電子メールで購買伝票を回すときには,担当者→課長→部長というように,回覧順序などのルールを決めて送ることが必要になります。また,最終的な承認を得たら,そのデータを基幹業務系システムの購買システムとして自動入力できると便利です。このようなシステムをワークフロー管理システムといいます。
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ワークフロー管理システムの標準化団体であるWfMC(Workflow Management Coalition:ワークフロー管理連合)では,ワークフローとは,ビジネスプロセスの全体あるいは一部分をコンピュータ化して容易化または自動化することであり,ワークフロー管理システムとは,ワークフローを定義・生成・管理・監視・記録するシステムであると定義しています。
OA機器の購入申請を例にします。
一般的にワークフロー管理システムは次のような機能を持っています。
ワークフロー管理システムは,グループウェアの特殊な形態ともいえるし,また基幹業務系システムの発展形態であるともいえます。
上の例のように,ワークフロー管理システムは書類添付機能と回覧機能を付加した電子メールであり,グループウェアの特殊な形態であるといえます。グループウエアを広く「グループによる作業を支援するソフトウエア」とすれば,ワークフロー管理システムもグループウエアの一種であるといえます。しかし,グループウェアではそのつどルールを設定するのに対して,ワークフロー管理システムでは事前にルールを設定します。ワークフロー管理システムでは繰り返し同じような処理が行われることを前提としており,1回だけの簡単なプロセスに適用するのには不向きです。また,ワークフロー管理システムでは,単に情報を回覧することだけを目的としているのではなく,各アクティビティでのワークアイテムの支援を重視しています。
単に相手にメッセージを送るだけならば,あるときは電子メールを使い,あるときは電話をするというように利用者の都合で手段を変えてもあまり問題はありませんし,システムにトラブルが発生しても,電話やFAXにような代替手段でカバーすることができます。それに対して,ワークフロー管理システムでは,この結果が基幹業務系システムの購買システムと連動しており,OA機器の申請は,かならずこの手段で申請しなければならず,それが途中で紛失したのでは重大なトラブルになります。ワークフロー管理システムでは,信頼性,正確性,記録性など基幹業務系システムと同様なことが要求されるのである。そのような観点から,ワークフロー管理システムは,基幹業務系システムの入力部分に注目した新しい発展形態だととらえるのが適切です。
従来の基幹業務系システムでも,購買システムとしてOA機器購入をシステム化していましたが,それはデータを入力した以降のシステム化をしただけであり,上の例のように業務全体のシステム化にはなっていませんでした。利用部門にとっては,従来の基幹業務系システムが「点としてのシステム化」であったのに対して,ワークフロー管理システムは「業務のシームレスなシステム化」であるといえます。
ワークフロー管理システムは,オフィスの生産性向上に適したシステムであり,BPRのインフラとして利用されます。
オフィス業務では,書類の作成や承認でのチェックなどの作業(ワークアイテム)がありますが,その作業を容易にします。また,書類作成→承認→基幹業務系システムへの入力というプロセスでの流れを円滑にして,プロセス全体の時間を短縮することができます。しかも,誰のところでに書類が溜まっているかをモニタする機能や各人別の滞留期間を統計的に算出する機能がありますので,仕事を遅らせている人が明確になり,滞留することへの強い牽制になります。
ワークフロー管理システムでプロセス定義を検討することにより,組織や業務の流れを改革することができます。
担当者→課長→部長と承認ルートが流れるとき,部長が承認をするなら課長は不要かもしれないし,課長に権限委譲すれば部長の承認は不要かもしれません。あるいは,単に予算消化状況とチェックするだけならば,承認ルールをシステム化することにより,承認者としての課長や部長は不要であり,報告を受ける(モニタリングする)だけでよいのかもしれません。
2人の承認が必要ではあるが,その前後関係は重要ではないような場合,従来のように紙での書類を回すのであれば,現物は1つしかないので,何らかの順序で直列に回覧するしかありませんが,ワークフロー管理システムでは,同時に2人に回し並列的に処理して,その結果を一つにまとめることも容易です。これにより,全体の処理時間を短縮することができます。