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待ち時間の分布

学習のポイント

これまでは,主にLやWqなどの平均値を取扱ってきましたが,顧客の観点からは,平均待ち時間よりも,長く待つことがどれだけあるのかという尺度のほうが適切でしょう。ここでは,M/M/1およびM/M/Sについて,到着してからサービスを受けるまでの時間の分布について考えます。


待ち時間の尺度

サービス時間が長いならば,ある程度長く待つのは仕方がないと感じますが,3分間の診療のために3時間も待たされるのでは不満が高まります。
 どれだけ長く待つかの尺度として,μtが2以上になる確率はいくつかというように,μtを単位とすると便利です。μt=2ならば,t=2/μですが,1/μは平均サービス時間ですから,この場合は平均サービス時間の2倍より長く待つ時間はどれだけかということになります。
 また,到着してからサービスを受けるまでの平均待ち時間はWqも,平均サービス時間との比率で表現すれば,μWqになります。
 なお,リトルの公式により,行列に制限がないときは,
   Wq=Lq/λ, Lq=L-λ/μ
ですし,窓口数をsとすれば,ρ=λ/sμなので,
   μWq=L/sρ-1
でもあります。
 なお,M/M/1のときはs=1,L=ρ/(1-ρ) ですから,
   μWq=L/sρ-1=L
となります。

待ち時間がtよりも長い確率

客は,平均的な待ち時間よりも,長く待たされることが苦痛になります。M/M/1のときに,待ち時間がtよりも長い確率P>tは次の式で表されます。
   P>t=ρ・e-(1-ρ)μt
 これをグラフにすると,次のようになります。

待ち時間のグラフ

ρ=0.6のときを考えます。μt=0では0.6.μt=1では0.4,μt=2では0.27になっています。
 μt=0というのは,待っている時間が0以上,すなわち待つ確率です。これが0.6になるのは明白でしょう。
 μt=1とは,t=1/μですから,平均サービス時間よりも長く待つ確率です。すなわち,平均サービス時間よりも長く待つ確率が0.4だというのです。同様にμt=2では,待ち時間が平均サービス時間の2倍以上である確率が0.25であることを示しています。

M/M/sでの待ち時間

例によって,窓口が複数になると,とたんに式が複雑になります。
M/M/sでの待ち時間の定式化
となります。計算式はゴツイですが,ρとsを与えればPt>0は計算できますし,Pt>τもμtを単位にすれば計算できますので,数表あるいは図表ができています。

M/M/sでの待ち時間確率のグラフ

かなりゴチャゴチャとしたグラフですが,窓口の個数(s)が1のとき太線,2のとき細線,3のとき点線になっており,待ち時間μtが1のとき黒線,2のとき青線,3のとき緑線などとなっています。

たとえば,ρ(=λ/sμ)=0.6のとき,s=1でのμt=1では0.4,2では0.18,3では0.05となっています。すなわち到着してからサービスを受けるまでの時間が,平均サービス時間(1/μ)よりも長い確率が0.4,その2倍以上が0.18,3倍以上が0.05の確率であると読取れます。
 次に窓口数での影響では,ρ=0.6のとき,平均サービス時間よりも長く待つ確率は,窓口が1つのとき0.4,2つのとき0.2,3つのとき0.11と読取れます。すなわち,同じρの値であっても,窓口数が増大することにより,サービスを待つ時間が短くなります。