企業では、IT投資の評価をどの程度行っているのでしょうか。
経済産業省、日本情報システム・ユーザー協会『IT投資価値評価ガイドライン(試行版)について』2007年
では、その調査結果を示しています(図表)。
- 事前評価でも事後評価でも、実施している企業の割合は着実に増加しています。部分的に実施している企業は60%近くになっています。
- 事前評価のほうが事後評価よりも実施率が高くなっています。事前評価は投資案の採否に必要なので実施率が高いのは当然です。それに対して、事後評価の全面実施が低いのは、「開発するまでは厳格だが、その後はフォローしていない」ことが多いのではないかと考えられます。
- による格差が顕著です。1兆円以上の超大企業では、ほとんどがなんらかの基準により評価していますが、100億円未満の中小企業では、半数以下になっています。これは、中小企業ではルールを確立するよりも、経営者の意向で判断するほうが多いからでしょう。
- しかし、評価測定はしているのですが、その方法には問題があります。ユーザー満足度が非常に多く、それを除外すると実施率はかなり低くなると思われます。評価に関する成熟度は未だ低い状態だといえます。
評価基準が作られていないのは、次のような理由があります(情報システム・ユーザ協会「ユーザ企業IT動向調査報告書」2003年より)(図表)。やや古い調査ですが、現在でも大差はないと思われます。
- 費用対効果が見えない案件が多い。定量的効果を目的とする案件から、定量的効果や戦略的効果を目的とする案件へと変化してきた。
- 省力化効果を図るシステム化でも、担当者の業務全体をカバーすることはできないので、人員削減や転換という結果につながない。その担当者がより付加価値の高い業務をしているかは測定が難しい。全体的なアプローチが欠けていることが原因だといえます。
- 効果を生み出していても、その効果がITで得られたのか、非IT活動で得られたのかを切り分けることが困難である。