企業が求める能力、人間関係、理系・文系?、ユーザ企業でのIT部員
IT技術者には、どのような資質・能力の人が求められているのか、どのような人が、IT技術者として成功するのだろうかについて考えます。
IT技術者も社員ですから、企業が社員に求める人材像、
・主体性をもって業務に取り組み、実行できる能力
・自分で問題を発見し、創造的なアプローチにより、問題解決ができる能力
・円滑なチームワークができる能力(コミュニケーション、リーダーシップなど)
などが、そのままIT技術者にも求められます。
(図表)
以下、特にIT技術者に求められる、あるいは、誤解されているかもしれない資質や能力について、列挙します。(図表)
下図は、厚生労働省が、多様な職種に関して企業が重要とする能力を調査したものから、全職種に対するIT職種(情報処理・情報通信関係)のスコアを比率で表したものです。
下図は、経済産業省による同様な調査です。ここで「若いIT社員」とは20歳代の社員を指しています。
IT企業が、情報系大学に対する要求分野ですら、情報専門分野よりもコミュニケーション能力やチームワークなど人間関係分野の習得への要望が高いのです。
それには、二つの理由があります。
その一つは、実務では人間関係のほうが重要だからです。
とかくIT技術者には、「細かいことに熱心」だとか「人との付き合いが悪い」といった暗いイメージがあります。
高度なソフトウェア開発だとか新概念のコンピュータ設計に携わるような研究者のなかには、俗世間のことに関心を持たない人もいるかもしれませんが、それは他の分野でも同じでしょう。
逆に、ITのスキルレベルがまだ低く、他人が設計したシステムの一部をプログラミングしている人は、冷徹なコンピュータが示すエラーと格闘することになるため、オタク的な性格になる人もいます。しかし、そのような人は、ITの分野でもあまり認められないのです。
もう一つの理由は、IT専門教育に期待していない(期待できない)からです。
大学のIT教育と実務界ニーズの間にミスマッチがあり、情報系大学生が即戦力として使えないことが大きな課題になっています(参照:「大学情報教育と産業界ニーズのミスマッチ」)
とかくIT「技術者」というと、理系の職種と思われがちです。実際、約6割が理系出身者です し、大学卒業生では文系のほうが圧倒的に多いことを考慮すると、なおさら理系の多い職種だといえます。 (図表)
「IT=コンピュータ=計算機=数学」という誤った認識があります。
純粋の情報技術は自然科学の分野ですので、その面では理系のほうがIT技術者として適しているといえます。研究部門での利用や生産設備の自動制御などでは、高度な数学や自然科学が必要になります。
しかし、そのような業務は限られています。一般企業のビジネスシステムの開発や運用では、むしろコミュニケーション、チームワーク、リーダーシップなど人間関係が重要なのです。これらは、一般的には文系の分野でしょう。
そもそも理系・文系といった区別はあまり意味がないのです。論理的思考を身につけた文系、人間関係の資質をもつ理系、すなわち、学際的な人がIT技術者に向いているのです。
なお、ユーザ技術者の場合は、他部門とのローテーションのなかで考慮すべきですから、出身学部を問題にすること自体が無意味になります。