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働き方改革関連政策


背景:「働き方改革」の必要性と対策

少子高齢化が進み、労働力人口が急速に減少しています。その対策として
  ・出生率を上げて将来の働き手を増やす。そのために育児と労働を両立できる環境を整備する
  ・女性や高齢者に労働市場参加ができる環境を整備する
が求められます。

日本は労働生産性が低いこと、その裏返しとして、長時間残業が多いことが指摘されています。過剰労働による自殺が社会的問題になりました。

長く続いた不況により、企業は正社員の雇用を減らし、パートやバイト、非正規労働者の比率を高くしてきました。好況になっても将来の不安からこの傾向は続いています。この間に、正規社員と非正規社員の待遇格差が拡大してきました。

「仕事と生活の調和」の憲章・行動指針

このような状況を打破するために、2007年、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表等からなる「官民トップ会議」は、
  「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」 ( http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/charter.html
  「仕事と生活の調和推進のための行動指針」 ( http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/20barrier_html/20html/indicator.html
を策定しました(2010年改定)。

憲章

「憲章」では、「仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する」としています。

行動指針

憲章での「関係者が果たすべき役割」を展開して、
  (1)企業、働く者の取組、(2) 国民の取組、(3) 国の取組、(4) 地方公共団体の取組
の各主体の取組方針、点検・評価方法を提示しています。
 特に(1)と(3)については、
  ・総論
  ・就労による経済的自立
  ・健康で豊かな生活のための時間の確保
  ・多様な働き方の選択
に分けて詳細に展開しています。

一億総活躍社会

政府は、2015年に「一億総活躍社会の実現」( https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/index.html)をスローガンにして、「働き方改革」( https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakikata.html)を政策の重点に据えました。
 一億総活躍社会とは、少子高齢化が進む中でも「50年後も人口1億人を維持し、職場・家庭・地域で誰しもが活躍できる社会」であり、働き方改革とは、「一億総活躍社会を実現するための改革」といえます。


働き方改革関連法

条文: https://www.kantei.go.jp/jp/content/20180706joubun.pdf

正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます(2018年成立、2019年施行)。従来の労働基準法、パートタイム労働法、労働契約法など8つの労働関係法を改定する法律です。

残業時間の上限規制
一部職種を除き、時間外労働の上限が月45時間、年360時間になりました。
労使協定を締結した場合に関して、次のガイドラインを示しています。
・年720時間を上限
・単月で100時間未満
・休日労働も含めて連続する2カ月から6カ月平均で月80時間以内
・月45時間を上回る回数は年6回まで
高度プロフェッショナル制度
高度の専門的知識を必要とする業務に従事し、職務の範囲が明確で一定の年収(年収1075万円以上を想定)を有する労働者を労働時間の規制から外す仕組みです。年間104日の休日取得を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金などの規定の適用が除外されます。
勤務時間に縛られない働き方が可能になるとされていますが、労働者保護が低下するという懸念があり、議論が繰り広げられています。
同一労働同一賃金
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で職務内容が同一なのに賃金格差がある状況を解消することです。
・有期雇用労働者の均等待遇規定の整備
・派遣労働者に対し、派遣先の労働者との均等・均衡待遇
などがあります。
勤務間インターバル制度の普及促進
産業医・産業保健機能の強化
労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
行政による履行確保措置および裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

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