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PDM(プレシデンス・ダイアグラム法)

学習のポイント

代表的なスケジュールモデルには、
  作業を矢線で表現する   ADM(アローダイアグラム法)
  作業をボックスで表現する PDM(プレシデンス・ダイアグラム法)
があります。ここでは、アローダイアグラム法の理解の上で、プレシデンス・ダイアグラム法について学習します。

キーワード

PDM、プレシデンス・ダイアグラム法、依存関係、リード/ラグ


PDMの概念

AOA図法とAON図法

アローダイアグラム(AOA図法)では作業を矢線で表しました。右図のクリティカルパスは、①→②→④→⑤、すなわちA・C・Eになります。
 AON図法では、作業をノードで示し、先行・後続関係を矢線で示します。下図は、右図を表およびネットワーク図にしたものです。このほうがが直観的に理解しやすいでしょう。AOAとAONは単なる表記法、入力データの違いであり、解法は同じです。→参照:AONでのPERTの計算プログラム
 プレシデンス・ダイアグラム法(PDM)は、AONの拡張機能です。


  作業名 先行作業 作業時間 
   A   なし   2
   B   なし   1
   C   A    2
   D   A,B  3
   E   C    2

プレシデンス・ダイアグラム法
(Precedence Diagramming Method:PDM)

precedenceは「優先順位」の意味です。

依存関係とリード/ラグ

上図での「XX±r」の「XX」を依存関係、「±r」をリード/ラグといいます。
  リードは先行作業に対して後続作業の開始を前倒しする時間(-)
  ラグは先行作業に対して後続作業の開始を遅らせる時間(+)

依存関係の例

「基本情報技術者試験、平成31年午前、問52」を変更
(「~する」は「しなければならない」ように解釈できるので「~できる」のほうが適切だと思いますが)

PDMでの結果の作業表記形式


PDM→AON

PDMを直接解くアルゴリズムやアプリがあると思いますが、私は知りません。それで依存関係を解釈してダミー作業を加えることによりAONに変換することを試みました(間違いがあるかもしれません)。

下表の凡例

FS±r 終了-開始関係(P終了のr後にQを開始できる)

SS±r 開始-開始関係(P開始のr後にQを開始できる)

FF±r 終了-終了関係(P終了のr後にQを終了できる)

SF±r 開始-終了関係(P開始のr後にQを終了できる)

簡単な実例

依存関係の指定がないとき

 作業名 作業時間 先行作業 
  A   2    
  B   1    
  C   2    A
  D   3    A
           B
  E   2    C


依存関係の設定

 作業名 作業時間 先行作業 依存関係 リード/ラグ
  A   2    
  B   1    A    SS   1
  C   2    A    FS   1
  D   3    A
           B
           C    FF   1
  E   2    C

ア A(SS+1) B
R0:Pの先行作業 → R0を作成し、R0の先行作業をAの先行作業(開始)とする
 P:R0     → Aの先行作業を R0 とする
    アを開始作業とすれば、この変更作業は不要
R1:R0      → R1(ア) を作成し、R1の先行作業を R0 とする
           R0 が開始なので、R1(ア) 作成だけでよい
 Q:R1     → Bの先行作業をアにする
イ A(FS+1)C
R1:P  → R1(イ) を作成。イの先行作業をAとする。
 Q:R1 → Cの先行作業のAをイに変更する。
ウ C(FF+1)D
P→Qを削除 → 「C→D」を削除
R1:P  → R1(ウ) を作成。その先行作業をCとする
 S:R1、Q → Eの先行作業をウとDにする
   Eが開始できるのは、ウとDの終了時刻

AONでの表示

 作業名 作業時間 先行作業 
  A   2    
  ア   1    
  B   1    ア
  イ   1    A
  C   2    イ
  D   3    A、B
  ウ   1    C
  E   2    ウ、D

計算結果

上の表をAONでのPERTの計算プログラムを用いて計算

                 最早日    最遅日   余裕
 作業名 作業時間 先行作業   開始 完了  開始 完了  日数
  A   2          0  	2    0   2   0
  ア   1          0     1       1     2      1
  B   1    ア     1  	2    2   3   1 
  イ   1    A     2  	3    2   3   0
  C   2    イ     3  	5    3   5   0
  D   3   A、B    2  	5    3   6   1
  ウ   1    C     5  	6    5   6   0
  E   2   ウ、D    6   8    6   8   0

全所要時間 = 8
クリティカルパス = (A,ア)、イ、C、ウ、E

条件の確認