スタートページ> Web教材一覧> オペレーションズリサーチ> 在庫管理
在庫総費用を在庫保管費用と発注費用の和であるとして、在庫総費用を最小にするには、発注量をどれだけにすればよいかを考えます。
在庫管理、経済的発注量
毎日決まった量の出荷があり,毎回決まった量を発注するとします。横軸に時間をとり縦軸に在庫量をとったグラフを描くと,下左図のように刃の揃ったノコギリのような形になります。図形からわかるように,発注量をQとすれば平均在庫量はQ/2になります。
また,下左図と下右図を比較すると,発注量Qを小さくすると平均在庫量はそれに比例して小さくなり,発注回数は逆比例して多くなることがわかります。
在庫総費用を在庫保管費用と発注費用の和であると定義すると,単純には在庫保管費用は発注量に比例し,発注費用は発注量に反比例しますので,発注量と在庫総費用の関係は右図のようになります。そして,在庫総費用を最小とする発注量を経済的発注量といいます。この経済的発注量を求めるのがここでの問題です。
次のように記号をつけます。 Q:1回の発注量[個] T:期間の日数[日] D:1日の出荷量[個/日] P:在庫物の単価[円/個] S:1日間の保管費用比率 PSは1個1日の在庫保管費用[円/(個・日) ] H:1回の発注費用[円]
1回の発注量をQとすれば,平均在庫量はQ/2ですから,T日間の在庫保管費用はTPSQ/2になります。
対象期間の全出荷量はTDですから,発注回数はTD/Qになり,発注費用はTHD/Qになります。
したがって,1日あたりの在庫総費用Zは,次の式で表されます。
在庫総費用の式:
Z=(PSQ/2)+(HD/Q)
Zを最小にするQを求めるには,Zを微分して0とする方法もありますが,上図から「発注費用=在庫保管費用」のときであることがわかります。すなわち,
PSQ/2 = HD/Q
より,求める経済的発注量は次式になります。
経済的発注量の式:
Q=√2HD/PS
なお,経済的発注量のQを在庫総費用の式に代入することにより,経済的発注量にしたときの在庫総費用は次式になります。
Z=√2HDPS
次の数値が与えられたとします。
D=5[個/日]
P=100[円/個]
PS=1円/(個・日) ]
H=1000[円]
その結果は次のようになります。
経済的発注量
Q=√2HD/PS
=√2×1000×5/1=100[個]
そのときの在庫総費用
Z=√2HDPS
=√2×1000×5×1=100[円/日]
当然ながら,発注費用Hが安価になり保管費用PSが高くなると,経済的発注量Qは小さくなり発注回数が増えることになります。
スーパーストアのような店舗では,次の理由により経済的発注量が極度に小さくなり,小ロット多頻度配送が要請されるようになりました。
企業では,コンピュータ用紙や文房具などが品切れすると仕事に差し支えますが,その管理をする人件費が問題になります。特定の納入業者に発注するのであれば,納入業者が客先の在庫を推測して勝手に納入しておき,消費した分だけを請求するほうが両者にとって便利なことがあります。
このような場合では,納入業者の配車計画がコストダウンにつながります。納入回数(発注回数)の最適化が必要ですが,これは経済的発注量の裏返しと考えることができます。
これからは発注費用640円での「経済的発注量にしたときの在庫総費用」の式を使えばよいので,在庫総費用Z1は次のようになります。
Z1=√2×640×5×1=80[円/日]
これまでは発注費用を1000円として経済的発注量を100個としていたのですが,それは経済的発注量ではないので,「経済的発注量にしたときの在庫総費用」を用いることはできません。
Z2=(PSQ/2)+(HD/Q)
=(1×100/2)=(640×5/100)=82[円/日]
すなわちZ2-Z1=82-80=2[円/日]の損失になります。