マイニングとは探鉱のことです。データマイニングとはPOSデータなどで収集した膨大なデータの山の中から,価値のある情報を発見することです。
顧客ニーズは多様でしかも変化します。顧客購買情報データベースを分析してマーケティングに活用することをデータベース・マーケティングといいます。顧客ニーズは客層により異なりますので,客層に応じたマーケティングをする必要があります。それをさらに推し進めると,一人一人の顧客(「個客」という)のニーズに合わせたマーケティングになります。それをワンツーワン・マーケティングといいます。
ここでは,このようなマーケティングが必要になってきた背景と,データマイニングがそれに役立つことを学習します。
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商品(サービスも含む)を生産者が消費者に提供することに関する企業の経営活動をマーケティングといいます。企業は製品を売ることにより資金や利益を得ているのですから,マーケティングは企業にとって最大の経営戦略だといえます。
昔は,大量生産・大量販売により品質が高い製品を低価格で提供することが企業競争に勝つ手段でした。それを生産志向マーケティング,販売志向マーケティングといいます。ところが,消費経済が成熟化した現在では,顧客はすでに必要な商品を持っていますし,多様な商品が氾濫しています。このような環境では,企業が考える「よい」商品を,企業からみた「安い」価格で提供しても売れません。顧客の好み(ニーズ)にマッチした商品でないと売れないのです。そうなると,顧客のニーズを正確にキャッチして,それに合致した商品を迅速に提供する必要があります。このように,顧客の立場になってマーケティングを行なうことを顧客志向マーケティングといいます。 |
生産<需要 生産志向 作れば売れた ↓ ↓ 生産>需要 販売指向 よいモノを安く作り | | 努力すれば売れた ↓ ↓ 生産≧需要 顧客志向 顧客が好むモノで ないと売れない (最近は,生活者志向,環境志向も) 図1−1 マーケティングの変化 |
顧客のニーズは多様です。ある人は価格が安いことを重視するし,ある人は品質を重視します。デザインの好みもあるし,メーカーやブランドで買う人もいます。顧客ニーズが多様だと,単一の商品が売れる規模が小さくなりますから,大量生産はできず多品種少量生産になります。
さらに同一顧客のニーズも変化が激しいのです。流行が短期間化したともいえます。先月まで人気のあった銘柄のお菓子が今月になったらばったりと売れなくなり,他のお菓子が急に売れるようになるのです。売れるのに生産が遅れると,せっかくの利益が得られません。それを機会損失といいます。逆に,現在売れているからといって大量に生産すると,売れ残ってしまいます。それを不良在庫といいますが,不良在庫は利益を極度に悪化させます。機会損失や不良在庫を避けるためには,顧客動向を迅速にキャッチして迅速に対処することが重要なのです。 |
図1−2 機会損失と不良在庫 |
自社の利益を与えてくれる顧客は大切にする必要があります。よく来店して大量に利益商品を購入してくれる顧客と,売り出しのときにだけきてバーゲン商品だけを買っていく顧客を同等にサービスするのはむしろ悪平等です。よい顧客には特別な景品を出すとか,観劇会に招待するなどの差別化をすることが,よい顧客を引き止める手段ですし,よい顧客になってもらう手段でもあります。また,来店してもらうためにDM(ダイレクトメール)を出すことがよく行なわれています。しかし,その費用がかかるので,DMにより来店するレスポンス率を高めることが必要ですが,それには催しに応じて送り先を考えることが必要です。
顧客を区分する手段として,従来からRFM分析あるいはRFMI分析が広く行なわれています。個々の顧客の過去の購買行動を |
図1−3 RFMの図 |
顧客ニーズを的確に把握してマーケティング戦略を立てるには,顧客の購買行動のデータを収集して多様な分析をすることが必要です。
POSスーパーストアなど小売店ではPOSが広く採用されています。これはレジ作業の合理化に役立つだけではなく,「いつ,どこで,何を,どれだけ」購入したかを収集するのに役立つのです。 カードPOSデータだけでは,肝心の「誰が」が入手できません。それを得るために,小売店ではポイントカードやクレジットカードなどのカードを発行して,個人情報と購買情報を突き合せることにより,全体の顧客情報が実現できるのです。 |
図1−4 顧客情報の収集 |
CRM(Customer Relationship Management)とは,1990年代末に発展した概念です。個々の顧客のことを個客といいますが,顧客を個客としてとらえて,その個客一人一人のニーズにマッチした製品を提供することにより,顧客との結びつきを強くしてビジネスを展開する経営手法です。これを実現するために情報技術を積極的に活用するのが特徴です。 しかしCRMは固有のシステムではありません。多様な情報技術を組合わせて,顧客との関係を改善するののです。以下にCRMを構成する情報技術の主なものを列挙します。 |
図2−1 CRM関連情報技術 |
POSやカードで収集した顧客の購買行動をデータベースに蓄積して,それを多角的に分析するマーケティングの方法をデータベース・マーケティングといいます。個客のレベルでデータベース・マーケティングを行なうことをワン・ツー・ワン・マーケティングといいます。 これを実現するのがデータウェアハウスです。データウェアハウスとは,大量のデータを利用者が使いやすい形でデータベースにして,利用者が多様な分析をする利用形態です。そのような分析を主体とする利用形態をOLAP(Online Analytical Processing)といいますが,それには多次元データベースが適しているといわれています。 |
図2−2 データウェアハウスとその周辺技術 |
例えば,月別,商品別,支店別の売上データは4次元のデータになります。これが多次元データです。それを縦軸に商品,横軸に月をとれば2次元表になります。この表で東京支店,大阪支店,全支店合計の表を見るスライシング操作,縦軸を支店,横軸を月というように異なる視点で見るダイシング操作,支店別を店舗別に展開したり店舗別を支店別に集計するドリリング操作などを行なうことにより分析します。そのようなソフトウェアをOLAPツールといいます。
データウェアハウスのもう1つの利用分野にデータマイニング(data mining)があります。マイニングとは探鉱のことですが,データマイニングとは,大量のデータを統計的分析することにより,気づかなかった法則を発見したり仮定した法則を検証することを指します。OLAPツールでは,事前に人間が切り口を指定して結果を求めますが,データマイングでは事前設定をせずに法則を求めることを目的としています。また,OLAPツールでは単純な計算が主ですが,データマイニングでは高度な統計的手法を用いるのが特徴です。
グループ分け,似たもの集めとでもいうべき手法です。例えば,顧客をいくつかの層に分類するとき,通常では性別,年齢別,購入金額別というように人間が事前に切り口を決めて分類しますが,クラスタ分析では,それらを事前に与えるのではなく,統計的にそれらの間にどのような関係があるかを調べて,似たようなものを同じグループにまとめるのです。それによって20代の女性と40代の男性で1回に購入する金額が高いグループとか40代の女性で1回の購買額は少なく購買頻度が多いグループなどに区分します。これによって,顧客を層別してそれぞれに適したマーケティングをすることができます。 決定木あるDMを発送して,来店した人・来店しなかった人に区分したとき,来店した人はどのような属性(年齢,性別,所得,家族数,職業など)を持つかを求める方法です。最も効率的な絞り込みを自動的に行って、「決定木」という見やすい形で表示します。 アソシエーション何と何が一緒に発生するかを発見する手法です。例えば,スーパーで一人あたりの売上を増大させるには,「ついで買い」をさせることが効果的である。商品Aを買う人は商品Bも買うことが多いことがわかれば,そのような併買商品を近くに陳列すると,顧客も便利ですし,ついで買いも高まります。そのような分析をバスケット分析といいます。このとき,商品が非常に多いので「A商品と併買する商品は?」「B商品では?」というように事前に商品を決めて分析するのは困難です。アソシエーションは,それを事前指定せずに併買関係を求める方法です。☆ 有名な例として,「紙オムツやベビーミルクとビールの併売」があります。米国では奥さんに頼まれてダンナが車でスーパーに買いに行くのが通常ですが,そのときに赤ちゃんのものだけでなく自分用にビールをケースごと買って行くのだと説明されています。でもこれは「伝説」でしょう。→参照:@IT情報マネジメント用語事典「おむつとビール」( http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/diapersandbeer.html) |
図2−4 クラスタ分析の出力例 図2−5 決定木の出力例 |
企業では商品の購入相談やクレームなどを扱うコールセンターを設置していますが,最近はこのコールセンターが注目されています。
現行の商品にどのような不満があるか,どのような商品を期待しているのか,商品のことは顧客に聞くのが一番です。それをアンケートなどの市場調査で行なうのでは費用もかかるし,企業側の質問だけで顧客からの意見を聞くことが不十分です。コールセンターは,顧客のほうからいってくるのですから,質のよい情報が比較的安価に入手できます。最近は,ここで得た情報を簡単に迅速にデータベースに入力することが重視されています。
顧客を満足させるには,電話を受けた担当者が的確な返事をすることが大切です。しかし,それにはベテランの担当者を多数配置する必要があります。それを解決するために,多様な工夫が行なわれています。
顧客の電話番号が登録されているならば,電話がかかってきたときに,顧客の電話番号がわかりますから,電話を取るまでに今までの購入履歴や保守履歴も含む顧客情報が担当者のパソコン画面に表示されます。顧客が商品名を告げたら直ちにその商品情報やそれの注意事項も表示されます。これを参照することにより,初心者でもベテランと同じ応答ができるようになります。このようなシステムでは電話とコンピュータを組合わせた技術を用いますが,それをCTI(Computer Telephony Integration)といいます。 |
図2−6 コールセンターの図 |
このようなシステムを利用して,コールセンターをアウトソーシングすることも行なわれています。それでも費用がかかる場合には,インターネットのWebページを整備した無人化も広く行なわれています。
次の文章のうち,正しいものには〇印をつけ,誤りのものには×印をつけて誤りを修正しなさい。