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紙テープ・カード装置
初期の汎用コンピュータでの入力装置

日本で本格的にコンピュータ導入が始まったのは1860年代である。現在では、データやプログラムを作成してコンピュータに入力するには、ディスプレイ付のキーボード(パソコン)を用いているが、1970年代中頃までは、紙のテープやカードを穿孔して、コンピュータに入力していたのである。紙テープはテレタイプ、カードはパンチカードシステムで用いた機器が使われていた。
 ここでは、汎用コンピュータの初期において、タイプライタ、テレタイプ、カードパンチシステムなどの先行技術が、どのように生かされたか、どのように消滅していったかを取り扱う。

関連ページ: 「タイプライタの歴史」「テレタイプの歴史」「パンチカードシステムの歴史」


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入力機器の歴史

パンチカードシステムとカード穿孔・読取装置

米国では、コンピュータ以前にパンチカードシステムが普及していた。そのため、カードはホレリスカードが標準仕様になっており、カード穿孔装置は広く用いられていたし、カードの読取機構は多様な機器に組み込まれていた。

カード穿孔装置

  • 1949年 IBM24穿孔装置、IBM26印刷穿孔装置
    かなり古い機種だが、格安で入手できたため、1960年代前半まで広く使用されていた。
  • 1964年 IBM29印刷穿孔機
    IBM360に合わせて発表された。EBCDIC文字文字コードに準拠
  • 1967年 日立、 H-1562 カード穿孔機
    オンラインでのカード読取穿孔装置は比較的早期に開発されたが、IBM24/26のようなオフラインでのカード穿孔装置は、コストメリットが小さいためか、比較的遅かった。

カード読取装置

  • 1959年 IBM 1402
    務処理用コンピュータIBM1401に合わせて発表された。1401は日本でも多く輸入されていたため、このカードリーダーも広く用いられていた。
  • 1959年 富士通、R-301A
  • 1961年 沖電気、OKITAC-5094
    両方とも光電式カード読取装置。従来のカード読取装置は、金属ブラシと共通金属ローラの間にカードを通過させる方式で読み取っていた。それを光電素子を使用することにより高速化した。

カード穿孔装置
(日立、H-1562、1967年) (拡大図)

カード読取装置
(沖電気、OKITAC-5094、1961年) (拡大図)
出典: 情報処理学会「コンピュータ博物館 日本のコンピュータ 紙テープ・カード入出力装置」

テレタイプと紙テープ穿孔・読取装置

通信ではテレタイプが普及していた。テレタイプでは紙テープが用いられており、テープ穿孔機能、テープ読取機能をもつタイプライタが使われていた。それをそのままコンピュータに利用することができる。

紙テープ装置は、カード装置より早期に国産化した。1960年代の初頭には実用機だ出揃い、それ以降は高速化が進んだが、磁気テープや磁気ディスクの普及により、紙テープ出力が不要になったので、特記する事項はない。

紙テープ穿孔装置

  • 1958年 OKI高速度紙テープ穿孔機
    穿孔装置には、人間がタイプ穿孔する場合と、コンピュータの出力を紙テープに穿孔する場合がある。本機種は後者が目的であり、11文字ずつまとめて穿孔するマルチパンチ方式を採用。穿孔回数は毎分400回、毎分4,400字の高速である。
  • 1958年 日本電気、紙テープ穿孔装置
    同社最初の商用機であるNEAC-2201等に搭載。主として人間による穿孔を目的としており、穿孔速度は600字/分。

紙テープ読取装置

  • 1958年 日本電気、沖電気、光電式テープ読取機
    テレタイプ時代の装置は、機械的な読取機能が主で、60字/秒程度であったが、光学的な機構を採用して200字/秒にした。
  • 1961年 富士通、「FACOM 749A」
    上と同様の機器。典型的な外観。読み込んだテープは、下のホッパーに入れるか手巻きリールで巻き取るかである。
  • 1961年 沖電気、OKITAC-5096リール付光電式テープリーダ
    紙テープのデータ量が少ない場合は手巻きリールでもよいが、大量データを高速で読む場合は、送り側と巻き取り側のリールを機械で制御する必要があり、磁気テープ装置と同じような形状の読取装置が開発された。

紙テープ穿孔装置
(日本電気、1958) (拡大図)

紙テープ読取装置
(富士通、FACOM 749A、1961) (拡大図)
出典: 情報処理学会「コンピュータ博物館 日本のコンピュータ 紙テープ・カード入出力装置」

紙テープは安価であるが、エラーがあったときは修正が面倒である。エラーの部分を探すのが大変だし、修正するにはその部分を鋏で切り取り、穿孔し直したものを接着テープで貼りつけるという手作業で行う。再度読み取らせると接着部分でまたエラーになる・・・・。

タイプライタ(テレタイプ)とオンライン端末

コンソールタイプライタ

コンソールとは制御卓のことである。コンピュータへの指示やコンピュータからのメッセージ表示に、通信機能付きのタイプライタが使われた。その代表的なものが、1961年にIBMは発売したタイプボール式電動タイプライタ IBM Selectric typewriterである。IBMコンピュータだけでなく、国産機でも初期にはこれを採用するケースが多かった。

TSS端末

日本でTSSが広く活用されるようになったのは1980年代であり、その頃には端末はディスプレイ付の端末やパソコンが使われていた。それ以前の試行的なTSS利用や計算センターによるTSSサービスでは、Teletype社のASR-33(1963年)や携帯用のTSS端末Texas Instruments社のSilent 700(1976年)などが使われていた。

ディスプレイ付キーボードへの移行

Key to Tape/Diskの出現

大量データのオフライン入力機器としての穿孔装置は、磁気テープや磁気ディスクに直接入力する機器へと移行した。これらの機器は、データエントリサービス会社で普及したが、一般企業ではこれらの機器を利用するような大量データエントリは外注するのが通常であった。
1964年 MDS(Mohawk Data Sciences)社、最初のKey to Tape装置発売
1970年 INFOREX社、「1301 Key to disk system」

ディスプレイ付キーボードへの移行

1972年にIBMは、ターミナル表示装置サブシステム「IBM 3270」を発表した。これは、コンピュータとのコミュニケーションを行う装置で、表示・制御装置、リモート制御装置、プリンタなどの集合体であり、コンソールタイプライタや高速のデータ入出力装置として使用する。
 その表示・制御装置が「IBM 3279」であり、コンソールタイプライタ、TSS端末、紙テープ・カード穿孔装置に置き換わるものである。
 国産各社もこれに類似した装置を開発。それにより、ディスプレイ付キーボードへの移行は急速に進んだ。

さらに1980年代になると、パソコンがビジネスに普及するとともに、オンライン端末がパソコンに移行する。
1981年 富士通「FACOM 9450」
1981年 NEC「N5200」
1983年 IBM「IBM 5550」