- UI(User Interface)
- ヒトとモノ(機器やシステム)の間のインタフェースです。利用者にとっての理解のしやすさ使いやすさといってもよいでしょう。それをユーザビリティといいます。
パソコンでいえば、
CUI(キャラクターユーザーインターフェース):キーボード操作、フォントなど
GUI(グラフィカルユーザーインターフェース):マウス操作、アイコン、メニューなど
に分けられます。
Webサイトでいえば、利用者がWebサイトを訪問したときの使いやすさのことです。画面のデザインやフォントなどの好感度、必要なページに到達するための適切なナビゲーション、誤解を生じないわかりやすい表示など、利用者とWebサイトの接点をよくすることです。
- UX(User Experience)
- ヒトがモノやサービスに触れて得られる体験や経験です。「使い勝手が良い」「目的のページに容易に達する」という利用者の評価だともいえます。
このWebサイトを利用して得られる経験や満足など全体的な概念です。魅力のある商品、注文にあたっての問い合わせシステムの整備、注文後の状況報告や納期、商品への満足など、Webサイトだけでなくサービス全体が対象になります。
健全なUXデザインとして、ピーター・モービル氏のハニカム構造が有名です。以下の7要素をValuableを中心としたハチの巣形で表現したものです。
- Useful 役に立つ
常に製品とシステムに有用であることを求め続ける勇気と独創性を持ち、保有している技術と手段を利用し、より有用性の高い革新的な解決策を定義する。
- Usable 使いやすい
ユーザーの目的実現に効率的・効果的なサポートを行う。
- Findable 探しやすい、迷わずに目的地に辿り着ける
ユーザーがほしい情報に辿り着けるような設計と、常に現在位置を確認できるような設計をする。
- Credible 信頼できる
提供するコンテンツに信憑性がある。ユーザーは提供されている内容に信頼できるかどうかの設計的要因を重視する。
- Accessible アクセスしやすい、誰もが見られる
ユーザーへの配慮を欠かさず行う。どのような状態の人でも利用できるようにする。
- Desirable 好ましい・魅力的
イメージ・アイデンティティ・ブランドなどの要素を含めた情動的なデザイン(Emotional Design)を駆使し、ユーザーに好感を持たせる。
- Valuable 価値がある
Webサイトはスポンサーに利益をもたらさなければいけない。非営利的な場合は、UXはミッションの実現を進行させる役割を持つ。営利的な場合は、UXは売り上げに貢献し、顧客満足度を上げる役割を持つ。
- UIとUXの関係
- UIはUXを高めるための重要な要素
UXに満足した利用者はリピート客になる確率が大になりましょう。UIが貧弱であれば、悪い印象を持つので満足が得られませんし、途中でサイトから去ってしまうでしょう。価値を生んでいるのはUX、UIはUXと利用者価値をつなぐ媒体的位置づけになります。優れたUXを実現するには、優れたUIが必要になります。
- UXにはUI以外の要素がある
優れたUIが優れたUXになるとは限りません。いかに利用しやすいWebサイトであっても、つまらないコンテンツ、貧弱な品揃えでは満足を与えることはできません。
- UXは特定個人、UIは万人が対象
体験の良し悪しは人によって異なるので、UXは個人により対応を変える必要があります。ところが、あまりにも多様なUIを設定することはできません。
- UIは開発者、UXは提供者
Webページでいえば、UIは多様な技法やツールを提供することであり、UXとはそれを組み合わせて利用者に合わせたページにすることだといえんす。分野が異なるので、別人の任務になりますが、顧客満足の観点から両者の意思疎通が重要になります。
HCD/UXD
- HCD(Human Centered Design、人間中心設計)
- UCD(User Centered Design、ユーザー中心設計)ともいいます。ほぼ同義語です。モノやサービスの設計段階からUIを重視するべきだとの考え方です。
多くの分野で重視されていますが、特に高度情報化社会においては、インターネットなどの情報活用知識が社会生活のハンディになってはならないし、利用にあたってのトラブルを抑制することが重要です。それにはユーザビリティの向上が必要です。
- UXD(User Experience Design)
- モノやサービスの設計段階からUXを重視する考え方です。市場で競争力を高めるには顧客満足を向上させること、すなわち優れたUXの商品サービスを提供することが求められます。
例えば、Webサイトを構築するときに試作品あるいは他社の類似サイトをモニタに操作してもらい、その操作の実際や感想を記録分析して、顧客満足度を上げるような手段です。さらには、顧客の本来のニーズを探求して、自動車会社が「車を売る」ことから「ドライブの楽しさを売る」として体験を重視するなど経営戦略の変更にまで有効な手段だといわれています。
このように、UXのほうがUIよりも利用者満足に適した概念ですが、あまりにも対象により対処方法・手段が異なります。それで、多くの規格や基準は、UIおよびHCDによるユーザビリティや人間中心設計を主として、UXを部分的に取り入れたような範囲になっています。
ユーザビリティの定義
Webアクセシビリティが、Webページを閲覧するときに、高齢者や障害者がもつハンディキャップをなくすことであるのに対して、Webユーザビリティは一般の人が利用する際の便利さのことを指します。
ISO/JISの定義
ISO 09241-11、JIS Z 8521(人間工学-視覚表示装置を用いるオフィス作業-使用性の手引き)では、ユーザビリティ(使用性)とは「特定の利用状況において、特定のユーザーによって、ある製品が、特定の目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザーの満足度の度合い」と定義しています(ISO 09241 は以前には ISO 13407 とされていました)。
- 有効さ(Effectiveness)
- ユーザが指定された目標を達成する上での正確さ、完全性
(やりたい作業を確実に達成できるか)
- 効率(Efficiency)
- ユーザが目標を達成する際に、正確さと完全性に費やした資源
(作業を短い時間で達成できるか)
- 満足度(Satisfaction)
- 製品を使用する際の、不快感のなさ、及び肯定的な態度
(利用した人が、また利用してみたいと思うか)
ヤコブ・ニールセンの定義
- ユーザビリティのゴール 5つの指標
-
- 学習しやすさ(Learnability)
システムは、ユーザがそれをすぐ使い始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない
- 効率性(Efficiency)
一度学習すれば、あとは高い生産性を上げられるよう、効率的に使用できるものでなければならない
- 記憶しやすさ(Memorability)
ユーザがしばらくつかわなくても、また使うときにすぐ使えるよう覚えやすくしなければならない
- エラー(Errors)
エラーの発生率を低くし、エラーが起こっても回復できるようにし、かつ致命的なエラーは起こってはならない
- 主観的満足度(Satisfaction)
ユーザが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できなければならない
- ユーザビリティ10原則
-
- システム状態の視認性を高める
- 実環境に合ったシステムを構築する
- ユーザーにコントロールの主導権と自由度を与える
- 一貫性と標準化を保持する
- エラーの発生を事前に防止する
- 記憶しなくても、見ればわかるようなデザインを行う
- 柔軟性と効率性を持たせる
- 最小限で美しいデザインを施す
- ユーザーによるエラー認識、診断、回復をサポートする
- ヘルプとマニュアルを用意する
電子政府ユーザビリティガイドライン
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/guide/security/kaisai_h21/dai37/h210701gl.pdf
本ガイドラインは、中央官庁のオンライン申請システム等のユーザビリティに関して、効果的かつ継続的な向上を図るために、新規開発や保守をする際に、企画、設計・開発、運用及び評価の段階で利用することを目的としたものですが、一般のWebサイトにも適用できます。
本ガイドラインでは「共通設計指針」として、次の13項目を掲げています。
- 利用手順
1 利用者が想定する流れに沿った手順にする
2 業務プロセス及び申請書等の様式の見直しにより、最小限の操作、入力で申請等ができるようにする
- 画面の構成
3 見てすぐ何をすればよいかが分かるような画面や手順にする
4 無駄な情報、デザイン、機能を排し、シンプルで分かりやすい画面にする
- 指示や状態のわかりやすさ
5 操作の指示や説明、メニュー等には、利用者が正しく理解できる用語を使用する
6 基本的な用語、指示、デザインには一貫性を持たせる
7 手続を行っている時に、システムが処理している内容を利用者がすぐ分かるようにする
- エラーの防止と処理
8 利用者が操作や入力を間違えないデザインや案内を提供する
9 確認画面を用意し、利用者が行った操作や入力の取り消し、やり直しが、その都度できるようにする
10 エラーが発生した時には、利用者が迷わずに問題の解決をできるように、必要な情報と手段を提供する
- ヘルプ
11 利用者が必要とする時に、ヘルプ情報やマニュアル等を利用できるようにする
- その他
12 情報提供については、言葉遣い、メニューの分類・順番や必要な情報の有無に配慮し、必要な情報が容易に理解できるようにする
13 障害者や高齢者に配慮し、
日本工業規格JIS X 8341シリーズ、
ISO/IECガイド71、
「みんなの公共サイト運用モデル(総務省)」
を参考に、その特性等を把握する
本ガイドライン(付属文書にも)では、モニター実験を実施するときの人選、アンケートや実験方法などに関しての解説もしています。
また、本ガイドライン策定に先立ち、典型的な申告業務を対象に行った「電子政府ユーザビリティ基本調査」(2009年)は、その具体例として参考になります。
関連事項
ユーザビリティとデザイン
- アフォーダンス
afford とは「提供する」の意味。アフォーダンスは「環境は人に、特定の知覚を引き起こさせている」という概念です。
例えば、机は、「物が置ける」物体だといえます。これを机と人の環境において「座る」アフォーダンスが存在するといいます。また、身長に合致した人には「座る」こともできますから、複数のアフォーダンスが存在することもあります。小さい子供は座れないので、このアフォーダンスは存在しません。
- シグニファイア
アフォーダンスをデザイン分野で捉えると「デザインの工夫により、新しいアフォーダンスを創出できる」といえます。それをシグニファイアといいます。
例えばドアには、押し戸と引き戸があります。押す個所に平たい板をつけておけば、これが押し戸だと容易に理解できるでしょう。
信号機はシグニファイアの代表例です。一般的赤は「危険」「否定」、青は「安全」「肯定」のイメージがあります。このイメージで信号機の色が設定されたのか、信号機の普及でイメージが強化されたのか不明ですが、多くのデザインに取り入れられてます。
アフォーダンスは、環境からの情報を元にするため自身の知識の有無は関係ないので「知覚」の分野です。それに対してシグニファイアは、人が持つ知識を活用しているので「認知」の分野になります。
- ピクトグラム
非常口やトイレなどのマークなど、万人が理解できるマークです。自然発生的に作成されてきたため、国や環境により異なるマークが使われてきましたが、国際的な統一化が進んでいます。
ユーザビリティの評価手法
- ヒューリスティック評価法
ユーザビリティの専門家が、評価対象のサイトを見て、自身の経験や知識を基にして評価する手法です。効率良く短期間でチェックができる長所がありますが、専門家個人のスキルに依存する短所があります。
- 回顧法
テスタに評価対象サイトを見てもらい、その後、質問表で利用感想を聞く方法です。「使い勝手がよいか」とか「わかりにくい点は何か」などの質問に答えてもらうことにより、一般的な評価が得られますし、具体的な改良点の指摘も得られます。
- ユーザビリティテスト
テスタに実際に評価対象サイトを使ってもらい、その使用過程を観察することで、様々な問題点を発見する手法です。テスタが目的の情報を得たり、取引を完了したりするために要した時間、クリックの回数、戸惑ったことなどを測定する方法です。
時間での評価尺度にNE比(Novice Expert ratio)があります。設計者(そのWebサイトをよく知り、Web閲覧にも習熟している人)が目的を達成するのに要する時間と、モニターが要した時間の比率です。これが小さいほどユーザビリティがよいといえます。一般目的の場合では、NE比が4~5以下であることがよいとされていますが、効率を重視する場合や間違いが大きなトラブルになる場合には2以下にすべきだといわれています。
- 思考発話法
ユーザビリティテストとほぼ同じですが、テスタに作業をしてもらいながら、作業中に思ったことをその都度「発話」してもらう手法です。単に動作を観察するよりも、その動作に伴う思考も分析できます。
- 認知的ウォークスルー
ヒューリスティック評価とユーザビリティテストを組み合わせた手法です。専門家が、自らテスタになったつもりで評価対象サイトを使いながら、各種のデータを収集し分析します。
CMS(Content Management System)
Webサイトの管理、特にアクセシビリティ対策のツールとして、CMS(Content Management System)の採用が効果的です。
CMSとは、Webサイトの素材データとデザインやルールなどを一元管理するシステムです。CMSの持つ機能は、製品により、あるいは設定によりまちまちですが、一般的に次のような機能を持っています。
このよう機能は閲覧者の立場からも効果的ですが、Webサイト管理者の立場でも、公開コンテンツの公開ルールの順守、コンテンツの作成や更新の管理、公開時の確認などの労力を改善することができます。
- デザイン等の統合
- 各ページが統一されたレイアウトのWebページになります。ページ間のリンクが自動作成され、しかも統一した操作になります。それで、閲覧者が使いやすいサイトになります。
- アクセシビリティ対策
- 例えば画像には自動的に代替テキストが付けられるなど、JIS規格等のルールが強制的に確保されます。さらには、使用禁止用語や個人情報などを検出して注意を促す機能もあります。
- Webページ制作の知識不要
- このように、誰でも一定のルールに従ったWebページが作成できますので、各部署で分担してWebページの作成・更新が容易になります。それにより、Webマスター(Webサイト構築管理者)の負荷が削減できますし、作成を通して職員のアクセシビリティやWebサイトへの意識向上にも役立ちます。
- セキュリティ/責任の明確化
- CMSでは、Webページの作成→承認→公開の作業の流れを制御します。決められた項目を決められた担当者が作成すると、承認者にその原稿が送付され、承認を得たら公開担当者に送付されて公開するという手続きがルール化されるのです。しかも、それらの状況がすべて記録されますので、セキュリティ/責任が明確になります。
- 素材管理
- バックナンバー管理により、過去の記事を取り出すことができます。また、記事・写真などを部品化しておき、必要に応じて再利用することができます。
- 他システムとの連携
- 例えば毎月同じような統計データをグラフにしてWebページに掲げるとき、Excelデータを変更するだけで自動的にグラフが置き換わるような機能を持つCMSもあります。
Webサイトの見出しや要約などを構造化して記述し、更新があったときに配信するサービスをRSSといいます。自治体でのRSSサービスが求められていますが、これらを自動化する機能を持つCMSもあります。