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IT新改革戦略の達成状況


IT新改革戦略の成果

IT新改革戦略の推進にあたっては、IT新改革戦略評価専門調査会が、毎年度の成果評価および次年度重点計画の策定を行い、Web上で公開しています。2008年度報告書では、全般的にそれなりの成果をあげているものの、次の2つが課題が浮き彫りになったとしています。

例えば、電子行政分野での、国の機関が扱う申請・届出等手続きのオンライン利用率は、2010年までに50%を目標としています。2007年度末に22.7%になり同時点での目標を超える実績になっています。
 しかし、手続きごとにみると、目標値に達していない手続きが多く、依然としてオンライン利用率0%の手続きも存在している状態です(新聞等の指摘)
 それで、2009年度には、重点手続きに新たな目標を掲げて、メリット拡大、使い勝手の向上等の改善措置を3 年間で集中的に講ずること、一方、利用率が極めて低調である手続き等のオンライン化については見直しを図るなど、メリハリの効いた対応を行うことにしています。

●読売新聞、2009年9月18日
「電子申請利用率1%未満も…検査院が改善要請」
   http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090918-OYT1T01117.htm
 会計検査院は18日、利用率が10%を割った12システムを運用する10省庁に停止を含む改善措置を求めた。
 検査院が現在稼働する49の電子申請システムを調べたところ49システムの全体の利用率は08年度34・0%だったが、この12システムには昨年度までの4年間で計約118億円の運用コストがかかっている。そのうち、下表の7システムは、利用率が1%にも満たなかった。
   昨年度利用率が1%に満たなかった7システム ( )内は申請全体の数
   運用元 システム名    利用件数
   内閣府 汎用受付等    32件(7177件)
   警察庁 電子申請・届出  16件(1984件)
   総務省 電子申請・届出  688件(19万5843件)
       政治資金・政党助 2件(6354件)
       成関係申請・届出
   財務省 電子申請     61件(6万9758件)
   国税庁 電子開示要求   61件(13万4410件)
   農水省 電子申請     39件(14万5865件)

「電子申請等関係システムの利用状況について」
       (平成21年9月18日付け公正取引委員会委員長あて)
   http://www.jbaudit.go.jp/effort/zuiji/pdf/h21/210918_zenbun-8.pdf
 利用されていない申請システムの例として、公正取引オンライン共通受付システムについて、会計検査院が公正取引委員会にあてた文書があります。それによると・・・
・経費と利用状況
           17年度  18年度  19年度  20年度
  経費(万円)   2,218 1,456 4,384 5,816
  電子申請数(件) 7,030 4,958 6,936 1,996
  電子申請率(%) 10.6  7.9   7.0   3.3

 20年度では1件当たり約3万円の経費になっています。しかも、利用度は下がるのに経費は増加しています。
 このシステムには、30手続きがあるが、そのうち電子申請があったものは6手続にすぎない。最大が「不当景品類及び不当表示防止法違反等に係る申告」の1,383件で、全体の69.2%を占めており、上位3手続で1,993件、99.8%になり、この3手続き以外の利用率は0.1%だそうです。

なお、2009年に政権交替があり、新政権による「事業仕分け」でも同様なことが指摘され、利用度の低いシステムの廃止や改善が行われることになりました。

また、この公表を受けて、経団連(日本経済団体連合会)は、「新IT戦略の策定に向けて」を提言しました。成果については、一定の評価はするものの、IT導入に伴う業務見直しが不十分なこと、省庁間をまたがる統合した施策の実施が不十分なことなどを指摘し、
 ・省庁の業務改革への意識を向上させること
 ・全体の実現をマネジメントする組織体制を整備すること
 ・企業ID、国民IDの統合整備を行い、多面利用を検討すること
 ・人材育成では、ITと他の能力をもつ人材育成を図ること
など、新IT戦略の策定で検討すべき提案をしています。

世界金融不況の発生

「100年に1度」の経済危機が発生しました。(不況の説明)。深刻な不況により、IT投資は削減されます。逆に、このようなときこそ、ITを活用して業務改革や市場創造を行うべきだと考える企業もあります。また、国の政策として、雇用の確保のためにも、IT関連分野の活力をあげることが緊急の課題になります。

  2007年夏:サブプライムローンの価値下落
  2008年9月:リーマンブラザーズ倒産
  2009年6月:ゼネラルモーターズ経営破綻、一時国有化

サブプライムローンのバブル崩壊
米国の大きな消費、金融市場は世界経済に大きな影響を与えています。
米国の低所得者層への住宅ローン等を対象にしたサブプライムローンに対して、米国の格付企業が中古住宅価格上昇を前提に高い保証を与えており、この証券を組み入れた多様な金融商品が世界中に展開されていました。それが、返済の延滞率が上昇し、2007年夏頃に住宅バブルがはじけ、信用度が急激に低下しました。これがきっかけになり、証券全体に対する信用が低下しました。
リーマンブラザーズの破たん
そのため、世界中の金融機関の保有資産の価値が低下し、世界中の金融機関が多大な負債を抱えるようになりました。そのなかで、2008年9月に米国第4位の証券会社であるリーマン・ブラザーズが倒産したことは、さらに金融市場に打撃を与え、世界金融危機へと波及しました。
マネーゲーム
これらの遠因は、マネーゲームといわれる金融経済にあります。それは当然のことですが、最近は、円やドルなどへの通貨、原油や穀物相場、無関係な企業の株式など、実際の価値を無視した投機が盛んになっています。それが、マネーファンドが巨大な資金を集めて集中的に投機するため、国家経済や世界市況まで左右するようになってきました。それがバブルを生み、その崩壊につながっているのです。
資金が利益を追求するのは当然ですが、このような金融経済は不健全です。今回の世界不況は、現在の資本主義に対する警鐘だともいえるでしょう。