非IT系活動がシステム開発に与える影響が大きいことを、自社カードシステムの構築を例にして説明します(架空例)。
目的と結果
A社は、顧客の固定化を図ること、マーケティング戦略の推進のために顧客情報の入手が重要であることなどの理由で、自社カードを発行することを決定しました。
ところが、実施後にトラブルが続出して、その修正に大きな費用がかかっただけでなく、顧客からの信用が低下しました。しかも、意図した戦略立案に資する情報が得られなかったのです。
経過と原因
- 上記の案が承認されました。顧客へのサービス向上という名目にして、社外に公表し、実施開始時期も明言しました。
- プロジェクトチームがスタートし、開発ベンダも決定しました。
- ところが、入手すべき情報の選択、カードの機能、カードの提携先などについて、関係者の意見がまとまらず、なかなか要件が確定しません。
- 開発者(IT部門、ベンダ)は、スケジュールが遅れていることを心配して、見切り発車でシステム開発に取りかかりました。
- その後、非IT活動が進むにつれて、多様な問題が発生しました。
- 当初計画していた申込書での個人情報項目が加入者に反感をもたせている。クレジット取引に必要な項目なだけに絞るべきだ。(これにより、所期の顧客特性分析ができなくなる)
- 加入者サービスのために、多様な特典を加えるべきだ。それには複雑なポイント制が必要だ。
- カード取扱店を増やすには、カードから加工した情報を提供する必要がある。要求される情報は取扱店により異なるが、できるだけそれに応えるべきだ。
- これらは、システムへの要件追加・変更になります。大幅な作業が発生しました。
- 開発者は納期延期を提案したのですが、公表した開始時期を変えるのは信用低下になることを理由に却下されました。
- しかたなく、テスト不十分なまま実施に入りました。
- 多様なトラブル頻発が発生しました。復旧するのに大幅な時間がかかり、実質的には実施開始が遅れたことになりますし、加入者のカード利用は低迷しました。新聞などにも取り上げられたため、A社の信用は低下しました。
このように、非IT活動がプロジェクトの成否に大きな影響を与えるのです。