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情報と社会
身の回りの情報化
本章では近年身の回りで起こっているITの発展をトピックス的に展望します。長期にわたるITの歴史に関しては、別シリーズ「IT関連の歴史」を参照してください。
キーワード
パソコン、携帯電話、インターネット、EC(電子商取引)、教育とIT、自動車とIT、地上デジタル放送、東日本大震災とIT
パソコン
- パソコンの性能は指数的に向上してきました。→ムーアの法則☆
ムーアの法則とは「集積回路の集積度は18~24ヵ月ごとに2倍になる」という経験則ですが,パソコンの性能は指数的に向上するという意味でよく用いられます。
パソコンはすでに1970年代から存在していたのですが,当時は電子おもちゃのようなものでした。☆
パソコンがビジネスに使われるようになった1980年頃は5MHz程度だった☆のが、現在では、通常機でも2~3GHz(5000倍)になっています。
- パソコンの主流が、デスクトップからノートパソコンへと変化してきました☆。
さらにタブレットパソコンへと進んでいます☆。
- パソコンの価格も低下しており(図表)、その世帯普及率も80%を超えました。パソコンの利用能力はすでに社会的常識になったといえましょう。(図表)
参照:「パソコンの歴史」
携帯電話
- 現在の携帯電話は1億台以上になり、既に飽和状態になっています。☆
- 携帯電話の世代は3G(第3世代)から4G(第4世代)へと移行しており☆、高速、多機能化が進んでいます。☆
- スマートフォンが急激に普及してきました。すでに販売数では従来の携帯電話を抜くまでになり、2015年には、契約数でも過半数になると予測されています。☆
参照:「携帯電話の歴史」、
「スマートフォンの歴史」
インターネットの普及
- インターネットの歴史は古く1960年代にまで遡ります☆が、急激に普及したのは1995年です☆。
それが2010年には世界のインターネット人口は20億人を超えました。日本では、世帯普及率では90%、人口普及率では80%近くになっています。
(図表)
- 利用回線のプロードバンド化、光ファイバ化が進んでいます
(図表)。
しかも、世界で最も高速で低廉になっています。(図表)
- 大量データを無料で保管したり、ワープロソフトや表計算ソフトなどを無料で使えたりするサービス(個人向けクラウドサービス)が普及してきました。☆
- 現在では、情報機器やネットワークの存在すら意識せずに利用している状況になり、ユビキタス社会といわれるようになりました☆。利用環境や用途も、当初とは大きく変わり、Web2.0(Web環境の第2世代)になったといわれています。☆
EC(電子商取引)の普及
- インターネットでの個人向け取引をBtoCというが、BtoCは毎年活発になっています。☆
- 広告の分野では、インターネットでの広告費は、2006年には雑誌広告を抜き、2009年には新聞広告を上回り、テレビに次ぐ「第2の広告媒体」になりました。☆
- Suicaのような電子マネーも普及しました。その利用率は米国より高い状況です。☆
教育環境の変化
- コンピュータを使用した学習支援をCAI(Computer Assisted Instruction)といいます。CAIを基礎にしてインターネットなどの環境により、ITを活用した教育をe-ラーニングといいます。
- 初等(小学校)中等教育(中学校、高等学校)での情報教育が進展しています。小中高全体でのインターネット接続率は100%になり、パソコンの設置率は6人/台に近付いています☆。
最近は、電子黒板やデジタル教科書の導入が進んでいます。
- 高等教育(大学等)では、授業の教材一式をWebページで公開するOCW(オープンコースウェア)が広まってきました(例:一覧、MIT、東京大学、東京工業大学など)。
単位取得や卒業資格を求めないのであれば、大学卒業程度の知識は自宅で無料で得られる環境になってきたのです。
- 生涯教育や企業内教育では、Webを用いたWBT(web-based training)に発展し、e-ラーニングといわれるようになりました。
この教材でいえば、ほとんどの参考資料はインターネットで得られたものです。
自動車を取り巻く情報化
多くの工業製品にはITが組み込まれています(エンベッデッドシステム)し、それを利用するにもITが関係しています。私たちの生活はITによって支えられているといってよいでしょう。自動車を例にします。
- 自動車の機能の多くがコンピュータで制御され、生産コストに占める電子部品比率は大きな割合を占めています。☆
- 生産工場では、自動車の生産工場ではロボットが主な作業者ですしコンピュータで制御されています。☆
- カーナビの搭載率は既に過半数になっています。地デジAV、バックモニターなど多様な機能を一体化した高級化、小型で携帯ナビとしても使えるPND、そして、スマートフォンを利用した低価格のスマートフォンナビなど多様化してきました。☆
カーナビの搭載率は日本が最も高く、2005年頃に既に過半数を超えています。そして、ルート案内以外に、施設や観光地の案内、テレビ、道路交通情報通信システム、音楽や動画のダウンロード・再生など多様な利用をしています(マイボイスコム「カーナビの利用(第5回)」2010)。
それに対して欧米では2-3割にとどまっているそうです。しかし米国では、2014年までに米国で販売する全ての車にバックモニターの搭載を義務付けられるため、急激に増えると予測されています。
以前は日本メーカーが独占していたのですが、PNDに乗り遅れて現在ではシェアが急激に低下しています。自動車の伸びは先進国では飽和状態で、途上国で急速なので低価格製品の占める割合が大きくなってきたのです(矢野経済研究所「世界カーナビ/PND市場に関する調査結果 2010」)。
- ETC(Electronic Toll Collection)により有料道路での料金支払いが自動化しています。また、ETC車載器搭載車専用のスマートICが増加してきました。
- そのほか、道路標識はコンピュータでコントロールされていますし、Nシステムという監視カメラ装置でスピード違反などが監視されています。
放送のデジタル化と多様化
- 2011年7月(東関東大災害により、岩手、宮城、福島の3県は2012年3月)に従来のアナログテレビ放送が終了し地上デジタルテレビ放送(地デジ)に移行しました。
ハイビジョンによる高画質・高音質化、周波数の有効利用による多チャンネル化、データ放送による天気予報やニュース、電子番組表など多様な変化がおこりました。
- コミュニティFM放送、CATVによる放送、インターネット放送など、従来の放送局以外での放送が普及してきました。
大規模災害とIT
2011年11月の東日本大震災では、通信の確保、情報の提供などITに関する事項が大きく取り上げられました。
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- 被災地での音声電話が大打撃を受けたのに、インターネットを利用したメールやSNS、Webページの閲覧などはかなり利用できました。
- それらを利用した安否確認、情報提供サービスなどが、公共団体、プロバイダ、ボランティアなどから提供され役立ちました。
- 防災行政無線、緊急地震速報、災害用伝言ダイヤルなど従来から講じられてきた対策の効果が認識されました。それとともに、大規模災害では機能が発揮できないこともあり、さらなる対策が求められています。
その他トピックス
「○○年10大ニュース」などにあげられるような話題で、ITが大きく関係することが多くなりました。
- 制御システム攻撃ウイルスの出現
2010年7月 ウイルスによりイラン核施設の操業が一部中断
制御システムへの攻撃が行われたことは防衛上重要事件であり、高度化した社会インフラへの攻撃が懸念される。サイバー軍の組織化も進んでおり、陸海空、宇宙に続きサイバー空間も戦場になったといわれている。
- 機密情報の流出
2010年9月に発生した尖閣諸島周辺領海内における中国漁船衝突事件の映像が海上保安官によりYouTubeに流出された。
2010年10月、国際的には、政府や企業の機密情報公開を主目的とするサイトWikiLeaksが米外交文書を大量に流出、秘密文書も含まれていた。
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- ジャスミン革命、アラブの春
2010年から2011年にかけてチュニジアで起こった民主化運動(ジャスミン革命)は、ヨルダン、エジプト、リビアなど中東独裁政権の崩壊へと波及し「アラブの春」と呼ばれた。ジャスミン革命運動では、SNSのFasebookを通してデモへの参加を呼びかけ、映像配信により運動の実状が全世界に流され国際世論の支持を受けた。
- はやぶさの帰還と周波数帯
2010年6月にはやぶさが帰還したニュースは、多くの困難に打ち勝って最後に燃え尽きた姿が感銘を与えた。その裏で問題になっているのが周波数帯の割当問題である。打上当初からはやぶさとの通信周波数帯が限定され、その確保が関係者の悩みの一つであった。さらに、宇宙事業と携帯電話等との間で周波数帯の競合が発生している。
- 世界一の高速スーパーコンピュータ「京」
1990年代までは日本はスーパーコンピュータの中心だったが、2006年の地球シミュレータを最後に首位の座を追われていた、その間に中国の天河1号がトップになり、日本の競争力が低下していた。
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「京」プロジェクトは、民主党の「事業仕分け」で、「なぜ1番でないといけないのか、2番ではダメなのか」などの意見があり話題になったが、2011年6月には8.162PFLOPSを実現、世界最高速になった。
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理解度チェック:
正誤問題、
選択問題