グローバル化、規制緩和、異業種からの参入、新業種・業態の出現
「インターネットがビジネスを変える」といいますが、その背景となる1990年代後半のビジネス状況を示します。
海外での生産拠点や販売拠点が増加しています。日本企業の東京本社ですら英語を共通語にするなど、企業のグローバル化が進んできました。
インターネットにより、地理的格差がなくなりました。情報に関する限り、ブラジル支店も横浜支店と同じ状況になりました。また、極端にいえば、Webサイトを構築するだけで、全世界から引合いや注文が得られる環境になりました。
そのため、企業の競争相手は世界全体になり、海外のトップ企業との競争に勝たなければ市場から消えるしかありません。競争が大規模に激甚になったことを、メガ・コンペティッション(大競争)の時代といいます。
資本のグローバル化が進むと、財務報告の内容など会計制度が日本独特のものだと、海外の投資家や金融機関が誤った判断をしてしまいます。そのために、数次にわたって会計制度の改訂が行われてきました(例:「金融商品取引法(日本版SOX法)」)し、現在ではIFRS(国際会計基準)への移行が課題になっています。
以前は、日本の金融機関は「護送船団方式」といわれていました。新規参入は厳しく制限され、金利や業務も行政の明確あるいは暗黙の統制下で保護されていました。
スーパーなどの大規模店舗は、中小小売商を保護するため「大規模小売店舗法」により新設、営業時間などが規制されていました。
このような法律による規制、運用による規制が、官主導による「原則禁止、例外許可」のルールとして、多様な分野で行われていたのです。
このような規制は、海外からの日本進出を締め出すので「非貿易障壁」といわれ撤廃圧力がありました。また、国内でも、既存業界の安定発展には効果がありますが、自由な競争を排除するため、業界の競争力を低下させてしまい、大競争時代に対応できなくなります。
このような事情により、「原則自由、問題がある場合のみ禁止」へと大きく変化してきたのです。
新業種では、若い人がベンチャー起業して、短期間で大企業に成長した事例が多くあります。
Yahoo!:スタンフォード大学の博士課程学生、デビッド・ファイロとジェリー・ヤン、1994年
Google:スタンフォード大学で博士課程学生、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、1996年
参照:「検索ポータル、インターネット広告の歴史」
新業態のビジネスでも、異業種からの新規参入が新業態を起こし、それに既存の企業が追従するという例が見られます。
インターネットバンキング:セブン銀行(←コンビニ)、ソニー銀行(←製造業)、1999年
アマゾン・コム:ジェフ・ベゾス(プリンストン大学でIT→インターネット取引に興味→1994年にアマゾン・コムの前身「Cadabra」をスタート)
楽天:三木谷 浩史(日本興業銀行在籍中にハーバード大でMBA→コンサルタント会社起業→楽天企業)、1997年
一般に競争相手として怖いのは新規参入です。既存の競争相手は同じ土俵での勝負ですし、相手の力量や戦略もわかります。新規参入は、既存市場では弱い立場なので、ゲームのルールを変えて勝負を挑みます。そのため、既存企業のほうが劣勢に立たされるのです。
参照:「ナガオカ(新製品の脅威の例)」