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知的財産基本法


政府は「知的財産立国」の実現を目指し、様々な施策を推進しています。
 2002年の知的財産戦略大綱によれば、「知的財産立国」とは、発明・創作を尊重するという国の方向を明らかにし、ものづくりに加えて、技術、デザイン、ブランドや音楽・映画等のコンテンツといった価値ある「情報づくり」、すなわち無形資産の創造を産業の基盤に据えることにより、我が国経済・社会の再活性化を図るというビジョンに裏打ちされた国家戦略です。

知的財産基本法

2002年成立、最終更新2015年
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=414AC0000000122#100

知的財産権の定義(第2条)

この法律で「知的財産」とは発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。

知的財産基本法の目的(第1条)

この法律は、
  ・内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ること
   の必要性が増大している状況にかんがみ、
  ・新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする
   活力ある経済社会を実現するため、
  ・知的財産の創造、保護及び活用に関し、
    ・基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、
    ・国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、
    ・並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の作成
    について定めるとともに、
    ・知的財産戦略本部を設置する
   ことにより、
  ・知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進すること
を目的とする。

知的財産戦略本部(第24・25条)

知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進するため、内閣に、知的財産戦略本部を置く。
次に掲げる事務をつかさどる。
 ・推進計画を作成し、並びにその実施を推進すること。
 ・前号に掲げるもののほか、
    知的財産の創造、保護及び活用に関する施策で重要なものの企画に関する調査審議、
    その施策の実施の推進並びに総合調整に関すること。

知的財産基本法の体系

第1章 総則
  第1条 目的
  第2条 定義
  第3条 国民経済の健全な発展及び豊かな文化の創造
  第4条 我が国産業の国際競争力の強化及び持続的な発展
  第5条 国の責務
  第6条 地方公共団体の責務
  第7条 大学等の責務等
  第8条 事業者の責務
  第9条 連携の強化
  第1条 競争促進への配慮
  第11条 法制上の措置等
第2章 基本的施策
  第12条 研究開発の推進
  第13条 研究成果の移転の促進等
  第14条 権利の付与の迅速化等
  第15条 訴訟手続の充実及び迅速化等
  第16条 権利侵害への措置等
  第17条 国際的な制度の構築等
  第18条 新分野における知的財産の保護等
  第19条 事業者が知的財産を有効かつ適正に活用することができる環境の整備
  第20条 情報の提供
  第21条 教育の振興等
  第22条 人材の確保等
第3章 知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画
  第23条 知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画
第4章 知的財産戦略本部
  第24条 設置
  第25条 所掌事務
  第26条 組織
  第27条 知的財産戦略本部長
  第28条 知的財産戦略副本部長
  第29条 知的財産戦略本部員
  第30条 資料の提出その他の協力
  第31条 事務
  第32条 主任の大臣
  第33条 政令への委任
附 則


知的財産推進計画

知的財産戦略本部が決定する行動計画です。2003年から毎年発表されています。

知的財産推進計画2020

「新型コロナ後の「ニュー・ノーマル」に向けた知財戦略」という副題がつけてあります。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20200527.pdf

基本認識

以前から情報通信技術の発展が社会や経済の構造に大きな影響を与えており、ますます知的財産の推進が重要だと指摘されてきました。

第5期科学技術基本計画(2016年)
Society 5.0(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会)への対処を掲げています。
知的財産戦略ビジョン(2018年)
価値デザイン社会(経済的価値にとどまらない多様な価値が包摂され、そこで多様な個性が多面的能力をフルに発揮しながら、様々な新しい価値を創造する社会)に対処するため、「日本の特徴」を活用し、発信し、世界の共感を得ることが重要だとしています。

2020年の新型コロナウイルスの世界的蔓延は、社会生活や経済に深刻な打撃を与えました。感染防止の観点から他人との接触を避けるために、テレワークや電子マネーなど、リモート化、オンライン化の行動変容が起こりました。それは観光業や飲食業に深刻な経済的打撃になりました。しかも、この現象は一時的なものではなく、将来にわたって日常化し、「ニュー・ノーマル」の社会になるといわれています。

知的財産推進計画2020では、この環境への対応の巧拙とスピードがコロナ後の我が国の競争力に直結するし、我が国が変革をリードすべく取組を加速すべきだという観点から、コロナ対応の様々な技術実装、ルール変更等を「実証実験」として見立て、結果を評価し、将来の制度設計等に結びつけることが重要だと指摘しています。

知財戦略

知的財産推進計画2020は、ニュー・ノーマルに向けた知財戦略のあり方として、次の戦略を示しています。

出典:知的財産戦略本部「知的財産推進計画2020概要」 (拡大図)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/kettei/chizaikeikaku20200527_gaiyou.pdf


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