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国の科学技術政策


科学技術政策の経緯

科学技術基本法 1995年~2018年 → 科学技術・イノベーション基本法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=407AC1000000130
科学技術基本法の目的
この法律は、
  科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)
    ・振興に関する施策の基本となる事項を定め、
    ・科学技術の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進する
  ことにより、
  我が国における科学技術の水準の向上を図り、
    ・もって我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに
    ・世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献すること
を目的とする。
科学技術基本計画 1995年より5年ごと~2020年 → 科学技術・イノベーション基本計画
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/index5.html
科学技術基本法により、政府は「科学技術基本計画」を策定し、長期的視野に立って体系的かつ一貫した科学技術政策を実行することにし、第1期(1996~2000年度)から5年ごとに策定されてきました。
総合科学技術会議 2001年~2014年 → 総合科学技術・イノベーション会議
https://www8.cao.go.jp/cstp/index.html
2001年に内閣府に「総合科学技術会議」が設置され、2014年5月に「総合科学技術・イノベーション会議」(CSTI、Council for Science, Technology and Innovation)に改組されました。
議長は首相で、科学技術担当相、文部科学相、経済産業相などの閣僚と産業界や学術界出身の有識者議員、科学者の代表機関である日本学術会議会長で構成しています。
国の科学技術政策の「司令塔」とされ、予算配分方針や5年ごとの基本計画などを決めます。
科学技術イノベーション総合戦略 2013年より毎年~2017年 → 統合イノベーション戦略
https://www8.cao.go.jp/cstp/sogosenryaku/
https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/index.html
第4期基本計画は、基本方針の一つとして「科学技術とイノベーション政策の一体的展開」が掲げられました。それにより「科学技術イノベーション総合戦略」の策定が、2013年より毎年行われてます。
さらに第5期基本計画では、科学技術イノベーション政策を強力に推進するべきとし、科学技術イノベーション総合戦略を統合イノベーション戦略と改称し、次の二つが創設されました。
  • 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)
    https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/sipgaiyou.pdf
    SIP: Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program
    基礎研究から事業化までを対象にしています。
  • 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
    "https://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/about-kakushin.html
    ImPACT:Impulsing PAradigm Change through disruptive Technologies Program
    ハイリスク・ハイインパクトなイノベーション創出を目的としています。

Society 5.0

https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html
第5期科学技術基本計画で提唱された概念です。
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続き、情報社会とも質的に異なる第5世代であるとの認識です。

Society 5.0の姿
Society 5.0で実現する社会を、科学技術の活用による人間中心の社会だとしています。
  • IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、新たな価値がうまれる社会
  • AI(人工知能)により、必要な情報が必要な時に提供される社会
  • 社会の変革(イノベーション)を通じて、様々なニーズに対応できる社会
  • ロボットや自動走行車などの技術で、人の可能性がひろがる社会
仮想空間と現実空間の高度な融合
Society 5.0は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより実現します。

国際的な動き

SDGs
SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とは、2015年国連サミットで採択された「2030年までに「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」です。先進国と発展途上国が協力して取り組むユニバーサル(普遍的)な目標です。日本も「SDGs経営推進イニシアティブ」を策定するなど積極的に取り組んでいます。
パリ協定(COP21)
COP(Conference of Parties:気候変動枠組条約締約国会議)の第21回会合が2015年にパリで開催され、同会議で採択された内容が国連気候変動枠組条約の下での気候変動への取り組みに関する国際条約になりました。これをパリ条約といいます。2016年に発効しましたが、2019年に米国は離脱しました。
1. 世界全体の温室効果ガス排出量削減のための方針と長期目標の設定
2. 各国の温室効果ガス排出量削減目標の設定
3. 途上国・気候変動の影響を受けやすい国々への援助
(SDGsは持続可能な開発を目指す広範囲な目標で拘束力がないのに対して、パリ協定は対象を気候変動への取組みに限定した国際条約です。)
DFFT
DFFT(Data Free Flow with Trust、信頼性のある自由なデータ流通)とは、2019年の世界経済フォーラムにおいて、日本が提案した情報共有のありかたです。背景に、日本の倫理観・社会観から生まれた「分かち合いの価値観」に基づくもので、Society 5.0の基本理念と合致、日本のSDGsの進め方のベースにもなっています。

科学技術・イノベーション基本法

科学技術・イノベーション基本法への移行 2018年

近年の科学技術・イノベーションの急速な進展により、人間や社会の在り方と科学技術・イノベーションとの関係が密接不可分となっていることを踏まえ、「人文科学のみに係る科学技術」及び「イノベーションの創出」を「科学技術基本法」の振興の対象に加えるとともに、基本計画の策定事項として研究者等や新たな事業の創出を行う人材の確保・養成等についての施策を明示する科学技術基本法等の一部を改正する法律が成立しました。この法律により、「科学技術基本法」は「科学技術・イノベーション基本法」に変更されました。
 それに伴い、科学技術基本計画も「科学技術・イノベーション基本計画」となり、2020年に2021年度からの5年間を対象とする「第1期科学技術・イノベーション基本計画」が策定されました。

科学技術・イノベーション基本法 2018年

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=420AC1000000063
正式名称は「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」です。

目的(第一条)

  この法律は、
  国際競争の激化、急速な少子高齢化の進展等の経済社会情勢の変化に対応して、
  我が国の経済社会を更に発展させるためには科学技術・イノベーション創出の活性化を通じて
  これに関する知識、人材及び資金の好循環を実現することが極めて重要であることに鑑み、

  科学技術・イノベーション創出の活性化に関し、
    基本理念を定め、
    並びに国、地方公共団体、研究開発法人及び大学等並びに民間事業者の責務等を明らかにするとともに、
       科学技術・イノベーション創出の活性化のために必要な事項等
  を定めることにより、

我が国の国際競争力の強化、経済社会の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

「科学技術基本法」の振興の対象に「人文科学のみに係る科学技術」及び「イノベーションの創出」を加えています。

基本理念(第三条)

科学技術・イノベーション創出の活性化は、
  これに関する国際的な水準を踏まえるとともに
  地域経済の活性化を図る観点を踏まえつつ、
次に掲げる事項(省略)を推進することにより、
  我が国における科学技術の水準の向上を図るとともに、
  国民経済の健全な発展及び安全で豊かな国民生活の実現
に寄与するよう行われなければならない。

構成

第一章 総則
第二章 研究開発等の推進のための基盤の強化
  第一節 科学技術に関する教育の水準の向上及び人材の育成等
  第二節 若年研究者等の能力の活用等
  第三節 人事交流の促進等
  第四節 国際交流の促進等
  第五節 研究開発法人における人材活用等に関する方針等
  第六節 その他の研究開発等の推進のための基盤の強化
第三章 競争の促進等
第四章 国等の資金により行われる研究開発等の効率的推進等
  第一節 科学技術の振興に必要な資源の柔軟かつ弾力的な配分等
  第二節 研究開発法人及び大学等の研究開発能力の強化等
  第三節 研究開発等の適切な評価等
第五章 イノベーションの創出の促進等
  第一節 産学官連携によるイノベーションの創出の促進等
  第二節 研究開発施設等の共用の促進等
  第三節 研究開発の成果の実用化等を不当に阻害する要因の解消等
第六章 研究開発システムの改革に関する内外の動向等の調査研究等
第七章 研究開発法人に対する主務大臣の要求
第八章 更なる科学技術・イノベーション創出の活性化に向けた検討
第九章 罰則

意義・重点

科学技術・イノベーション基本計画

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kihon6/chukan/honbun.pdf
2020年8月現在「検討の方向性(案)」の段階です。

2020年度を最終年とする第5期科学技術基本計画は達成できないことが明確になりました。

このような状況において、ウィズコロナのるニューノーマル(新しい日常)が提唱されています。それに合わせた基本計画をたてる必要があります。

中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)の見直し 2019年

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/seidokadai/4kai/siryo4.pdf
 米国では、スタートアップ・中小企業の研究開発支援において、SBIR制度(Small Business Innovation Research)により、産業に大きなイノベーションをもたらし、かつ、継続的に成長する成功企業を多数輩出してきました。
 日本もそれを参考に、1999年から「中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)」を実施してきたのですが、イノベーション創出への対応が欠けており、支出目標の対象分野の偏り・戦略性の欠如が指摘されてきました。
 それでこの制度を、「中小企業の経営強化」から「イノベーションの創出」にシフトするとともに、内閣府を中心とした省庁横断の取り組みを強化することになりました。

「中小企業の経営強化」にためには中小企業等経営強化法があります。1999年に成立し、逐次改正されています。
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/2019/190830kyokahou01.pdf