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DXは、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授がその概念を提唱しました。
経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」(2018年)では、DXを次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
すなわち、進化し続けるITをビジネスに活用して業務改革を行うことです。
同様な考え方は、ビジネス・リエンジニアリングやインターネットビジネスなど以前から指摘されていたことですが、近年はAIや5Gなど、社会全般や経済市場に大きな変革を与える技術が発展してきました。DXは、その動向を認識したビジネス対応が一層重要になることを強調しています。
この言葉は、モハメド・エラリアンが2008年のリーマンショックを経験した世界を、「高い成長を誇ったかつての世界を再び取り戻すことはない。低成長が常態化するニューノーマルの時代になる」と主張したことによります。
2020年の新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、経済低迷が強まっただけでなく、感染を防ぐには人と人との接触を減らすことが重要だとされ、テレワークやネット販売などが普及しました。このような傾向は感染収束以降も続くとされ、それに対処した社会になるという意味が「ニューノーマル社会」に加わりました。
なお、DXの活用が当然となり、DX活用が他社との差別化要因にならない世界のことを「ポストデジタル時代」ということもあります。
Google(広告や検索)、Apple(スマートフォンやアプリ)、Facebook(SNS)、Amazon(通信販売)の頭文字を並べたものです。インターネットのプラットフォームで全世界で圧倒的なシェアを持っています(中国のBaidu、Huawei、Tencent、Alibabaなども巨大企業です)。
市場独占や個人情報の取得など、マイナスイメージでいわれることが多いのですが、それぞれの業種を創出、多角化、深化して新しい価値を生み出した企業群だともいえましょう。これらの企業の製品やサービスを利用していない人は稀でしょう。DXの活用によりニューノーマル社会に適した戦略で成功した企業群だともいえます。
デジタルテクノロジによる破壊的イノベーションのことです。
DXの活用には、情報・通信技術の発展が大きな基盤になります。その技術は多様ですが主なものを列挙します。
政府は、従来からITの利活用推進に積極的な政策を続けてきましたが、このような動向に鑑み、DX推進政策を進めています。
その一環として、2018年経済産業省に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会(DX研究会)」を設置し、DX推進の中核としました。
DX研究会は、2018年に「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開」( https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf)を公表しました。
DXレポートでは、DX対処の重要性を示すとともに、その緊急性を「2025年の崖」として警鐘を鳴らしました。
各企業が抱える既存システムに関して、
① 老朽化した既存の基幹システムがDXを推進する上での障壁になる、
② 2025年までにシステムの刷新をしないと、それ以降、年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性がある
と具体的な数値を示して、レガシーシステムに固執することへの危険性を強調したのです。
(拡大図)
出典:「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開(簡易版)」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_02.pdf
DXレポートの提言を受け、2018年、経済産業省は、DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で
・ 経営者が押さえるべき事項を明確にすること、
・ 取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用すること
を目的として、
「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(DX推進ガイドライン)
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdfを策定しました。
下の12項目について、具体的なチェック項目や失敗ケースなどを掲げています。
(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み
1 経営戦略・ビジョンの提示
2 経営トップのコミットメント
3 DX推進のための体制整備
4 投資等の意思決定のあり方
5 DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力
(2)DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築
(2)-1体制・仕組み
6 全社的なITシステムの構築のための体制
7・8 全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス
9 事業部門のオーナーシップと要件定義能力
(2)-2実行プロセス
10 IT資産の分析・評価
11 IT資産の現状を分析・評価できているか。
12 刷新後のITシステム:変化への追従力
2019年、経済産業省は経営者や社内の関係者がDXの推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供するものとして、「DX推進指標」を策定しました。その普及啓発や運営はIPAが担当しています。
「DX推進指標」は、チェックリストでチェック項目と、その5段階レベル成熟度の姿を一覧表にしています。
各企業が簡易な自己診断を行うことを可能とするものであり、各項目について、経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などが議論をしながら回答することを想定しています。
それをIPAに提出すると、IPAは業種別・規模別の平均値などベンチマークとなるデータを提供します。また、DX推進指標を分析した結果をレポートとして公開しています。
価値創出の全体にデジタルケイパビリティを活用し、それらを介して他社・顧客とつながることで、エコシステムを形成している全ての企業を含めた広がりを「デジタル産業」としている。
デジタル産業は、ソフトウェアやインターネットにより、グローバルにスケール可能で労働量によらない特性にあり、資本の大小や中央・地方の別なく、価値創出に参画できる特徴を持つ。
DXの推進は1企業だけの能力では達成できません。コアコンピタンスを持つ企業がパートナーを組んで取り組むことが必要です。そのとき自社がどの役割を持つかにより、大きく4つの類型が考えられます。
DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。IPAがDX認定制度事務局として各種相談・問合せ、及び認定審査事務を行っています。なお、経済産業省と東京証券取引所が共同でDXに取り組む企業を「DX銘柄」として選定し、公表しています。
1967年に成立、2020年改正。情報処理安全確保支援士制度やDX認定制度は本法に基づいています。
この法律は、電子計算機の高度利用及びプログラムの開発を促進し、プログラムの流通を円滑にし、並びに情報処理サービス業等の育成のための措置を講ずること等によつて、情報化社会の要請にこたえ、もつて国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/dgs5/pdf/20201109_01.pdf
2020年に経済産業省が「企業のDXに関する自主的取組を促すため、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応を取りまとめ」たものです。
の項目について、次の構成になっています。
項目 | ① 柱となる考え方 | ② 認定基準 |
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1.ビジョン・ビジネスモデル |
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2.戦略 |
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2-1.組織づくり・人材・企業文化に関する方策 |
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2-2.ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策 |
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3.成果と重要な成果指標 |
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4.ガバナンスシステム |
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このように、デジタルガバナンス・コードは、具体的なIT活用を示すのではなく、ITガバナンスを確立するために、経営者が参照すべきガイドラインの性格になっています。
DX認定取得の評価は、ITをいかに活用しているかではなく、変革を行う準備ができており、取り組む努力をしていることであり、それを客観的に判断できる形で示せるかがポイントになっています。
優良企業選定とは、事業者認定を取得した企業の中から、デジタルガバナンス・コードに沿ってより優れた実効的な対話を行っている企業を、有識者審査委員会を開催し選定する制度です。
造業のための DX 推進ガイドサマリー 2023 年改訂版 https://www.ipa.go.jp/digital/dx/mfg-dx/ug65p90000001kqv-att/000096313.pdf>
このガイドラインは、中小規模の製造業におけるDXへの取り組みを解説したものです。中小規模製造業が先進的にDxに取り組んでいる事例をもとに、これからDXに取り組む企業に向け、その必要性や進め方をまとめています。
DXの活用を図る分野は次の3つがあります。環境による優先度は異なりますが、これらは独立したものではなく互いに影響しているので、他の分野も考慮しつつ適用する必要があります。
組織のDXの成熟度は、以下の項目がすべて未着手のレベル0から改善更新が定着しているレベル3の段階で評価することができます。現在のレベルを確認して、上の段階に進む継続的なマネジメントとして活動することが必要です。
項目 レベル1 レベル2 レベル3
競争優位性 定義 戦略 実行
業務プロセス 部門定義 全体定義 更新対応
システム構築 計画 全社対応 継続対応
データ収集 計画 収集 更新対応
データ活用 実行 活用 更新計画
データ連携 限定 活用 企業間活用
セキュリティ 課題 管理 更新対応
外部資源 計画 活用 更新対応
人材 計画 実行 更新対応
企業風土の変革
DXに対する経営者のビジョンを従業員に浸透
社長自らがデジタル化の取り組みを推進
新しいことにチャレンジする人を評価
デジタル化の情報を社内に導入
人材の育成・確保
海外人材を採用しIT人材の育成
社会人大学院や大学にてIT関連の受講や学位取得
展示会やセミナーで他社の動向調査と協業
外部研修等を活用した社内IT人材の育成
社員どおしの相互教育の場を設立
生産活動の見える化
設備の稼働状況、生産実績の把握
職人のノウハウやスキルの可視化
CO2排出量(電力消費量)の低コストな計測
見える化で取得した情報を活用した生産活動の改善
AIを活用した製品の品質予測
製造装置の故障予知、メンテナンス時期予測
製造不具合の検知
職人のノウハウの可視化による人材育成
社内部門間連携
PCやタブレットによるいつ誰でも可能な情報共有
社内SNSによる問題点の共有
他の製造業者との連携
大学や民間企業との連携によるスマート製品のしくみ構築
企業間での受発注・工程進捗情報の共有
社外資源の活用
補助金の活用
ITベンダーやコンサルを活用したDX推進
企業団体や公共団体の研究活動への参加
製品サービスへの展開
デジタル技術による各種新サービスの提供
デジタルを活用した営業スタイルの確立