デザイン思考とは
デザインとは「設計」の意味で、建築分野などで、顧客のニーズを理解して創造的なアプローチをする思考方法をビジネスの分野に活用した経営技法です。
アプローチの中心は常に製品やサービスの利用者であり、利用者の本質的なニーズに基づき、製品やサービスをデザインすることが特徴で、創造性の高いアイデアを得るのに適した技法です。
デザイン思考の発展
- 「デザイン思考」という用語は1980年代後半にありました。意思決定での「非構造的問題」へのアプローチとして捉えられました。
- 1990年代になると、組織学習のアイデアと機敏なビジネスを創造する動きが顕著になりました。
- ビジネス界で普及しだしたのは2000年代中頃です。
「デザイン思考」の言葉がビジネス書に取り上げられ一般に広ままりました。
それにより、プロダクトデザインの領域からビジネスへと拡大されました。
有名な米国大学でのMBAカリキュラムに取り込まれるようになりました。
VUCA
現在の消費市場はVUCA時代になりました。極めて予測困難となっている状況を表す言葉です。
Volatility(変動):変化の質・大きさ・スピード等が予測不能であること
Uncertainty(不確実):これから起こる問題や物事が予測できないこと
Complexity(複雑):数多くの原因などが複雑に絡み合っていること
Ambiguity(曖昧):物事の原因や関係性が不明瞭であること
このような環境で、市場に受け入れられる新製品開発や企業活動を行うには、従来と異なるイノベーション的アプローチが必要であり、デザイン思考はそれに適した方法だとされています。
デザイン思考の特徴
基本的マインド
- 常にユーザ視点
問題解決に最も重視する要素は、供給者からにた「正しさ」や「ベスト」ではなく、ユーザの「満足度」の高さにある。
表面的なユーザニーズではなく、その背景にある本質的なニーズを理解する必要がある。それにはユーザの立場で思考するべきである。
- コミュニケーション重視
真のニーズを得るには、ユーザとのコミュニケーションが重要である。また、問題解決のプロセスでは事実を多角的に分析して問題定義と解決意図を明確にし、たくさんのアイデアを出す必要がある。ブレインストーミングなどの方法を適切に活用する。
- プロトタイピング
コミュニケーションを有意義にするには、試行錯誤を繰り返して、ニーズとのギャップを明確にして、ブラッシュアップしていくことが求められる。
- 固定概念の排除
これまでの改良型解決ではなく創造的解決が必要になる。デザイン思考では、前例や固定概念、バイアスといったものは一切排除して考える。
デザイン思考の5プロセス
- 共感(Empathise)
ユーザーインタビューなどによりユーザニーズを収集するのですが、本質的なニーズを得るにはユーザの立場で、ニーズへの共感をもつことが大切です。
- 定義(Define)
掘り下げた観察と問題定義を繰り返しながら、コアとなる問題を見つけ出します。
- 概念化(Ideate)
問題解決のためには、単なる表面的な個々の具体的事実ではなく、それらを統合した概念化を行うほうが、革新的なアイデアが創出しやすくなります。
- 試作(Prototype)
アイデアによる仮説に基づき、具体的なプロトタイプを作成、ユーザも含む関係者で試行します。
- 検証(Test)
プロトタイプの試行による検証・改善を繰り返し、試行錯誤しながら、最終的に満足度の高い問題解決を目指します。
デザイン思考による内部効果
デザイン思考により顧客満足を実現しやすくなるだけでなく、組織内でも次のような効果が期待できます。
- 新発想創出環境ができる
デザイン思考の最大の効果は、イノベーションの創出です。デザイン思考は人間中心設計の考え方で、ユーザニーズからその課題の本質を見極めます。このような思考方法が組織内で浸透します。
- 強いチームを作る
デザイン思考は、チーム間のコミュニケーションを重視します。役職や上下関係に縛られずに、全員が平等な発言権を持ち、アイデアの重要度も平等に扱われます。このような意思決定プロセスの変化は、積極的なアイデア創出、組織の活性化につながります。