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プライバシー権

キーワード

人格権、プライバシー権、肖像権、パブリシティ権、誹謗中傷、名誉毀損


包括的権利

人格権

後述のプライバシー権に似た概念ですが、プライバシー権よりも広く、平穏安全な生活を営む権利(平穏生活権)も含み、騒音,振動,悪臭なども人格権侵害になります。

プライバシー権

「表現の自由」「報道の自由」「知る権利」などは基本的人権の重要な権利ですが、他人のプライバシーを侵害することまでも認めているのではありません。

プライバシー情報とは、次のすべてを満たす情報だとされています。
  ・私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれがある
  ・一般人が公開を欲しない
  ・一般の人々にまだ知られていない

民法709条により、プライバシーの侵害は不法行為に該当すると定められています。プライバシー権が侵害された場合は、公開を止めさせ回収させる差止請求、生じた損害についての損害賠償請求をすることができます。

公人や有名人はプライバシー侵害が適法となることがあります。
 議員立候補者のプライベートな行動などは有権者の評価に有用な情報ですので「知る権利」が優先されます。
 有名人は、一般人の目に触れることが多く、興味を持つことは想定内と解釈されるので、SNSなどで目撃情報が流されれても、不利益の程度が小さい場合は違法にはなりにくいことがあります。

個人情報保護法は、本人の承諾なく個人情報を漏らすことを禁じた法律で、プライバシー権の保護とかなり共通する部分があります。これに関しては別途取り扱っていますので、ここでは同法以外の事項を取り扱います。

個別の権利

プライバシー権を、対象の特性などの視点で区別すると、次のような権利があります。これらの境界は明確なものではなく、どの権利が適用されるかは状況により異なります。

肖像権

肖像権は「容姿などの肖像をみだりに他人に撮影・描写・公表などされない権利」で、主に人格的利益を優先した権利です(「財産的利益」はパブリシティ権になります)。
 肖像権を直接的に定めた法律はありませんが、プライバシー権に基づき、民法709条の不法行為に該当するといわれています。

友達とのSNSに観光地の写真を載せたいが、遠景に人物が写っていることがあります。その人を探して承諾を得るのは事実上困難ですし、そこまで制限したら、ほとんどの市街地写真は公開できなくなります。
 逆に、通行中に写真を撮られ、素敵な着こなしだとして公開されたとき、撮影者に悪意はなくても、当人にとって迷惑だということもあります。
 また、写された人がアイドルなど有名人の場合、人の目を引く服装で街中を歩けば、写真に撮られ公開されることは、本人も十分に承知しているでしょうから、権利を主張するには相当な理由が求められましょう。
 このように、肖像権の境界を厳密に規定することはできません。判例でも「常識的な」範囲になっているようです。

パブリシティ権

例えば、有名人の写真や氏名を商品の広告などに使えば、販売が増加するでしょう。本来ならば、出演料などで利益が得られるのに、無断使用されたらその利益を失ってしまいます。有名人でなくても、そのような損害を受けることがあります。
 パブリシティ権とは、自己の氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利(つまり無断で第三者に使わせない権利)です。
 肖像権が主に写真や似顔絵などを介した人格的利益を対象にしているのに対し、パブリシティ権は、氏名なども含めた財産的利益を対象にしています。

パブリシティ権は、肖像権と同様に、個別の法令で定義や保護はなされていませんが、民法で逸失利益を求めて利用の差し止めや損害賠償を要求できます。
 さらに、その無断使用の内容がプライバシーの侵害になるときは、誹謗中傷や名誉棄損に相当することもあります。
 反面、報道や伝記などに使用される場合は、パブリシティ権の侵害にはならないようです。

誹謗中傷

「誹謗中傷」は法律用語ではないが、一般的に、「他人を悪くいうこと、根拠のないことをいいふらして名誉を傷つけること」とされています。プライバシー権の一部で「悪口をいわれる」ことを対象にしたものです。

近年、SNSを介した誹謗中傷やいじめが社会問題になっており、刑罰が適用されることが多くなってきました。
 相手の名前を挙げた上で「死ね」「消えろ」と書き込むのはもちろん、「ブス」「デブ」「クサイ」など人格を否定するような内容も法的責任を問われることが十分にあります。
 民法だけでなく刑法の対象になることもあります。相手が個人のときは「名誉毀損罪」「侮辱罪」、法人のときは「信用毀損罪」「業務妨害罪」が該当します。

誹謗中傷と批判は異なります。誹謗中傷は「相手の人格に対する悪口」ですし、批判は「相手の行動に対する評価、相手の主張への反論」です。政治家や学者の主張に対して、理由を示して反論するとか、有名人の犯罪に対して、有名人としての自覚を促すなどの発言などです。批判は相手にとってマイナスでしょうが、誹謗中傷にはならないとされています。

名誉毀損

他人の名誉を傷つける行為です。誹謗中傷と似ていますが、誹謗中傷が不法行為を示すのに対して名誉毀損は法的な措置だといえましょう。不法行為の範囲に若干の違いもあります。
 刑事名誉毀損と民事名誉毀損があります。
 刑事名誉毀損では、明文化した公然性が要件になります。さらに、具体的事実を摘示した名誉毀損罪とそうでない侮辱罪に区分されます。
 民事名誉毀損では、公然性は要件となっていません。事実を示した場合だけでなく意見ないし論評であっても社会的評価が低下すれば名誉毀損による不法行為が成立するとされています。誹謗中傷に該当しない批判も含まれるのです。


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