初期からダウンサイジングにいたるコンピュータの発展を概観します。
みなさんが普段使っているコンピュータは,パソコンですね。それがどこかにあるサーバと通信回線で接続しており(それをオンラインといいます),Enterキーを押すと即座に実行され(リアルタイムという),人間とコンピュータが対話しながら処理を進める(対話処理という)方式になっています。
このような利用形態は,1990年代になってから普及したのです。では,それ以前はどのような形態だったのでしょうか。
初期のコンピュータ処理
日本の大企業がコンピュータを本格的に導入しはじめたのは1960年代です。その頃のコンピュータは,通信回線に接続しておらず(それをオフラインといい,コンピュータが孤立しているのでスタンドアロンともいいます),プログラムやデータを紙カードや紙テープでコンピュータ室に持ち込み,プリンタから出力された帳票を郵送などで配布していました。
コンピュータの処理では,プログラムの実行をすると,結果が出るまで人間の介入ができませんでした。そのような利用形態を一括処理またはバッチ処理といいます。
当時 現在
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オフライン オンライン
(スタンドアロン)
一括処理 対話処理
(バッチ処理) (リアルタイム処理)
オンライン処理の出現
1970年代頃になると,遠隔地のコンピュータ間でデータを伝送できるようになりました。当初は,ファイルをそのまま伝送するだけでしたが,そのうちにTSS(Time Sharing System:時分割方式)という技術により,1台のコンピュータを複数の端末(パソコン)から共同利用できるようになりました。パソコンからサーバを使うような環境です。
小型コンピュータとパソコンの普及
汎用コンピュータはますます大型化しましたが,一方,特定業務では小型のコンピュータも普及しました。
- ミニコン(ミニ・コンピュータ)
- 科学技術分野では,UNIXをOSとし,TSS機能を強化したミニコンが普及しました。また,高解像度のディスプレィを持った高性能なパソコンであるワークステーションも,パソコンが普及する以前に利用されていました。インターネットは,ミニコンやワークステーションの環境で,静かに発展していました。
- オフコン(オフィス・コンピュータ)
- 大企業の部門用あるいは中小企業用のコンピュータとして,オフコンが普及しました。そこでは,給与計算や会計計算など出来合いの業務パッケージも提供されていましたが,メーカーや機種に限定されたものでした。
- パソコン
- 1980年代になると,パソコンがビジネスに使われるようにようになりました。パソコンとはパーソナルコンピュータの略で,PCともいわれます。パソコン普及の当初では,「自分の」という意味でマイコンといったり,高性能のパソコンをワークステーションということもありましたが,次第にパソコンまたはPCが定着しました。
ダウンサイジング
パソコンは急激に安価になり性能が向上しました。使いやすいソフトウェアが出現しました。それで,1980年代末になると,従来の大型コンピュータによる集中処理よりも,多数のパソコンをLANで接続した分散処理へ移行するようになりました。
その動向をダウンサイジングといいます。ダウンサイジングは多様な局面を持っており,いろいろな用語で表現されます。
- ダウンサイジング
- 従来の大型コンピュータ(汎用コンピュータ,メインフレームともいう)から,パソコンなど小型のコンピュータに移行することです。
- 分散化
- 1台の汎用コンピュータで集中処理をすることから,利用者の近くに設置した多数のサーバに分散して処理をすることです(その類型は後述)。
- オープン化
- 従来の汎用コンピュータでは,それぞれのメーカーが独自の仕様を用いていたので,異なるメーカーのコンピュータ間ではソフトウェアに互換性がなかったり,回線接続に制限があったりしました。それに対してパソコンではOSさえ同じならば,ソフトウェアに互換性があるし,OSが異なっても回線接続できます。
このように,個別仕様ではなく標準的な仕様に基づくことをオープン化といいます。オープン化が進むと,価格以外の差別化ができなくなるので,パソコン価格が急激に安価になったのだともいえます。
オープン化の環境でのシステムをオープンシステム,汎用コンピュータ環境でのシステムをレガシーシステムということもあります。
- マルチベンダ化
- オープン化が進むと,ハードウェア,ソフトウェア,ネットワーク,アプリケーションなどのそれぞれの専門領域で優れたベンダが出現します。それで,レガシー時代のように1社のベンダと取引するのではなく,多数のベンダとの取引が行われるようになりました。
分散方式の類型
- システム構成による分類
- 水平分散:
上下関係のない複数のコンピュータに分散する。支店ことに同じようなコンピュータを設置して、同じような処理を行うような方式、
- 垂直分散:
サーバとクライアントの関係のように、上下関係のあるコンピュータで分散する方式
- 機能面による分類
- 機能分散:
業務別にコンピュータを設置するとか、通信機能・データ機能・処理機能を別々のコンピュータで行うなど
- 負荷分散:
大量データを処理するために、同じような機能をもつ複数のコンピュータで同じような処理をする。
この組み合わせにより、次の方式があります。
- 水平機能分散システム
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コンピュータ間には上下関係はなく、異なる機能を分担する方式
業務別:社内業務用と外部サービス用に分散、基幹業務系と情報検索系での分散など
用途別:アプリケーション用サーバ、メールサーバ、プリントサーバなどの関係
- 水平負荷分散システム
- 同様な複数のコンピュータで同じ処理を行う。データを振り分けることで負荷を分散させる。
典型的な例がデュアルシステム
- 垂直機能分散システム
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一連の処理を階層的に分離し、上下関係を持つ複数のコンピュータが役割を分担して処理を行う形態。
この方式の例は多い。
・支店ごとに設置したコンピュータで支店内処理を行い、そのデータを本社コンピュータに送り全社的な処理を行うシステム
・クライアントの要求をサーバが処理するがクライアントサーバシステム
・通信機能、処理機能・データベース機能に特化したコンピュータを用いるタンデムシステム。
- 垂直負荷分散システム
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上下関係のあるコンピュータ間では、異なる処理をするのが通常であり、このような方式は存在しない。