作物の成長に影響を与える要因(因子)はいろいろあるでしょうが、肥料だけに着眼する場合、因子が一つなので一因子実験といいます。肥料の種類が3種類ならば、3水準であり、それぞれを水準1、水準2、水準3といいます。
実験計画法の創始者であるRonald A. Fisherは、実験を計画するには、目的となる要因以外からの影響が極力排除するために、次の3原則が重要だとしています。
ある作物の成長に影響する因子が土壌、肥料、温度の3因子であるというように因子数が複数の場合を多因子実験といいます。この場合もフィッシャーの3原則を守る必要があります。
ここでは、土壌はA1、A2、A3、肥料はB1,B2、B3、温度はC1、C2、C3の水準があるとします。
これらの各因子の水準をいろいろ変えて実験を行って成長の違いを調べたいのです。
単純に考えれば、3×3×3=27回の実験が必要になりますが、実験に要する時間や費用が大きいので、なるべく実験回数を減らしたいのです。その一つに、統計的手法を用いた実験計画法があります。
理論を省略して結果だけを示すと、下のように各因子の水準を割り付けた9回の実験を行うだけでよいのです。
割当表
実験No. 土壌 肥料 温度
1 A1 B1 C1
2 A1 B2 C2
3 A1 B3 C3
4 A2 B1 C2
5 A2 B2 C3
6 A2 B3 C1
7 A3 B1 C3
8 A3 B2 C1
9 A3 B3 C2
この表からみると、A2・B1・C1やA3・B3・C3などの組がありません。実験計画法では分散分析の手法を用いて、これらの組の関連性を確率で求めるのです。そのため、結論を得るために複雑な計算が必要になります。
実験計画法では直交表が重要なツールです。
多様な水準数、因子数の直交表が作成されており、通常はそれを用いればよいのです。
上の割付表は、水準数3、因子数4の直交表、L9(34)のうち、因子列A~Cの部分を用いています。例えば、直交表の実験No.2・因子列Bは2です。そして、割当表の実験No.2・肥料はB2になっています。
各因子が特性に与える直接的効果を主効果といい、土壌と肥料は独立ではなく、土壌Aのときは肥料Bがよいが、土壌Bのときは肥料Aのほうがよいというように、互いに関係がある効果を交互作用といいます。
交互作用を考えない場合は、先の割当表のように割り当てればよいのですが、交互作用がある場合は、因子に交互作用を加える必要があります。
土壌(A)と肥料(B)に土壌と肥料があり、温度(C)はこれらに独立だとするならば、因子はA、B、C、ABの4因子になります。直交表、L9(34)のDの列をABとします。このときは実験回数は9回ですみます。
温度も交互作用がある場合は、因子は最大A、B、C、AB、BC、CA、ABCの7因子になります。このときはL9(34)の直交表は使えまえん。L27(313)になりますので、最大27(=3×3×3)回が必要になります。