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オフィスコンピュータの歴史


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ミニコンピュータとオフィスコンピュータ

ミニコンピュータ(ミニコン)とは、小型のコンピュータのことである。汎用コンピュータの発展は急速で、以前の汎用コンピュータはすべて小型であるし、また、汎用コンピュータはファミリシリーズになっており、小型のものもある。しかし、これらの小型汎用コンピュータはミニコンピュータとはいわない。当初から部門あるいは特定分野の利用のために開発された小型のコンピュータのことである。
 ミニコンピュータは、技術計算や制御系に利用されるものと事務処理用のものに区分される。日本では、事務処理用をオフィスコンピュータ(オフコン)といい、技術計算用をミニコンピュータ(ミニコン)といって区別している(米国でも、事務処理用をSmall Business Computerというが、ミニコンピュータを利用面で区別しているのに過ぎない)。

日本でオフィスコンピュータは、大企業での部門コンピュータあるいは中小企業でのメインのコンピュータとして独自の発展をした。汎用コンピュータとは異なる独自のOSやプログラミング言語をもち、標準的な給与計算や会計処理などのパッケージが提供されていた。対話型処理や複数端末からの共同利用などは、汎用コンピュータよりも先行して普及した。
 オフィスコンピュータは、1960年代に会計機や帳票印刷機の発展として登場し、1970年代に急速に普及した。そして、1980年代に頂点に達したが、1990年代初頭になると、オープン化によりパソコンに置き換えられるようになり、姿を消すようになった。


オフィスコンピュータの歴史

1960年代前半:オフィスコンピュータの誕生

1960年代前半では、先行大企業がコンピュータを導入しはじめたばかりであり、コンピュータ全般に関する認識が低かった。そのため、会計処理や帳票印刷など特定業務の機械化のために用途を限定したコンピュータが出現した。しかし、広く普及するには至らず、「オフィスコンピュータ」という名称も存在しなかった。

  • 1961年 オフィスコンピュータ元年
  • 1961年 カシオ「TUC」
    リレー計算機とタイプライタを連動して,各種の表計算が自由にプログラムできるようにした帳票自動作成機
  • 1961年 NEC「NEC 1201」
    パラメトロンを使用した事務処理用小型コンピュータ
  • 1961年 ウノケ電子(現PFU)「USAC 3010」
    中小企業向けの汎用コンピュータを意図

1960年代後半:汎用機小型機種の時代

1960年代後半の国産コンピュータメーカーは、IBMシステム360への追従を重視しており、ファミリシリーズの最下位機をエントリーマシンとして位置づけていた。そのため、上位機種との完全互換はある程度犠牲にしても、安価で使いやすいことを重視した。これらがオフィスコンピュータの概念に発展する。

  • 1965年 富士通「FACOM230-10」
    この分野での代表機種。日本語コボルなど独自の機能をもつ。
  • 1965年 日立「HITAC-8100」
    独自のOSによるファイルのリアルタイム更新など先行的な機能

1970年代前半:「オフィスコンピュータ」としての独自発展

「オフィスコンピュータ」という用語が普及し、その定義が明確になったのは、1970年代になってからである。

  • 1968年 三菱電機「MELCOM81」
    「オフィスコンピュータ」の用語を初めて使用。
  • 1975年 日本電子工業振興協会による「オフィスコンピュータ」の初定義
    その後、コンピュータの発展に伴い、逐次改訂された。
    参照:日本情報処理学会「コンピュータ博物館 オフィスコンピュータ 誕生と発展の歴史」
    http://museum.ipsj.or.jp/computer/office/history.html

日本では、オフィスコンピュータは独自の発展をした。大企業の部門コンピュータ、中小企業コンピュータを意図したものであるが、汎用コンピュータのファミリシリーズの小型機種ではなく、中大型コンピュータとは互換性のない独自市場の形成した。特に、簡易言語の提供、販売管理、財務管理、人事給与処理などのパッケージの提供が行われた。

  • 1969年 IBM「System/3」
    米国では、オフィスコンピュータという概念はないが、System360 の汎用コンピュータとは別に、中小型コンピュータとして独自の設計がなされている。この System/3、およびこれに続く System/32(1975年)、System/34(1977年)、System/38(1979年)、System/36(1983年)、 と、AS/400(1988年)などは、日本でのオフィスコンピュータであるといえる。
    「RPG」は、事務処理用の簡易言語で、データ検索や帳票作成を簡単にプログラミングできる。AS/400 に至るまで、逐次発展してきた。
  • 1973年 NEC「NEAC 100シリーズ」
    マイクロプログラミング方式の採用。簡易言語「APLICA」「BEST」
  • 1974年 三菱電機「MELCOM80-31」
    簡易言語「PROGRESS」
  • 1974年 富士通「Facom Vシリーズ」
    仮想記憶方式、簡易言語「TASKFORCE」、アプリケーションパッケージ「CAPSEL」

1970年代後半:オフィスコンピュータの高度発展

1970年代後半は、オフィスコンピュータが花形になった時代である。この頃になると中堅企業のコンピュータ導入が盛んになった。その機種として、価格が安く、運用が容易で、すぐに利用できるという利点をもつオフィスコンピュータが注目された。また、大企業では、業務の増大により部門コンピュータが必要になった。
 これらのためには、TSSによる対話処理や複数端末からの共同利用が適している。日本では、汎用コンピュータにに先行してオフィスコンピュータで普及した。また、RDB(リレーショナルナルデータベース)や日本語処理でもオフィスコンピュータのほうが先行した。

  • 1978年 NEC「NEACシステム150」
    対話型OS「ITOS(Interactive Tutorial Operation System)」の採用
    当時のオフコン用OSが数万ステップであったのに対して、ITOSは数十万ステップの巨大なものであった。
    簡易言語「SMART」
  • 1979年 富士通「システム80シリーズ」 CMOS LSIによる独自のマイクロプロセッサ「FSSP」。オフコンと小型コンピュータの互換性。RDBの利用
  • 1979年 IBM「System/38」
    独自のOS「SSP(System Support Program)」はマルチユーザー、マルチタスクになり、サーバとしての機能をもつようになった。
    プログラミング言語は、汎用コンピュータと同様のCOBOLやFORTRAN、BASICが使用できた。
    RDBとその言語SQLの前身である「SEQUEL」が使用できた。
  • 1978年 JIS漢字コード決定
  • 1979年 各社オフコンが日本語対応へのバージョンアップ

1980年代:オフィスコンピュータの全盛時代

オフィスコンピュータは、1980年代に全盛期になる。次第に中堅・中小企業の需要が高まってきたが、1980年代後半でのSISブームでは、中堅・中小企業のオフィスコンピュータ導入が盛んになった。中堅・中小企業でのメインフレームとしての認識が高まり、1980年代中頃には「オフィスプロセッサ」といわれるようになった。
 大企業では、エンドユーザコンピューティングが普及し、汎用コンピュータ>オフィスコンピュータ>パソコンの機器構成が一般化した。それで、分散処理方式、連携処理機能が強化されたのである。
 このような動向に応えて、各社のいわゆる名機が続出した。それに伴い、低価格化、高性能化での競争が激化した。1980年代当初では、NEC、三菱電機、東芝がオフコン御三家といわれていたが、1980年代中頃にかけて富士通が急激にシェアを伸ばし、後半ではNECと富士通の2強時代となり、首位攻防戦が行われた。

  • 1981年 NEC N5200
  • 1981年 富士通 FACOM9450
    両社の本格的なオフコンであり、高級パソコンともいえる。オフィスソフトが整備された。
            ワープロ  表計算   グラフ
     N5200    LANWORD  LANPLAN  LANGRAPH
     FACOM9450  EPOWORD  EPOCALC  EPOGRAPH
  • 1984年 富士通「Kシリーズ」
    Vシリーズと80シリーズの統合。OSは規模によりCSP/F1、F3、F5の3つになったが、オフコン用COBOL Gによりソースレベルでの互換。1985年の「Kαシリーズ」、1988年の「新Kシリーズ」により、さらに統合が進む。
  • 1984年 NEC「NECシステム8」(VSシリーズ)
  • 1987年 NEC「システム3100シリーズ」
    従来のオフィスコンピュータを統一のファミリシリーズに統合することは、業務の増加に対応したレベルアップを容易にすることからも 重要である。それがほぼ完成したのがこのシリーズである。上位の機種では自動電源制御、サーバ拡張機構、ディスクアレイ、対称型マルチプロセッサ方式など、汎用コンピュータと同等の機能が備わっている。また、このシリーズでは、国民標準パソコンといわれた PC-9800 シリーズの全機種を端末として利用することにより、オフィスプロセッサとしての構成を確立した。
  • 1988年 IBM「AS/400」
    Systen/36およびSysten/38を統合した新シリーズ。
    「OS/400」はRDB処理に最適化され、OS自体がハードウエアに依存しない技術を採用するなど、以降のIBM機に引き継がれている。
    AS/400 は、その後「eServer iSeries」、さらに「System i 」と発展、改称され現在に至っている。
    参照:IBM「おかげさまでAS/400誕生から20周年」
       http://www-06.ibm.com/systems/jp/i/history/i20/

1990年代前半:パソコンとの攻防、オープン化対応

1980年代末からオープン化が始まり、パソコンがコンピュータの主流になってきた。パソコンの低価格化・高機能化が進み、サーバとして使えるようになってきた。オフィスコンピュータがそれに対抗するためには、次々と高性能のプロセッサを開発しなければならないが、従来のオフィスコンピュータは独自仕様であったため、量産効果が得られず、膨大な費用をかけてオフィスコンピュータを開発するには限界がある。
 それで、既存のオフィスコンピュータの資産を引き継ぎつつ、オープン化への対応をすることが必要になってきた。その重点はOSとCPUである。
 これまでは各社が独自のOSを採用していたが、Windowsなどに合わせる必要がでてきた。
 1990年代初頭まではオフィスコンピュータのCPUはRISCが優勢であった。ところが、パソコンでは1990年代中頃から、PentiumなどCISCの性能が急速に向上した。そして、マイクロソフトがサーバ用途のRISC版Windowsから撤退するに至り、ほとんどのオフィスコンピュータがCISCに移行した。

  • 1990年 NEC「システム3100シリーズ」
    中小企業向けのコンピュータから発展した系列と、大企業向けの汎用コンピュータ端末から発展した系列の統合
  • 1992年 NEC「OP-98」
    オープン系への対応。OSをUNIX/NetWareの選択可能に。
  • 1992年 富士通「ASP」によるKシリーズ強化
    OS「ASP」によるシリーズ互換の徹底。TCP/IP対応、RDBやCAPSELなどの強化
    1993年:32ビットCISCと独自の64ビットRISCの2つのチップを搭載。C言語、ACCELLのサポート。
    1994年:サーバ機能の強化
  • 1995年 IBM、AS/400のCPUをCISCからRISC(64ビット)に移行

1990年代後半:ビジネスサーバへの変身

1990年代中頃からのインターネットの急激な発展により、パソコンの優位性が確立した。サーバの多くはパソコンに移行するようになってきた。このような状況でオフィスコンピュータが生き延びるためには、サーバになることである。オフィスコンピュータは長年の蓄積により、パソコンと比較して信頼性が高く、高級サーバとして適切である。それで、オフィスコンピュータという名称を捨てて、ビジネスサーバと呼ばれるようになった。

  • 1995年 NEC「Expressシリーズ」
    独自OS以外にWindowsを採用。当初はCPUにRISCを採用していたが、マイクロソフトがサーバ用途のRISC版Windowsから撤退し、1997年からはIntel社製CPUを搭載している。
  • 1997年 富士通「GRANPOWERシリーズ」
  • インテル社の汎用CPUであるPentiumPROを使用。業界標準のTCP/IPを全面採用し、ApacheやSendmailなどオープン系のソフトウェアを移植するなど、Webサーバとしての機能強化。 2000年に「PRIMERGY」シリーズとして再編成。
  • 2000年 IBM「eServer iSeries」
    Webアプリケーション・サーバー並びに、ロジカル・パーティション(LPAR)機能を標準提供
    2008年に「Power Systems」として再編成

ミニコンピュータの歴史

ミニコンピュータの歴史は、米DEC(Digital Equipment Corporation) 社の歴史だともいえる。同社のPDPシリーズとVAXシリーズは1970年代と1980年代の科学技術分野において、最も一般的なミニコンピュータだった。しかし、同社は1998年にコンパックに買収され、コンパックは2001年にヒューレット・パッカードに買収された。

  • 1959年 米DEC社「PDP-1」
    世界最初のミニコンピュータ。百万ドル以上の汎用コンピュータと同性能を12万ドルで実現。
  • 1965年 米DEC社「PDP-8」
    本格的な初期のミニコンピュータ。$18,000で卓上におけるサイズ。このシリーズで5万台以上出荷
  • 1969年 日本でのミニコン元年。各社がミニコン発表
    日立:HITAC 10、富士通:FACOM R、日電:NEAC M4、沖:OKITAC-4300、松下:MACC-7
  • 1970年 DEC「PDP-11」
    16ビット。これが1970年代ミニコンピュータの標準になる。
  • 1970年~1979年 日本各社がそれに追従。高性能化
  • 1978年 東芝「TOSBAC-7/70」
    初の32ビット。スーパーミニコンピュータと呼ばれる。
  • 1978年 DEC「VAX-11/780」
    同上。1980年代スーパーミニコンピュータの標準