e-Japan戦略(2001年)
国は2001年に「IT基本法」を施行し、その実現のためにIT戦略本部を設置しました。IT戦略本部は、2005年までに日本が世界の最先端のIT国家になることを目指して、e-Japan戦略を策定しました。
e-Japan戦略では、「重点政策5分野」の一つを「教育及び学習の振興並びに人材の育成」として、高等教育に関して次の目標を掲げました。
「IT関連の修士、博士号取得者を増加させ、国・大学・民間における高度なIT技術者・研究者を確保する。併せて、2005年までに3万人程度の優秀な外国人人材を受入れ、米国水準を上回る高度なIT技術者・研究者を確保する。」
これを実現するための制度は整備されましたが、実際の人材数は計画に達していない状況です。
(図表)
IT新改革戦略(2006年)
第2次5カ年計画であるIT新改革戦略では、「世界に通用する高度IT人材の育成」として、次のような基本方針を掲げています。
- IT技術が我が国の中核技術として、産業全体、及び国家の競争力を支えるものとなりつつある。我が国産業の国際競争力向上のためには、ITを活用して高い付加価値を創造できる高度なIT人材の育成を進めることが重要である。
- しかしながら我が国においては、このような高度IT人材が産業界において不足しており、その原因として、IT人材を育成する大学側とそれら人材を受け入れる産業界側のニーズの間にミスマッチがある。
- 今後はこのミスマッチ解消のため、産学官が一体となり、高度IT人材を育成していく体制を整備し、高度IT人材を継続的に輩出していくことが求められる。
i-Japan戦略2015(2009年)
第2次5カ年計画であるi-Japan戦略2015では、電子政府・電子自治体分野、医療・健康分野、教育・人財分野を三大重点分野としています。高度IT人材を高度デジタル人財として、次のように定義しています。
いずれの人財も英語を活用可能で、国際的にも通用する力量を持つ必要があるとしています。
- 新しいテクノロジーやイノベーションを創造できる人財
- ユーザー企業等のCIO に代表される、デジタル技術のみならず、経営や業務改革など幅広い知識と知見を有する人財
- 大規模・複雑化する情報システム・ソフトウェアを構築するためのアーキテクチャやシステム設計力を有する人財
- 難度の高い情報システム・ソフトウェアを使いやすく、高信頼なものとして実現に導くプロジェクトマネジメント能力を有する人財
- 高度なソフトウェアエンジニアリング能力を有する人財
- 高度な知識を持った情報セキュリティ人財
- デジタル技術と業務の両方に精通し、新しい事業・サービスを創造できる人財
そして、高度デジタル人財が年間1,500人必要だとして、以下の方策を実施することにより、安定的、継続的に育成する体制をつくるとしています。(詳細)。
- 実践的な教育拠点の広域展開・充実
- 産学官連携によるナショナルセンター的機能の充実
- デジタル技術を用いたシステム・サービスの供給側、利用側双方における魅力ある処遇・キャリアパスの実現の支援等
- 高度デジタル人財の認定・認証
- 実践的な教育拠点の広域展開・充実
大学間連携のほか、先端企業等の連携により、実務家による講義、チーム演習など、多様な手法を用いた実践的な教育拠点を広く展開するとともに教育拠点の充実を図る。
- 産学官連携によるナショナルセンター的機能の充実
産業界出身者を大学等の教員とするための教育プログラムの開発、実践的なデジタル教育を行うための教材・カリキュラムの開発・普及、産業界と教育界の連携による実践的なインターンシップや体系的なリカレント教育など、ナショナルセンター的機能の充実を図る。
- デジタル技術を用いたシステム・サービスの供給側、利用側双方における魅力ある処遇・キャリアパスの実現の支援等
各種資格制度などの人財育成評価ツールの活用や人財のスキル等に関する情報の共有化による人財の適正配置・流動化を一層促進するとともに、モデルキャリアの策定・普及や専門家によるコミュニティの形成の促進を始めとした方策を展開することにより、能力・実績に応じた魅力的な処遇やキャリアパスの実現が図られるよう支援する。さらに、供給側、利用者側それぞれのニーズにマッチした教育・研修の実施や独創的な人財の発掘・育成など、高度デジタル人財を志望する者の増加、高度デジタル人財の発掘や発展的な能力向上のための環境を整備する。
- 高度デジタル人財の認定・認証
様々な効果測定を経た各種人材評価ツールや開発手法を活用した高度デジタル人財の認定・認証の仕組みを検討、確立すると共に広く普及を図る。
大学等では、情報教育、デジタル基盤の充実を図るとともに、デジタル技術を活用した遠隔教育や授業・学習支援を促進するとしています。
- 情報教育、デジタル基盤の充実
大学等における情報教育のモデル事例等の普及・啓発を図るとともに、多様な教育活動を可能とするデジタル基盤の整備を図る。
- 教育コンテンツの充実・活用
高度な教育や補習教育のための教育コンテンツの充実・活用を促進する。
- 先進的なネットワークの活用
先進的なネットワークを活用し、遠隔地間でも臨場感のある教育環境を実現したり、教材等の教育資源を広く効率的に活用することを可能にする教育環境を実現すること等により、教育効果の向上を推進する。
新たな情報通信技術戦略(2010年)
先に「i-Japan戦略2015」が実施されていたが、2009年の政権交代により、新政権により見直しが行われた。しかし、高等教育におけるIT人材育成については、基本的な変化は見られない。