成長ベクトル
事業には成長期もあれば衰退期もありますので,一つの事業だけにしがみついているのは危険です。それで,事業の多角化が必要になります。アンゾフは,既存と新規の製品と市場について成長ベクトルとして,成長の方向性を示しました(図のように示すので成長マトリクスともいいます)。
- 市場浸透戦略
- 既存市場・既存製品。他社との競争に勝つことによって市場占有率を高めます。
- 新市場開拓戦略
- 新規市場・既存製品。従来は男性用であった製品を女性客に広げたり海外進出するなど,既存製品を新しい市場に広げます。
- 新製品開発戦略
- 既存市場・新規製品。これまでの顧客に新製品を提供することにより成長を図ります。
- 多角化戦略
- 新規市場・新規製品。製造業が金融業を行うなど、従来とは異なった分野に進出します。
多角化の種類
上の多角化戦略は次のようにも分類できます。
- 水平型多角化戦略
- オートバイを生産していた企業が自動車も生産するように,同じ分野での事業を広げる多角化です。
- 垂直型多角化戦略
- 従来は組立産業であった企業が,部品の製造(上流)や販売(下流)に手を広げる多角化です。
- 集中型多角化戦略
- ビールメーカーがバイオ事業に進出するなど,ある特定のコア・コンピタンスに関連する新分野に進出する多角化です。
- 集成型多角化戦略
- 電器メーカーが銀行業務に進出するなど,従来の事業とは直接には関係のない分野に進出する多角化です。
(注)水平分業・垂直分業
多角化による事業拡大戦略とは逆に、コアコンピタンス分野への経営資源集中のために、従来、自社でもっていた事業分野を撤退したり、他社にアウトソーシングする(分業)戦略もあります(参照:「コア・コンピタンスとアウトソーシング」)。
- 水平分業戦略
- パソコン製造業でCPUやOSなどを他社で製造するような同一事業を役割分担させる分業です。
- 垂直分業戦略
- 従来は生産から販売まで一貫して行っていた自動車会社が、製造事業だけに集中して販売事業をアウトソーシングするような川上事業と川下事業での分業
多角化の考え方
- シナジー
- 多角化ではシナジー(相乗効果)を考えることが重要です。既存事業と新事業の間で生産技術や販売ノウハウなどに共通するものがあれば,経営資源を共通して用いることができますし,新事業により幅を広げることにより相互に補完する効果もあります。このように経営資源を共有しつつ補完することにより競争優位を確立することを「範囲の経済」といいます。
- アウトソーシング
- 新事業では既存事業とのシナジーが得られない分野もあります。あるいは事業拡大に伴い,自社の経営資源をコア・コンピタンスに集中する必要もあり,自社では対応できない分野も発生します。そのような分野をアウトソーシング(後述)することも考慮する必要があります。
- M&A
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- 新事業が既存事業と全く異なるときはもちろん,似たような事業であっても,従来の自社経営資源だけでは対処できない場合があります。そのようなときには,その新分野にすでに進出している企業を合併・買収することも効果的です。それをM&A(Merger and Acquisition)といいます。