ネットワークの普及により、オフィス以外の場所からでも社内のデータにアクセスすることができますし、報告や連絡もできます。このように、情報通信技術を利用した場所・時間にとらわれない働き方をテレワークといいます。
テレワークの形態
- 自宅勤務
- 自宅のパソコンからオフィスのコンピュータにアクセスし、仕事を行う形態です。
- モバイル勤務
- 携帯電話やノートパソコンなどのモバイル・コンピューティング環境の整備が進んだため、移動中の場所からでも、オフィスにいるのと同様な業務をすることができるようになりました。
- サテライトオフィス
- 自分が所属している部門があるオフィスではなく、近辺の事業所に行って仕事を行う形態です。複数の企業が共同して事務室を設置することもあります。また、事務室を貸し出すレンタルオフィスサービスもあります。
- ＳＯＨＯ
- 以上は雇用者のテレワーク（雇用型テレワーク）ですが、個人あるいは少人数の企業が、自宅あるいは小規模事務所に情報通信設備を置くことにより業務を行う形態（自営型テレワーク）をＳＯＨＯ（Small Office Home Office）といいます。
実際には、ほとんどの就業日にテレワークを実施するテレワーカーは稀であり、多くの場合は、通常はオフィスにおり必要に応じてテレワークを行う随時テレワーカーです。国の統計では、１週間あたり８時間以上テレワークを行っている人を狭義のテレワーカー、テレワークができる環境にある人を広義のテレワーカーとしています。一般に、この狭義のテレワーカーをテレワーカーといっています。
テレワークのメリット
- 雇用者側のメリット
雇用者は、通勤に要する肉体的・精神的負担が少なくなり仕事の生産性・効率性が向上すること、家族とのコミュニケーションがとりやすくなるなどのメリットがあります。 - 企業側のメリット
雇用者のメリットはそのまま企業のメリットでもありますが、それ以外にも、営業部員が自宅から直接顧客を訪問することにより訪問数や訪問時間を増加できたり、顧客先から社内ネットワークにある情報を取り出すことにより商談を円滑に行ったりできるので、顧客満足を向上できます。また、オフィスに社員全員の机を用意する必要がないなど、オフィスコストの低減にもつながります。 （図表）。
- 社会のメリット
在宅中心での仕事が容易になり、通勤が困難な身体的障害者が社会参加したり、育児・介護などを抱えている人がの継続的に就業することができます。また、通勤に伴う交通頻度を削減することができます。テレワークの推進は少子高齢化社会や省エネ社会への対応にも役立ちます。さらに、ＳＯＨＯによる起業促進、僻地での就業機会の拡大にも役立ちます。テレワークの問題点
- モバイルコンピューティングではパソコンの紛失や盗難の危険が増大しますし、自宅での情報利用環境は、オフィスに比べてセキュリティ対策が徹底されないなど、セキュリティ面でのリスクが問題になります。
- オフィス外での勤務時間の把握など勤務に関する規程を明確にしなければなりません。成績評価の方法も変える必要があります。
国の政策
国は健全ななテレワーク推進政策を推進しており（国の政策）、「テレワーク人口倍増アクションプラン」（２００７年）を策定し、２０１０年までに狭義のテレワーカーが従業員人口の２０％となることを目標としてきましたが、着実に増加しています （テレワーク人口の推移）。
- 次世代育成支援対策推進法でのテレワーク推奨
- 総務省：テレワーク環境整備税制（シンクライアントシステム、ＶＰＮネットワーク機器等、テレワーク関連設備の導入を行う者の対象設備の固定資産税の課税標準を、取得後５年分、２／３に減税）
- 厚生労働省：「テレワーク相談センター」の拡充、「在宅勤務ガイドライン」（情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン）作成
- 経済産業省：地域テレワーク拠点整備支援、「中小企業のためのテレワーク活用ガイドブック」作成
- 国土交通省：テレワークセンターの実証実験、テレワーク人口実態調査、「テレワーク導入・運用ガイドブック」作成
災害時とテレワーク
２０１１年３月に発生した東日本大震災とそれに伴う福島原発事故は、夏場の電力不足に対処するため、節電要請や計画停電が行われました。
それに対処するために、テレワークを実施した企業が多くありました（調査結果）。そのまま定着するかスローダウンするかはわかりませんが、災害時における事業継続の観点からテレワークが重視されています。テレワーク導入率が大震災以前には１３.８％だった（国の統計とは値が違うのは、テレワークの定義によると思われます）のが、震災後３か月で６.３％増えて２０％になったのですから、かなり急激な増加だといえます。大規模企業、外資系企業、通信関連企業で高いのが特徴です。これらの企業は平素から災害への対策意識が高かったのでしょう。
- 社会のメリット
