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システムの活用
EDIとebXML
キーワード
EDI、EDI規約、ebXML、SO/TS 15000、OASIS
EDI(Electronic Data Interchange)
EDI(Electronic Data Interchange)には、二つの意味があります。
広義には、文字通り電子的データ交換であり、異なる組織間で、取引情報を、主として通信回線を介して交換することです。
狭義には、データ交換を標準プロトコル(EDI規約)に準拠して行うこと、そのEDI規約のことを指します。ここではEDI規約を対象にします。
UN/EDIFACT
国際連合の下位機関 UN/CEFACT(United Nations Centre for Trade Facilitation and Electronic Business、貿易簡易化と電子ビジネスのための国連センター)によるEDI規約です。現在の各種EDI標準はこれをベースにしています。次の4段階になっています。
- 情報伝達規約
- 企業間で通信を行うのに、インターネット(TCP/IP)を用いるのか、他のネットワークを用いるのか、その伝送手順は何を用いるのかといった取り決めです。
- 情報表現規約
- シンタックルールといいます。受発注データを送るとき、どれが発注者や商品を表すのかといった、データの記述方法に関する規約です。EDIでのシンタックルールをEDIFACTといいます。
また、これには商品コードや企業コードの統一も含まれます。流通業界、百貨店業界など業界ごとに標準化を進めています。食品や日用雑貨につけてあるJANコードもその一つです。
- 業務運用規約
- データを発注側が送るのか、受注側が取りに行くのかなどの方法や、エラー発生時の対処などの取り決めです。
- 取引基本規約
- 双方の企業がEDIで取り引きを行うことに合意する契約に関する規約です。
派生仕様
UN/EDIFACTでは、実務に即した詳細まで標準化することはできません。それで多くの業界分野で設定した規格が存在します。
規格化
- ISO 9735, JIS X 7011:行政,商業及び輸送のための 電子データ交換 (EDIFACT)
- JIS X 7011:行政/産業情報交換用構文規則 (CIIシンタックスルール)
- ISO 10303:STEP(Industrial Systems and Integration - Product Data Representation and Exchange、製品モデルデータの表現及び交換に関する標準
JTRN(Japanese Article Number Code)
JTRNは、日本における物流EDI標準(荷主企業と物流事業者とのデータのやりとりの標準ツール)の統一規格です。物流関連団体が共同設立した物流EDI推進委員会が開発・普及・改良・維持管理を行っています。
近年、企業間データ交換にインターネットを用いることが多くなり、それに合わせた新規格物流XML/EDI標準への移行が進んでいます。
ebXML(Electronic Business using XML)
SOAP(Simple Object Access Protocol)を拡張した規格で、主としてBtoB(企業間電子商取引)でのデータ交換のための複数の仕様群の総称です。ISO/TS 15000として国際規格になっています。
対象範囲は、取引伝票の伝送だけでなく、取引のプロセスやプロトコルの指定から、企業が取引相手を探すための仕様にまで多様に亘っています。EDIをXML文書のデータ交換に適用・拡充したものだともいえます。
OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards, 構造化情報標準促進協会)
XMLのビジネス利用に関する技術標準仕様を策定する国際的な団体です。
W3CがXML自体の比較的基礎的な仕様の標準化を対象にしているのに対して、OASISは主にXMLをビジネスなどに応用する分野を対象にしています。SOAPやebXMLはOASISで策定されました。
インターネッ環境でのEDI
従来の企業間通信手順
現在はインターネットがポピュラですが、従来の企業間通信は次のようなデータ交換手順があり、EDIの仕様もそれらを前提としていました。
- JCA手順(日本チェーンストア協会手順)
日本チェーンストア協会・通商産業省(当時)が制定したデータ交換手順です。これまでのEDIで、最もポピュラな手順でした。電話回線を使っているため、通信速度は2400bps/9600bpsで現在ではあまりにも遅すぎ、またモデムが必要です。
- 全銀協標準通信プロトコル
企業・銀行相互間のオンラインデータ交換において使用する標準通信プロトコルです。全銀プロトコル、ベーシック手順、TCP手順ともいいます。JCA手順と同様の回線事情のため、インターネットへの移行を進めています。
Web-EDI
Web-EDIは標準規格ではありません。従来のEDIの取決めに従い、Webサーバ上に構築したシステムを、Webブラウザから利用してデータの送受信など商取引を行う仕組みです。
従来のEDI取引では、電話回線やISDN回線の利用を前提にしていましたが、一般の通信ではインターネットが主流であり、多くのシステムがWebブラウザでの利用になっています。Web-EDIは、このような利用環境変化に応じたEDI利用方法です。
Web-EDIでは、クラウドにあるシステムをパソコンのWebブラウザで利用するのですから、次のようなメリットがあります。
- 専用の通信回線費用は発生しませんし、パソコンに専用のソフトウェアをもつ必要もありません。安価に手軽にEDI環境を構築することができます。
- 従来のEDI規約では、送受信するデータはテキストデータに限定されていましたが、漢字や画像などのデータにも対応できます。
- クラウド側に取引記録があるので、システムのオプションサービスによれば、決済などの関連業務も自動的に行うことも可能になります。
- インターネット回線を用い、サーバに情報が残ることから、セキュリティ面での不安はありますが、暗号化通信やサーバのセキュリティ対策など近年のセキュリティ対策技術により、むしろ安全性は高いといえます。
XML-EDI
インターネットによるクラウド環境でのEDIという面ではWeb-EDIと同じですが、XML-EDIは次の点で異なります。
- Web-EDIでの送受信データはHTMLで記述されますが、XML-EDIではXMLで記述します。
- しかも、その記述方法は国際規格であるebXMLに準拠しています。Web-EDIは手軽ですが、多様な仕様が混在していますので、場合によっては複数のセンタと契約したり変換ツールを用意したりする必要がありますが、XML-EDIが普及すれば、そのような無駄が解消します。
特に物流業界では、インターネットEDIの普及に合わせて、従来の物流EDI標準であったJTRNを、国際標準である物流XML/EDI標準への順次移行を進めています。