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フェイクニュース


フェイクニュースとは

フェイクニュースの定義

フェイクニュース(fake news)は、偽情報(disinformation)ともいいます。いずれにせよ、「フェイクニュース」の定義はあいまいで、研究者によって様々です。
 一般的には、「フェイクであるにも関わらず、そのセンセーショナル性をもって広く拡散される情報」とされていますが、そもそもフェイクとは何か(逆に「真実とは何か」)となると哲学的な問題になってしまいます。

フェイクニュースの区分

英国DCMS下院特別委員会では Disinformation を次のように分類しています。

フェイクニュースの拡散

真実のニュースよりも虚偽のニュースのほうが拡散しやすいことは、経験的にも感じていますが、2018年に、MITの研究者は、フェイクニュース拡散に関する研究を発表しました。
Soroush Vosoughi, Deb Roy, Sinan Aral2, MIT Media Lab,
 "The spread of true and false news online(Science 09 Mar 2018:Vol. 359, pp.1146-1151)
https://science.sciencemag.org/content/359/6380/1146

研究チームは、2006〜2017年の間に公開された何百万件ものツイートを集め、ファクトチェッカー団体で真偽判定が行われた12.6万件のニュースと関連を調査し、次の結果を示しました。

また、ボットなどの自動拡散ツールでの拡散は、真実ニュースと虚偽ニュースでの差異は少なく、その違いはフェークニュースに接した人の行動によるものであり、拡散した人の特徴は、ヘビーユーザではなくフォロワ数もかなり少ないことが示されました。

フェイクニュースへの反応

フェイクニュースに接触したとき、それがフェイクニュースと気づかない人、リツイートして拡散に加担してしまった人の割合はどの程度でしょうか。
 総務省「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査」2020年6月 の結果です。
  ( https://www.soumu.go.jp/main_content/000693280.pdf
対象:アンケート調査会社の登録モニターから対象者を抽出、電子メールで告知・回収
標本:インターネットを週1日以上利用している15歳〜69歳の男女2,000名
   ほぼ毎日利用88.6%、平均2.24時間/日(業務利用を除く)
時期:2020年5月13日~14日
   第1回緊急事態宣言発令:2020年4月6日~5月25日解除
内容:17個のコロナ関連フェイクニュースを掲げ、接触と対応に関する回答

調査時期は緊急事態宣言発令中であり、テレビなどが国や専門家の真実(と思われる)情報を流しているのに、フェイクニュースを信じ、それを知人に伝えている人が多いのに驚かされます。コロナへの不安が高く、十分な納得できる解説の情報が不十分であることがその原因でしょう。
 また、対象にした17のフェークニュースでは、選挙関連などとは異なり、フェークニュース作成者にとって直接の利益はありませんし、専門家が真実だとして発表する内容だとは思えません。おそらく社会的な影響などに気づかずに「面白がって」発信したのでしょう。
 このアンケートでは回避しましたが、特定の個人、組織、職種、地域などを対象にして、コロナ感染のフェイクニュースがあり、自殺や休業に追いやられた例もあります。これらは「表現の自由」とはいえず、批判されべきです。

フェイクニュースを取り巻く環境の変化

情報通信技術の発展・普及

フェイクビジネス

現在では、フェイクニュースは、金銭目的のビジネスに悪化してきました。

社会構造への影響

民主主義は構成員が、多様な意見を聴き、健全な判断基準により評価し、それに基づいて意見を発表したり行動することにより成立します。異なる意見はよりよい意見に止揚するのに重要なのです。
 フェークニュースが横行すると、その特定の意見だけを信用し、他の意見に耳を傾けなくなります。民主主義の基盤となる社会構造に影響を与えているのです。

ポストツルース

「客観的事実よりも感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況」を指し、近年社会はこのような状況となっているとの見方もあります。
 フェイクニュースは政治的意図にも利用されます。2016年には、イギリスのEC離脱問題やアメリカ大統領選挙にフェイクニュースがかなりの影響を与えたといわれます。

フェイクニュースが広まると、それが「事実」ではなくても「真実」だと思われるようになります。「火のない所に煙は立たぬ」のだから「それに近い事実があるのだろう」と思う人もいるでしょう。また、そのような真実こそ事実なのだ(alternative facts)と喧伝する勢力もありましょう。
 その結果、フェイクニュースが「事実」だと多くの人が信じてしまうことがあります。このような風潮をpost-truth(ポスト真実、脱真実)といいます。

ポピュリズム(populism、大衆迎合主義)とは、一般大衆に受け入れやすい目先の願望に迎合した政治思想です。それ自体は一つの思想であり否定できませんが、ときとして既存体制を批判する手段が極端になり、alternative factsを主張することがあります。そのため、既存体制の代表的存在であるマスコミの批判をします。

フィルターバブル

一般に人間は、自分に心地よい情報に接したがり、そうでない情報を避けたがる傾向があります。この性向と極端な迎合主義が合致すると、「マスコミは信用できないので読まない。真実を伝える迎合主義陣営が運営するSNSだけを見る」となり、alternative factsこそが唯一の真実だとなる危険性が発生します。
 検索エンジンは過去の検索履歴を分析して、利用者が見たいだろうと思われる情報を優先して上位に表示して、見たくないだろうと思われる情報を遮断する(フィルタリングする)パーソナライズをしています。

このように、自分が好むサイトだけを閲覧していると、意識せずにそのようなサイトだけになり、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなります。しかも、それが正論だと信じるようになります。
 大統領選挙のように国論がAとBに二分したような場合、A支持者はA礼賛・B否定のフィルターバブルに落ち込み、B支持者も同様な状態になります。互いに他候補者は悪者だとし先鋭化し、深刻な分裂社会になる危険性があります。

フェイクニュース対策

総務省「プラットフォームサービスに関する研究会 最終報告書」

https://www.soumu.go.jp/main_content/000668595.pdf

報告書ではSNS(会員制交流サイト)など、一般の利用者でも簡単に情報の書き込みや拡散が可能なプラットフォーマーのサービスが「インターネット上で偽情報を顕在化させる一因になっている」と指摘。IT企業に偽情報の削除などを自律的に判断し対処することを求めています。

我が国におけるフェイクニュースや偽情報への対策の在り方

表現の自由への萎縮効果への懸念、偽情報の該当性判断の困難性、諸外国における法的規制の運用における懸念等を踏まえ、まずは民間部門における自主的な取組を基本とした対策を進めることが適当です。
政府は、これらの民間による自主的な取組を尊重し、その取組状況を注視していくことが適当と考えられます。特に、プラットフォーム事業者による情報の削除等の対応など、個別のコンテンツの内容判断に関わるものについては、表現の自由の確保などの観点から、政府の介入は極めて慎重であるべきです。
他方、仮に自主的スキームが達成されない場合あるいは効果がない場合には、例えば、偽情報への対応方針の公表、取組状況や対応結果の利用者への説明など、プラットフォーム事業者の自主的な取組に関する透明性やアカウンタビリティの確保をはじめとした、個別のコンテンツの内容判断に関わるもの以外の観点に係る対応については、政府として一定の関与を行うことも考えられます。

具体的な対応の在り方

ファクトチェック

フェイクニュースも言論であり、言論の自由は尊重されべきでから、フェイクニュースの発生自体を防ぐのは困難です。そのため、ある情報がフェイクニュースだと見抜くことが大切になります。
 それには、各読者が冷静に考え適切な判断ができる能力をもつことが基本ですが、SNSなどの提供組織がしかるべき対策を講じる必要があります。それをファクトチェック(fact-check)といいます。

例えば、フェイスブックは、米大統領選挙において、多くのフェイクニュースが投稿されたのに、適切な対策を取らなかったと非難されました。それに応じて、フェイスブックはフェイクニュースと思われる元の記事の下に、第三者機関による事実確認の記事も並べて表示するようにしました。
 フランスでは、仏大統領選挙に際して、多くの報道機関が協力し、フェイクニュースを検証する「クロスチェック」というサイトを発足させました。フェイクニュースの疑いがある記事の検証内容とともに、ファクトチェックに関わった報道機関名が表示されます。
 日本では、ニュースアプリ「スマートニュース」の運営会社などの関係者や、大学の研究者らが連携し「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」を立ち上げました。また、一般社団法人 日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)は、組織や媒体の枠を超え、 ジャーナリストが「個」として切磋琢磨しあう場づくりを行っています。
 このような対策が各国で急速に行われています。