IT基本法、IT戦略本部、e-Japan戦略
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000144
1980年代末からのダウンサイジング、パソコンの普及、1990年代中頃からのインターネットの普及など、IT環境は大きく変化しました。
IT環境変化の動向への対応やその活用への取組みが、社会や経済など広範囲に大きな影響を与えました。その影響は産業革命に匹敵するとされ、IT革命といわれるようになりました。企業のIT利用の差が生産性・収益性の差になり、国際競争力の差になっていると指摘されました。
1980年代中頃まで、日本は高度成長を遂げ国際競争力は「Japan as No.1」とまでいわれました。それが1988年頃からのバブル崩壊、1997年頃からの平成不況により、日本経済は急速に低下しました。それに対して米国、北欧、東アジアが国際競争力を高めました。その一因がIT革命への対処であり、日本はこの重要なときに、不況のため十分なIT投資ができなかった(しなかった)からだと指摘されました。
国は、このような事態を打破するために、2000年に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法と略します)を策定、急速に世界トップレベルのIT立国を目指しました。
第1条(目的)
この法律は、
(状況認識)
情報通信技術の活用により世界的規模で生じている急激かつ大幅な社会経済
構造の変化に適確に対応することの緊要性
にかんがみ、
(施策)
・高度情報通信ネットワーク社会の形成に関し、基本理念及び施策の策定に
係る基本方針を定め、
・国及び地方公共団体の責務を明らかにし、
並びに
・高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部を設置する
とともに、
・高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する重点計画の作成について定める
ことにより、
(目的)
高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進する
ことを目的とする。
「高度情報通信ネットワーク社会」とは、単純にはインターネットのブロードバンドによる利用が通常な環境になり、その高度な活用が広範囲に活用されている、高度情報化社会の成熟段階だといえます。「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」はIT戦略本部と略します。
目次構成は、第1章第1条の「目的」を敷衍したものになっています。
第1章(第3条~第9条)で、IT活用により実現すべき社会(高度情報通信ネットワーク社会)と留意事項を示し、第2章(第16条~第24条は、それを実現するための分野を示し、第4章第36条で具体的な施策を示したものだといえます。
そして、第1章(第10条~第15条)で、これらを実現するのは国及び地方公共団体の責務だとし、それを統合的な観点から方向付けと工程を策定する強力な組織として第3章(第25条―第35条)でIT戦略本部を設置しました。
社会や経済を取り巻く環境は激変しますし、ITの発展は急速で、社会や経済に大きな影響を与えます。そのため、各条で掲げた項目は、本法成立当時としては適切なものであっても、時代とともに軽重の差がでるでしょうし、新しい課題が発生します。そのため、常に変化に即応するためにIT戦略本部を設置し、そこでの検討に期待したのだとも考えられます。
IT基本法により設置された高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部は,略称をIT戦略本部といいます。本部長を内閣総理大臣とした、内閣官房の組織で、各省庁を統合した中長期のIT戦略の方向付けをして推進する任務をもっています。
IT戦略本部は、2001年1月にe-Japan戦略を取りまとめました。IT基本法の目的を実現するために,2005年までに世界最先端のIT国家となることを目標に,重点4分野を掲げました。
e-Japan戦略は、国のIT推進5か年計画という位置づけであり、その後、環境の変化に対応して、継続的に中長期計画を策定し、推進してきました(参照:「国のIT戦略」)。