全体の体系
非常に単純化した典型的な情報システムの体系は次のようになります。実際には、もっと細かいレベルで情報システムがあり、複雑に連携しています。また、企業の業務は企業によりまちまちですし,情報システムを活用する考え方も異なりますので,情報システムの体系は企業により異なります。
会計システムを例にします。企業活動のほとんどは、おカネの出入りを伴いますので、すべての情報システムは会計システムにつながっています。会計システムを独立なシステムとすると,すべての会計伝票を手作業で入力することになりますが,これは非常に面倒です誤りが発生する危険もあります。販売システムでの売上データは会計システムでの売掛金の勘定項目のデータになるし,購買システムでの仕入データは買掛金勘定になるのですから,それらで得られた会計に関するデータのファイルを会計システムが読み込んで処理するほうが全体として効率的です。このように、個々のシステムは、単独に存在するのではなく、互いに連動して、全社システムを構成しているのです。
他のシステムと連動しやすいように、個々のシステムを設計することが大切です。例えば商品マスタファイル(商品台帳)は、販売システム、購買システム、会計システムなど多くの情報システムで利用されますが、それぞれの情報システムを設計するときに、その情報システムの都合だけで商品マスタファイルを設計すると、他のシステムで必要な項目がなく、別途に作成することになります。複数の商品マスタファイルが存在すると、商品情報に変更が生じたとき、すべての商品マスタファイルの同期をとることが困難になります。
また、販売システムの得意先コードと購買先の仕入先コードが別々に設計されていると、会計システムで清算処理をしようとすると、名寄せのための処理が非常に困難になります。
近年は、スピードが要求されます。昔は、収支状況は決算時に明確になればよかったのが、近年では毎月、毎日に収支状況を知って対策を講じる必要が出てきました。理想的には、売上データや購買データが入力された瞬間に財務諸表が更新されることが求められます。それを実現するには、全体的に統合した観点から、個々の情報システムを設計しなければならないのです。
個別システムの概要
ここでは個別システムの抽象的な機能の概要を示します。
例えば実際の受注システムでは、電話で受注する、セールス部員が客先を訪問して受注する、Web販売サイトで受注するなど多様ですが、その違いは考慮せず、すべて「顧客から注文がくる」というような抽象化をします。
また、受注では、顧客や商品がマスタに登録してあるかなど詳細な機能もありますが、ここでは主要な機能だけに限定します。
システムが持つべき機能は業種・業態により異なります。ここでは、業種・業態を適当に仮定しております。また、近年は企業間連携やアウトソーシングが広く行われていますが、ここでは無視しています。例えば共同物流などの場合は、その機能を社内にあるかのような取り扱いをしています。
例えば、在庫確認など小分類した機能は、販売システムや生産システムなど複数のシステムに重複します。ここでは重複したままにしています。
販売システム
販売管理システム
- 受注管理
顧客からの注文を受けることを受注といいます。受注したデータは、受注ファイルに登録されます。
受注時には与信限度額や納期を厳守できるか在庫を確認したりします。
- 売上管理
受注した商品を納入した段階で売上が発生します。受注ファイルから売上げたデータが売上ファイルに取り込まれます。
- 請求・債券管理
通常は月末に、売上ファイルから顧客ごとにまとめた請求書ファイルを作成し、請求書を発行します。
請求書ファイルは会計システムから見れば未払金ファイルになります。入金があったときに会計システムにより、未払金ファイルから削除されます。
購買管理システム
- 仕入管理
商品・材料などの在庫が少なくなったときに、卸売業者やメーカーから康達することを仕入といいます。
仕入先への注文書の発行、納入予定、入庫なでの状況を仕入ファイルとして管理します。
- 支払管理
仕入に伴う買掛金の管理です。通常は会計システムに組み込まれます。
在庫管理システム
- 在庫管理
在庫情報をデータベースとして保管、常に更新して、容易に検索できるようにした機能です。
出荷予定か確認したときに、引当数量に引当情報を付加し、出荷確定により、在庫数量から引当数量を減じます。仕入についても同様な処理をします。
定期的に棚卸をして、実在庫と照合・確認をします。差異が生じたときの在庫調整を行います。
- 出荷管理
販売管理での受注確定後、出荷指示を作成するまでの機能です。
振分処理:在庫データベースをもとに出荷先ごとに商品と出荷数を振分ける機能
出荷指示:振分処理のデータを納品書にして、物流システムに出荷を指示する機能
在庫更新機能:出荷予定や出荷の情報を在庫管理に伝える機能
- 入庫管理
入庫時の数量や品質の確認をして、定められた場所に保管します。
購買管理からの仕入情報を受けて、在庫管理に予定や増減の情報を渡します。
流通・物流システム
流通と物流とは似たような用語ですが、流通は物流と商流を包含したものです。
- 物流(物的流通)
商品を生産者から消費者へ届けるまでの流れ。物の地理的な移動。商品の運送だけでなく、保管や梱包などの過程も物流に含まれます。
- 商流(商的流通)
物流の過程で発生する、物品の所有権や情報の移動(流れ)を指します。受発注データの受け渡しや在庫管理、販売管理なども商流に分類されます。
商流機能の多くは「販売システム」の対象としたので、ここでは物流機能に限定します。
- 倉庫管理システム
- 販売システムの出荷指示により、商品を集荷し梱包してトラック等に積み込むまでの機能です。
WMS(Warehouse Management System)と呼ばれ、自動化・無人化倉庫も含む合理化の対象として注目されています。
- 在庫管理
これに関しては論理的には販売システムの在庫管理と同じですが、集荷管理を行うために、商品にICタグをつける、保管場所単位での管理を行うなど、より高度な機能が求められます。
- 集荷管理
ピッキングとは、出荷指示データにより、必要な商品を集めて梱包する作業です。
マテリアルハンドリング(Material Handling System:MHS)とは、倉庫内の商品の運搬を合理化し、運搬手法を活用して、経済性、生産性の向上を目的とする方法です。
これらは、物流分野だけでなく生産分野での工場にも広く活用されています。
そのために、ハードウェアとソフトウェアの技術が活用されています。
- 配送管理システム
- 倉庫で集荷された商品を顧客に届けるまでの機能です。
- 配送管理
配車計画ともいいます。配送ルートと時間指定、トラックとドライバなどを最適な組合せをして、時間厳守、労務条件、排気ガス規制などの制約の下で輸送コストを削減することです。
- 運行管理
運行管理は配送車両の運行状況を可視化することです。これにより、配送管理の実現状況を把握できます。
- 貨物追跡
運行管理の一つとして、貨物が現在位置の把握、顧客への配送状況の提供などを支援する機能です。
人事システム
- 人事・給与システム
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- 労務管理
労務関係法による従業員の個人情報、制度や福利厚生の利用の手続き、職階・職種・資格等の手当などの管理です。
- 勤怠管理
出退勤記録や休暇の取得状況の管理です。法的労働時間の遵守や、残業、休日出勤手当など給与計算の情報を得ます。
- 給与計算管理
給与、所得税、社会保険、年金関連、年末調整などの計算です。
- 人材マネジメントシステム
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- 採用管理
自社にマッチした人材を発掘し採用することが必要です。採用の方法と応募の状況や選考の記録だけでなく、自社社員の友人や知人によるリファラル採用、SNSなどを利用したタレントプールの形成など、多様な手段があります。
- 人事評価
従業員ごとの業務成果、本人の評価、上司の評価などを蓄積して査定して、給与への反映だけでなく、計画的な人事異動などを通してキャリアアップを図ります。
- 人材管理
タレントマネジメントともいいます。従業員の能力、スキル、実績などをデータベースとして管理します。企業の人材育成計画に合わせて、人材配置や能力管理に役立てる機能です。