973:EL-805(シャープ)
    最初の液晶電卓(単3電池一本で100時間使用)
    (これ以前にビジコン社が発表したが販売には至らず、米国ロイド社のAccumatic 100 は販売低調)
    これにより、蛍光管タイプの電卓は市場から消えた。
    78(W)×118(D)×20(H)mm。本体200g。価格 16,800円
    写真出典:シャープ「液晶電卓進化の歴史(年表)」

1970年代後半以降:薄型化競争

  • 1976:EL-8026(シャープ) 最初の太陽電池付電卓 65(W)×109(D)×9.5(H)mm。本体65g。価格 24,800円
  • 1978:カシオミニカード(カシオ) 名刺サイズ電卓。厚さ3.9mm
  • 1979:EL-8152(シャープ) 52(W)×96(D)×1.6(H)mm。本体36g。価格 7,900円
  • 1983:SL-800(カシオ) クレジットカード電卓。厚さ0.8mm、重さ12g。
  • 1985:EL-900(シャープ)
    85.5(W)×54(D)×0.8(H)mm。本体11g。価格 7,800円
    写真出典:シャープ「液晶電卓進化の歴史(年表)」