UISS(Users' Information Systems Skill Standards、情報システムユーザースキル標準)は、ユーザ企業のIT人材を対象とした、標準スキルです。ITSS、ETSSとともに、共通キャリア・スキルフレームワークの構成要素になっています。
情報システムの信頼性や安全性、正確性、正当性の確保のために、ユーザ企業での情報システムに関する機能とIT人材の関係を示すことにより、
組織力強化のための利用
人材育成のための利用
人材調達のための利用
に役立てることを目的にしてます。
各企業では、企業の状況に応じて本スキル標準の記載内容を取捨選択・追加して、活用することを期待しています。
2006年に Ver1.0 が公表され、その後改訂が行われています。
(資料)
タスクの定義
ISのライフサイクルにおける多様な作業をタスクとし、それぞれのタスクの定義をしています。
UISSでは、ISとITを次のように区分しています。
ISとは、「組織の活動に必要な情報の収集、蓄積、処理、伝達、利用に関わる仕組み」でコンピュータシステムだけを指すものではありません。しかし、コンピュータシステムを除外したシステムは実際的ではないので、「コンピュータシステムを取り巻く事業・業務、組織、人材なども含む」といってよいでしょう。UISS以外では、これをITというのが通常です。
ITとは、ISの基盤となる情報技術であり、ハードウェア、ソフトウェア、システム管理。セキュリティなどのことです。ISのうち、情報技術の分野を指しているといえます。
人材像とタスクの関係
UISSでは、ITSSの「職種」に相当する区分を「人材像」としており、その人材像とタスクを次のように関係づけています。
基本戦略系人材
- ビジネスストラテジスト(レベル3~7)
全社戦略の実現に向けた事業戦略を策定・評価する。この段階では、必ずしもIS活用を意図していない。本来は各部門長のスタッフあるいは企画部の任務だといえる。IS部門がこの段階から参画することにより、効果的なIS活用につながる。CIOのスタッフだともいえる。
- ISストラテジスト(レベル3~7)
事業戦略実現に向けたIS戦略を策定・評価する。ITSSのコンサルタントに対応する。
- ISアーキテクト(レベル3~7)
ビジネス環境の変化や情報技術の進展に、企業として継続的に対応するため、IT戦略を策定し、その構築と評価、維持・管理を行う。ITSSのITアーキテクトに対応する。
- プログラムマネージャ(レベル3~7)
ここでのプログラムとは、コンピュータプログラムのことではなく、複数のプロジェクトをまとめたものである。販売IS戦略には、システム開発、ネットワーク整備、セキュリティの強化など複数の個別プロジェクトを並行してマネジメントする必要がある。
個別案件関連人材
- プロジェクトマネージャ(レベル2~6)
IS戦略の実現に向けて、個別案件をマネジメントする。ITSSでのプロジェクトマネージャと同じような職務である。
- ISアナリスト(レベル2~6)
IS戦略の実現に向けて、個別案件のIS企画を策定・評価する。プロジェクトマネージャがプロジェクト全般を担当するのに対して、ISアナリストはシステムへの要件決定や、完成したシステムでの実現評価が主になる。
- アプリケーションデザイナー(レベル1~5)
IS戦略の実現に向けた、個別案件のアプリケーションの導入・保守を実施する。プロジェクトマネージャやISアナリストの指示による実働部隊のような存在
- システムデザイナー(レベル1~5)
アプリケーションデザイナーがシステム開発を主とするのに対して、システムデザイナーはインフラの整備が主な任務である。ISアーキテクトの指示下にあるともいえる。
- ISオペレーション(レベル1~5)
ISの効果の最大化のために、システム運用を安定的・効率的に実施する。
- ISアドミニストレータ(レベル2~6)
ISの効果の最大化のために、利用実態に即した活用計画を策定し、施策を遂行する。利用者支援グループ。利用部門でのIS推進者の立場もある。
- セキュリティアドミニストレータ(レベル2~6)
全社の情報資産へのセキュリティにおける社内外からの脅威やリスクへの対応に責任を持つ。
IS関連専門人材(IS部門以外の所属が多い)
- ISスタッフ(レベル1~5)
企業活動におけるIS機能全般の運営して、専門的な立場から支援する。次の分野がある。
情報機器・情報資産管理
全社の情報資産の管理と共有化による生産性向上のため、体制整備から施策の実施・改善までの責任を持つ。
- 事業継続計画
事業継続計画の一環として、IS領域に関して、計画策定から実施、リスク分析、災害時対応計画、バックアップ、代替処理・復旧を主な職務とする。
- コンプライアンス
IS領域に関わる法令及び規範の管理体制確立、管理責任者の選定、遵守すべき法令及び規範の識別、教育・周知徹底を行う。法務部門が担当することが多い。
- 人的資源管理
IS部門およびIS利用部門のIS活用における人的資源確保のために、人材育成施策の企画、遂行に責任を持つ。人事部部門関連。
- 契約管理
IS領域に関わる社外との適切な契約関係を実現するために、契約業務全般の基準・ルールなどの整備や維持管理に責任を持つ。委託先選定方針などの策定、各種契約の管理を主な職務とする。法務部門が担当することが多い。
ISオーディタ(レベル2~6)
IS機能が適切かつ健全に運営されるよう、システム監査の計画、遂行に責任を持つ。監査部門が担当することが多い。
人材像とスキルレベル
各人材像について1~7のスキルレベルが定義されており、それは共通キャリア・スキルフレームワークと合致しています。
ITSSの職種とUISSの人材像でのレベル範囲は似た傾向がありますが、UISSでは自社内なので、定義範囲がやや異なっています。
ISストラテジスト、ISアーキテクトなど超上流工程の人材像は、ITSSでのコンサルタントやITアーキテクトに似ています。ITSSではレベル4以上ですが、UISSでは、自社内での利用なので、レベル3以上に緩和されています。
ITSSのプロジェクトマネジメントはレベル7がありますが、UISSのプロジェクトマネージャは、発注側の立場ではそれほどのレベルまでは要求されないとしてレベル6までになっています。