ITSS(、ITスキル標準)とは、主に情報サービス企業を対象にしていますが、IT部門をもつユーザ企業、教育機関でのIT教育にも利用できるとされています。国のIT人材育成政策にも利用されています。
2006年の初版公開以来、各種の国際規格や国際標準に合わせ、また、共通キャリア・スキル標準との整合性をとるための改訂が行われてきました。現在は
IPA「ITスキル標準V3 2008」になっています。
その構成は、次の通りです。
・1部 概要編: 適用範囲・基本構造・構成要素解説
・2部 キャリア編: キャリアフレームワーク・職種の概要・達成度指標
・3部 スキル編: スキルレベルの定義と、最小かつ必須の条件
・附属書: ITスキル標準活用のための資料を体系化
職種
ITベンダ企業の多くはユーザ企業からシステムの開発や運用を受託する業種です。そのプロセスと職種の対応は次のようになります。
- マーケティング
- 情報サービス業である自社のマーケティングを行う。IT動向全般に関する高い見識が求められる。
- セールス
- 単なる営業部員というよりも、顧客企業の経営戦略を確認し、適切なIT活用を提案する。
- コンサルタント
- 顧客企業の経営戦略を確認し、適切なIT活用を提案する。セールスと異なり、顧客の立場で助言することが求められる。
- ITアーキテクト
- コンサルタントと似ているが、IT化の全般的な戦略について、主に技術面から最適な枠組みを策定する。高度なIT技術者である。
- プロジェクトマネジメント
- 対象となるシステムの開発から運用までのプロジェクト全体をリーダーとして運営管理する。コスト、納期、品質を計画以上に実現することが任務である。
- ITスペシャリスト
- 対象となるシステムでのハードウェアや基本的なソフトウェアの設計/導入・構築/運用・保守を実施する。ITアーキテクトが戦略的な全体計画を担当するのに対して、対象となるシステム構築での実際の作業を担当する。
- アプリケーションスペシャリスト
- 対象となるシステムの設計を行う。狭い意味でのシステムエンジニアであるといえる。
- ソフトウェアデベロップメント
- 開発/運用・保守局面においてパッケージを含むソフトウェア製品の設計/開発/保守を行う。従来プログラマといわれたような職種である。
- ITサービスマネジメント
- 運用・保守局面においてシステムの運用・管理を実施する。従来はオペレータといわれていたが、単にオペレーション(運用)だけを行うのでなく、システムの信頼性やセキュリティの向上(サービスレベルの向上)などの任務が重視されている。
- カスタマサービス
- 主にハードウェアやそれに関連するソフトウェアの保守点検、トラブル対処などを行う。
- エデュケーション
- インストラクタであるだけでなく、研修コース・講座の企画/開発/提供を行う。
人数比率は、およそ次の通りです。
(図表)
・マーケティング~ITアーキテクト:15%
・プロジェクトマネジメント~ソフトウェアデベロップメント:70%
・ITサービスマネジメント~エデュケーション、その他:15%
職種・専門分野とスキルレベル
ITSSでは、職種をさらに専門分野に細分化し、各専門分野に、共通キャリア・スキルフレームワークでのレベルに準拠した7段階のスキルレベルを定義しています。
例えば、コンサルタントではレベル4以上でないと実際には通用しないし、ソフトウェアデベロップメントではレベル7を要求されることは稀であるとして、それぞれレベルの上下限を設けています
ところが、実際にはスキルレベルは低い状態です。プロジェクトマネジメントやコンサルタントなどと名乗ってはいるが、スキルレベルでは定義されていないレベルが過半数な状態です。
(図表)