労働集約型、小規模企業、大都市集中型
情報サービス業の概要を列挙します (図表)。 情報サービス業のうち、ソフトウェア業が約3/4で、受注開発ソフトウェア業が大半を占めている(図示) ので、主に受託開発ソフトウェア業を対象にします。
情報サービス業、特に受託開発ソフトウェア業では、システム設計、プログラム作成、実装などが主な業務になるので、原価構成で人件費が占める割合が高く、約1/4になっています。
(図表)
また、それと同程度の外注費がありますが、その大部分は他の情報サービス業へのソフトウェア委託費ですので、「人」に関する費用比率はかなり大きくなります。
(図表)
他の産業と比較して、材料や部品の仕入れが少ないので、製品・サービスの価格は比較的安価であり、1社当たり、従業員1人あたりの売上高は小さく、付加価値率や労働分配率が高いのが特徴です。
(図表)
情報サービス業全体が典型的な労働集約型の業種であり、受注開発ソフトウェア業の中小企業では、さらにその傾向が顕著です。
情報サービス業では全産業に比べて、中小企業の比率は比較的小さい (図表) のですが、それでも10人未満の事業所が4割程度になっています。 (図表)
しかも、ソフトウェア業では、従業者500人以上の事業所は全体の1%程度なのに、売上では約半分を占めています。
(図表)
1人当たりの売上高での格差が大きい
(図表)
のは、大企業ではシステムインテグレータのように、付加価値の高い上流工程を受注できるのに対して、中小企業が受注する案件が、高度な能力が不要な内容であったり、大企業の下請業務で付加価値が小さい下流工程になりがちだからです。
ソフトウェア業務では、小売業の店舗や小ロットの製品製造業と異なり、全社システムのような規模になると、ある程度の人数が必要になります。ITコンサルタントや特殊な技術により高い利益をあげている小企業もありますが、付加価値の小さい小規模システムを受注するか、他の情報サービス業の下請になることが多いのです。大企業と中小企業の間に大きな格差があることが特徴で、元請-下請のピラミッド構造になっているのです。
業種によらず、大企業が大都市しかも東京に集中していますが、情報サービス業ではそれが極端です
(図表)
。ソフトウェア業に限定すれば、東京に、1/3の事業所、1/2の従業員で2/3近い売上高になっています
(図表)
。これは、東京での1事業所当たり・1従業員当たりの売上高が大きいことを意味します。
(図表)
大口の発注者である大規模ユーザ企業の本社が東京に集中しているためですが、このような大都市、東京への偏在は、情報活用環境の地域格差の原因になっています。