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e-文書法の概要

学習のポイント

情報システムの普及によりオフィスのペーパレス化が進んでいますが,従来,法律により紙文書での保存が義務づけられており,多くの無駄が生じていました。それを解消するべく,これまでにもデジタルデータでの保存を認める法的措置が行われてきましたが,その集大成となるのが「e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)」です。
 ここでは,e-文書法とはどのような法律か,電子保存するための要件は何かについて理解します。

キーワード

e-文書法,電磁的記録,税務書類,真実性,可視性,電子署名,タイムスタンプ


e-文書法の目的と背景

e-文書法「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」公布:平成16年12月,施行:平成17年4月( http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO149.html

目的(第一条)
この法律は,法令の規定により民間事業者等が行う書面の保存等に関し,電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法(以下「電磁的方法」という。)により行うことができるようにするための共通する事項を定めることにより,電磁的方法による情報処理の促進を図るとともに,書面の保存等に係る負担の軽減等を通じて国民の利便性の向上を図り,もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

この法律により、各種法令によって保存が義務付けられている文書について,重要性の低い書類については、スキャナで読み込んだデジタルファイルでの保存でもよいことになりました。それには、真実性や見読性などの確保のための手段、国税関係書類では所轄税務署長の承認などの規則が必要になります。

電子保存のニーズとこれまでの経緯

企業では情報システムの発展によりオフィスのペーパーレス化が進んできました。ところが,法的に紙での保存が義務づけられており,十分な情報システムの活用ができませんでした。
 日本経済団体連合会「税務書類の電子保存に関する報告書」(2004年3月)(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/018report.pdf)によれば,電子保存容認による効果は,税務文書に限定しても,保管コスト,運搬コスト,廃棄コスト,税務調査のための印刷コスト,取扱いのための人件費の総額が3,000億円にも達するそうです。

紙での保存を義務づけている法律の緩和措置は,これまでにも行われてきました(下表)が,この法律は,その集大成とでもいうべきものです。

   1998年 電子帳簿保存法施行
   2001年   IT基本法施行,IT戦略本部
   2001年   電子署名法施行
   2001年 IT書面一括法
   2002年   改正商法
   2003年 行政手続オンライン化法施行
   2004年   e-文書イニシアティブ発足
   2004年 e-文書法成立
   2005年 e-文書法施行

e-文書法で認められた内容

e-文書法は,帳票類や財務諸表,取締役会の議事録など,商法や税法などで企業に保存が義務付けられている文書について,電子化された文書ファイルでの保存を認めた法律です。
 「電磁的記録」には,「電子的文書」と「電子化文書」に区分できます。電子的文書とは,ネットワークによる商取引データのように,当初から電子的に作成された書類で,これを電子的に保存することは,以前の「電子帳簿保存法」でも認められていました。
 電子化文書とは,領収書のように,他人が作成した紙の書面をスキャナで読み込んだものです。e-文書法は,スキャナで読み取った画像データも一定の要件を満たせば原本として認められるとしたものです。

e-文書法は通則法と整備法から構成されています。通則法とは関係する多数の法律の改定すべき条項を列挙することにより,個々の法律をそれぞれ個別に改定する手間をはぶいたもので,銀行法や証券取引法など251の法律が一括改正されました。整備法では,通則法だけでは対応しきれない場合の規定整備を行うものです。
これにより,原則としてすべての書類が電子保存でよいことになりました。未だ国の段階であり,地方税など地方公共団体による条例に基づくものには適用されていませんが,「地方公共団体の責務等」として電磁的記録による保存を可能とするために必要な措置をすることを努力義務として定めています。

国税関係での電子化保存

e-文書法で対象となる文書は多様ですが,最も大量の保存文書は領収書などの税務書類です。それで,以降は国税関係に限定します。

国税関係での電子保存対象書類

他者作成の契約書・領収書で3万円未満のものが対象になります。
 3万円未満としたのは,3万円以上では印紙税がかかること,しかも一般的に高額な取引は金融機関の振替で行われること,3万円未満のもので全体の94%を占めることなどが理由です。
 これの電子化保存には,後述のタイムスタンプが必要になります。

国税関係書類の保存要件

スキャナで読込み電子化した文書は,見にくいこともあれば,不正に改ざんされる危険もあります。それで,国税庁では保存要件として「真実性確保要件」「可視性確保要件」「税務署長の事前承認」の3つを求めています。

真実性確保要件

電子化する過程,保存の間で不正が行われないための要件です。スキャナで読み込んだデータに電子署名とタイムスタンプをつけることになっています。

スキャナの解像度
フルカラー,200bpi以上の解像度であること。
これは領収書の小さい文字が見えるため,スキャナにかける前の改ざんを発見するために必要だといわれています。
また,小さな領収書を1枚づつ入力するのは非効率なので,数枚をまとめて入力してもよいことになっています。
電子署名
スキャナを用いて電子化した入力操作者を特定するために必要です。
実際には部課長など責任者の電子署名でもよいのですが,作業効率を高めるためには多数者の電子署名を取得しておく必要があります。それで,費用の安い公的個人認証(地方公共団体が認証局)が多くなると思われます。また,この作業を外注したときは,受託側の担当者の電子署名をつけます。
タイムスタンプ
改ざんされていないことを証明するために,タイムスタンプを挿入する(入力した時刻を第三者が認証する)ことが求められます。これにより,同じ領収書が2枚存在するのをチェックできるからです。
タイムスタンプサービスをしている会社があります。また,承認を受けたソフトウェアがあり,それを用いれば自動的にタイムスタンプが付けられます。タイムスタンプは有料ですので,数枚まとめてスタンプするなどの工夫も必要です。
 国税庁告示第4号(平成17年1月31日)では、電子保存対象書類のうち資金や物の流れに直接連動しない書類はタイムスタンプが不要としています。それには、見積書、注文書、検収書、入庫報告書、貨物受領書などがあります。

可視性確保要件

税務監査をするとき,電子化文書を容易に見ることができるための要件です。

見読可能装置の備え付け
保存している電子化文書を読める装置。読むためのソフトウェアがインストールされているパソコンと,カラーや解像度に合致したディスプレィ,プリンタを備え付けておくことです。
検索性の確保
大量の文書から特定の文書を探すのを容易にするために,適切な検索機能を持つシステムにしておくことが求められます。
ファイル形式(圧縮形式)
記憶容量の観点からは,スキャナで取り込んだデータを圧縮する必要がありますが,それが不適切だと正確に復元できません。具体的な形式は指定されていませんが,PDFが実務的に標準になっています。

経済産業省ガイドライン

経済産業省「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の中間報告書として「文書の電子化を促進するための企業向けガイドライン」を公表しています。そこでは,文書の電磁的保存の要件として,次の事項をあげています。

見読性
入力したデータやスキャナで読み込んだデータは,直ちに明瞭かつ整然とした形式で表示したり印刷できること。
完全性
電子データが保存義務期間中に滅失したり改ざんないための措置を講じること。改ざんされたときはその事実がわかるようにすること。
機密性
電子データへ不正なアクセスを防ぐ措置を講じていること。
検索性
電子データを容易に検索できるように,体系的に構成する措置を講ずること。

そして,電磁的保存の具体的方法に係る努力基準として,
  ・ログの保管
  ・アクセス制限(利用者のIDやパスワードなど)
  ・データチェック(件数やトータルチェックなど)
など,具体的な事項を列挙しています。