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i-Japan戦略


IT戦略本部は、2009年7月に「i-Japan戦略 2015」を策定しました。これは、e-Japan戦略IT新改革戦略に続くIT推進の第3次5カ年計画です。本来ならば、IT新改革戦略の最終年である2010年に策定するのですが、2008年に発生した深刻な経済危機に対応するため、前倒しにしたものです。

IT戦略本部は、i-Japan戦略に先立ち、2009年4月に、「デジタル新時代に向けた新たな戦略~3カ年緊急計画~」を発表しました。経済危機に対応して現行の情報化投資水準(約20兆円)を維持するため、今後3年間(2011年まで)で、3兆円の追加投資で約50万人の雇用を創出することを目標としたものです。
 i-Japan戦略は、3か年緊急プランを一体のものとして包含していますので、ここでは、両者の政策をi-Japan戦略として扱います。

i-Japan戦略のポイント

i-Japan戦略では、「i」を inclusion(包括)と innovation(改革)であるとし、「国民主役の「デジタル安心・活力社会」の実現を目指して」をキャッチフレーズにしています。「これまでの政策が、ややもすると技術優先指向となり、サービス供給者側の論理に陥っていた面があることを反省し、真に国民(利用者)の視点に立った人間中心のデジタル技術が、普遍的に国民(利用者)によって受け容れられるデジタル社会を実現する戦略でなければならない」としています。
 2015年までに、「デジタル技術が普遍的に受け入れられて経済社会全体を包摂する存在となる(Digital Inclusion)ことを目指す。これにより、公平に、簡単な使い方で、必要な情報を必要な時に、安全・安心に利用できる環境を実現し、暮らしの豊かさや、人と人のつながりを実感することができる社会を実現する」、「デジタル技術・情報により経済社会全体を改革して新しい活力を生み出し(Digital Innovation)、個人・社会経済が活力を持って、新たな価値の 創造・革新に自発的・前向きに取り組むことを可能とするとともに、企業の低コスト高収益体質への変革、環境・資源制約と持続的経済成長の両立や国際社会との協調、連携及び共生が可能な社会を実現する」ことを目標にしています。
 その実現のために、次の政策を推進するとしています。
    1 三大重点分野
      (1) 電子政府・電子自治体分野
      (2) 医療・健康分野
      (3) 教育・人財分野
    2 産業・地域の活性化及び新産業の育成
    3 デジタル基盤の整備

電子政府・電子自治体分野

電子政府の推進体制の整備、過去の計画のフォローアップを進めるとともに、2013年までに国民電子私書箱の整備をするとしています。
 国民電子私書箱とは、国民の一人ひとりに対し、電子空間上でも安心して年金記録等の個人の情報を入手し、管理できる専用の口座です。希望者がその口座を開設すれば、幅広い分野で便利なワンストップの行政サービスが受けられます (図)

医療・健康分野

地域の医師不足等の問題への対応(遠隔医療技術の活用、地域医療連携の実現、医師等の技術の維持・向上など)を進めるとともに、日本健康情報コミュニティの実現を計画しています(図)
 IT新改革戦略により、レセプトオンライン化、電子カルテの推進をしてきたのですが、まだ普及が進んでいない状況です。特に、デジタル技術を活用した医療機関間の連携は、一部の限られた地域を除き、ほとんど実現していません。その普及を図り、医療過誤の減少、個人の生涯を通じた継続的な医療の実現などを計画しています。

教育・人財分野

初等中等教育では、授業でのデジタル技術の活用等を推進し、子どもの学習意欲や学力、情報活用能力の向上を図ること、高等教育では、大学IT教育と産業界ニーズのミスマッチの解消のために産学官協力を推進するなど、従来の政策のさらなる発展を計画しています(図)

産業・地域の活性化及び新産業の育成

経済不況は地域に大きな影響を与えています。それから脱却するためには、新規分野も含めた景気刺激策や雇用創出策が求められます。その重点として、デジタル技術・情報の活用により全産業の構造改革と地域再生を実現することが期待されています。
 地上デジタル放送対応TVやグリーンIT機器の普及などによる産業の活性化、テレワーク就労人口の拡大、中小企業等の事業基盤整備、地域産業の新たな業態開発、クリエイティブな新市場の創出などが掲げられています。