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ワークフロー管理システム

学習のポイント

電子メールで購買伝票を回すときには,担当者→課長→部長というように,回覧順序などのルールを決めて送ることが必要になります。また,最終的な承認を得たら,そのデータを基幹業務系システムの購買システムとして自動入力できると便利です。このようなシステムをワークフロー管理システムといいます。

  1. ワークフロー管理システムとはどのようなものか。
  2. データウェアハウスや基幹業務系システムとの関係は。
  3. ワークフロー管理システムがBPRのインフラである理由は。

キーワード

ワークフロー管理システム,WfMC,プロセス定義,ワーク支援,ワークフロー管理,監視・記録,グループウェア,基幹業務系システム,BPR


1 ワークフロー管理システムの概要

ワークフロー管理システムの標準化団体であるWfMC(Workflow Management Coalition:ワークフロー管理連合)では,ワークフローとは,ビジネスプロセスの全体あるいは一部分をコンピュータ化して容易化または自動化することであり,ワークフロー管理システムとは,ワークフローを定義・生成・管理・監視・記録するシステムであると定義しています。

(1)ワークフロー管理システムの例

OA機器の購入申請を例にします。

  1. 申請者は,OA機器購入申請書に必要事項を入力して書類を部長に提出する。
  2. 部長は,それを審査して承認か却下かを決定する。
  3. 承認をしたとき,金額が50万円以上ならば役員審査へと書類が送られる。
  4. 役員審査で承認が得られると,発注処理へと進む。
  5. その後,経理部の処理へと進む。
  6. 上記の審査で却下されたときは,却下されたことが申請者に通知される。
ワークフロー管理システムでは,これを図のようにモデル化します。(Unisys社のStaffwareの例)

ワークフロー管理システムの図

(2)ワークフロー管理システムの機能

一般的にワークフロー管理システムは次のような機能を持っています。

プロセス定義
上図のようなワークフローを,上図の右下にある「ツール」を用いて作成します。これをプロセス定義といいます。「購買申請」や「部長審査」など,プロセスでの各ステップをアクティビティといいますが,アクティビティには,人間が行うマニュアルアクティビティとシステムによる自動的されたアクティビティがあります。「購買申請書作成」のように,アクティビティが行う処理のことをワークアイテムといいます。
ワーク支援
購買申請書の画面作成や審査での参考資料の作成など,利用者の業務を効率的に行うためのツールを簡単に作成する機能を持っています。
ワークフローの管理
実際に申請者のパソコンで書類を作成すると,部長に書類が来たことを知らせ,承認・却下の手続きをするといった業務の流れを管理します。
監視・記録
いつどこにどの書類が届き,どう処理されたかの記録を管理して,関係者がそれを参照することができます。たとえば申請者は,今どの段階まで審査が進んでいるかを知ることができる。また,どの部長あるいは役員が書類をどの程度処理しているか,書類を長期に止めているかなどもモニタリングできます。

2 他のシステムとの対比

ワークフロー管理システムは,グループウェアの特殊な形態ともいえるし,また基幹業務系システムの発展形態であるともいえます。

(1)グループウェアとの関係

グループウェアとの関係図

上の例のように,ワークフロー管理システムは書類添付機能と回覧機能を付加した電子メールであり,グループウェアの特殊な形態であるといえます。グループウエアを広く「グループによる作業を支援するソフトウエア」とすれば,ワークフロー管理システムもグループウエアの一種であるといえます。しかし,グループウェアではそのつどルールを設定するのに対して,ワークフロー管理システムでは事前にルールを設定します。ワークフロー管理システムでは繰り返し同じような処理が行われることを前提としており,1回だけの簡単なプロセスに適用するのには不向きです。また,ワークフロー管理システムでは,単に情報を回覧することだけを目的としているのではなく,各アクティビティでのワークアイテムの支援を重視しています。

(2)基幹業務系システムとの関係

基幹業務系システムとの関係図

単に相手にメッセージを送るだけならば,あるときは電子メールを使い,あるときは電話をするというように利用者の都合で手段を変えてもあまり問題はありませんし,システムにトラブルが発生しても,電話やFAXにような代替手段でカバーすることができます。それに対して,ワークフロー管理システムでは,この結果が基幹業務系システムの購買システムと連動しており,OA機器の申請は,かならずこの手段で申請しなければならず,それが途中で紛失したのでは重大なトラブルになります。ワークフロー管理システムでは,信頼性,正確性,記録性など基幹業務系システムと同様なことが要求されるのである。そのような観点から,ワークフロー管理システムは,基幹業務系システムの入力部分に注目した新しい発展形態だととらえるのが適切です。

従来の基幹業務系システムでも,購買システムとしてOA機器購入をシステム化していましたが,それはデータを入力した以降のシステム化をしただけであり,上の例のように業務全体のシステム化にはなっていませんでした。利用部門にとっては,従来の基幹業務系システムが「点としてのシステム化」であったのに対して,ワークフロー管理システムは「業務のシームレスなシステム化」であるといえます。


3 ワークフロー管理システムの意義

ワークフロー管理システムは,オフィスの生産性向上に適したシステムであり,BPRのインフラとして利用されます。

(1)日常業務の生産性向上

オフィス業務では,書類の作成や承認でのチェックなどの作業(ワークアイテム)がありますが,その作業を容易にします。また,書類作成→承認→基幹業務系システムへの入力というプロセスでの流れを円滑にして,プロセス全体の時間を短縮することができます。しかも,誰のところでに書類が溜まっているかをモニタする機能や各人別の滞留期間を統計的に算出する機能がありますので,仕事を遅らせている人が明確になり,滞留することへの強い牽制になります。

(2)BPRのインフラ

ワークフロー管理システムでプロセス定義を検討することにより,組織や業務の流れを改革することができます。

グループウェアとの関係図

不要なアクティビティの削除

担当者→課長→部長と承認ルートが流れるとき,部長が承認をするなら課長は不要かもしれないし,課長に権限委譲すれば部長の承認は不要かもしれません。あるいは,単に予算消化状況とチェックするだけならば,承認ルールをシステム化することにより,承認者としての課長や部長は不要であり,報告を受ける(モニタリングする)だけでよいのかもしれません。

並列処理による時間短縮

2人の承認が必要ではあるが,その前後関係は重要ではないような場合,従来のように紙での書類を回すのであれば,現物は1つしかないので,何らかの順序で直列に回覧するしかありませんが,ワークフロー管理システムでは,同時に2人に回し並列的に処理して,その結果を一つにまとめることも容易です。これにより,全体の処理時間を短縮することができます。


理解度チェック

第1問

  1. [ 1 ]の標準化団体である[ 2 ]は,ワークフローとは,ビジネスプロセスの全体あるいは一部分をコンピュータ化して容易化または自動化することであり,[ 1 ]とは,ワークフローを[ 3 ]・生成・管理・監視・記録するシステムであると定義している。
    1 ワークフロー管理システム 2 WfMC 3 定義
  2. グループウェアではそのつど[ 4 ]を設定するのに対して,ワークフロー管理システムでは事前にに[ 4 ]を設定する。ワークフロー管理システムは,単に情報を回覧することだけを目的としているのではなく,各アクティビティでの[ 5 ]の支援を重視する。従来の基幹業務系システムが「点としてのシステム化」であったのに対して,ワークフロー管理システムは「業務の[ 6 ]なシステム化」であるといえる。
    4 ルール(宛先) 5 ワーク 6 シームレス
  3. ワークフロー管理システムは,プロセス定義を検討することにより,不要な[ 7 ]の削除,並列処理による[ 8 ]をすることができ,組織や業務の流れを改革することができる。そのために,ワークフロー管理システムは[ 9 ]のインフラとして利用されることが多い。
    7 アクティビティ 8 時間短縮 9 BPR

第2問

  1. ワークフロー管理システムの事例を探して,その目的と特徴を一覧表にまとめよう。
  2. ワークフロー管理システムの製品を列挙し,その特徴を比較しよう。