著作権への認識を高めることが重要になった背景には、次のような環境の変化があります。
- 強力な情報発信能力
- 昔は著作権などは作家や芸術家など限られた人たちの問題であり、一般の人たちには無縁な存在でした。ところがインターネットの普及により、一般の人が強力な情報発信能力を得ました。
日本最大の全国紙の発行部数は1,000万部程度です。テレビは,周波数の関係から視聴範囲が限定されます。それに対して,Webページやブログなどは,世界中のインターネット利用者6億人以上が閲覧できます。すなわち,一般の個人が,新聞社や放送局よりも強力な情報発信手段を獲得したのです。そのため,著作権への配慮が重要になります。
- 情報発信の安易性
- 従来から著作に関係してきた人たちは,職業倫理として著作権を尊重しています。図書出版や放送では公開前に関係者の相互チェックが行われますし,業界での倫理規定よる審査が行われることもあります。そのため,著作権侵害を未然に防ぐことができます。
それに対して,個人がWebページを掲載する場合は,作成者自身が著作権への関心が低く,また,事前規制を受けることがありません。そのため,知らぬ間に著作権を侵害してしまうことが多いのです。
- デジタル情報の特性
- 実社会でも著作権を尊重することは重要ですが,特にWebページに掲げるときには,実社会よりもさらに厳しい倫理が求められます。
取り扱う情報がデジタル情報ですので、コピーしやすい特徴があります。他者のWebページから画像を失敬して自分のWebページに貼り付けることは数クリックで可能です。文章を抜き取って適当に編集するのも簡単にできます。音楽や動画などの大量データをコピーするのにも時間がかかりません。
しかも、これらのコピーを不特定多数の人が閲覧したり、さらにコピーをすることが容易にできます。このように、著作権の侵害が急速に広がってしまうのです。
- 相手がわからない
- Webページが図書や講演と異なる特徴として匿名性があります。図書や講演なら,どのような立場の人なのかがわかります。それに対して,Webページの作者は匿名やニックネームのものがありますし,本名や自己紹介の記載があっても,事実かどうか確認することができません。
著作権の侵害を訴えることができるのは著作権者です。子どもがドラえもんの似顔絵を描いて展覧会に出品しても,おそらく著作権者は訴えないでしょうが,写真家が撮影した写真の一部分を画家が絵画にしたら,盗作だとして大問題になるでしょう。Webページでは,作者が子どもなのかプロなのか不明なので,著作権者はより厳しく追及するでしょう。