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情報機器生産の国際比較
最近の電子工業分野における国内生産撤退事例
電子工業分野では、韓国、台湾、中国など海外メーカーの進出により、国際競争力が低下していましたが、2010年代になると、
・円高による輸出競争力の低下
・東日本大震災(2011年3月11日)とそれに伴う原発事故による工場被害と経済低下
・タイ大洪水(2011年11月)による日系企業工場の被害
・地上デジタル放送完全移行後のテレビ需要の低下
・それらによる国内メーカーの需要低下
などにより、大きな打撃を受けています。
最終製品分野
- 2011年、NEC・レノボ(中国)の合弁
2011年1月、NECとレノボは、日本市場での個人向けPCを対象とする合弁会社を設立することに合意、7月に持ち株会社「Lenovo NEC Holdings B. V.」(NEC49%、レノボ51%)が誕生した。
低コストでの生産、部品供給を必要とするNECと日本市場でのシェアを確立したいレノボの思惑が合致した結果だといわれている。
- 2012年、ソニーの大赤字
ソニーは2012年3月期決算で5,200億円の連結最終赤字の見通しを発表。テレビをはじめとするエレクトロニクス事業の収益悪化が原因だという。
ソニーは、電卓やウォークマンなど画期的な新製品、品質の高い製品により評価を得てきた企業であるが、近年、ヒット製品に成功していない。多くの製品分野がコモディティ化するのに伴い、低価格競争に対応できなかったのだとされている。
- 2012年、東芝、テレビ国内生産から撤退
地上デジタル放送完全移行後、液晶テレビの需要が落ち込み、テレビ事業が巨額赤字に陥った。その対策として、深谷事業所を閉鎖、海外工場で生産することになった。
部品、半導体分野
- 2012年、エルピーダ倒産
エルピーダメモリは、1999年に日立とNECのDRAM事業部門の統合により設立され(のちに三菱電機が参加)国内唯一、世界第3位のDRAM生産企業となった。DRAMは、パソコンやスマートフォンのメモリに使用される低速・低価格の記憶素子である。
2009年に改正産業再生法の適用を受け公的資金を注入を得たが赤字が続き、2012年に約5千億円の負債総額になり倒産。米マイクロン・テクノロジーに買収された。これにより、国内企業のDRAM生産が行われなくなった。
- 2012年、ルネサス大規模人員削減
ルネサスエレクトロニクスは、2003年に日立と三菱電機の半導体部門が合併し、2010年にNECも参加した半導体メーカー。自動車制御用マイコン、システムLSI、フラッシュメモリなど、高度技術を用いた半導体分野を主力としている。
東日本大震災では、半導体生産工場が長期の生産停止になるなど大打撃を受けた。
自動車制御用マイコン部門では利益を上げているが、システムLSI部門では電機メーカーの需要が大幅低下したために大幅な不調になり、全従業員の15%にあたる6千人の人員削減と500億円の増資が必要になった。自動車制御用マイコンなど利益分野に集中するという。
高度技術による注文生産が多いことが、価格競争や需要低迷への対応を困難にしたといわれている。
- 2013年、シャープ、サムスンとの資本業務提携へ
シャープは、液晶パネルの稼働率低下や大規模な赤字対策のため、安定した供給先の確保、資金の調達が必要になった。2012年に台湾FOXCONN(Hon Hai Precision Industry、鴻海精密工業)との提携が話題になったが実現せず、サムスンに液晶パネルを長期的かつ安定的に供給することに合意し、さらに2013年にサムスンと資本提携を締結することになった。