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トヨタのかんばん方式


SCMは米国で発展した概念ですが,納期を短縮し在庫を削減する生産方式の分野では,むしろ日本企業が進んでいたのです。
 日本の自動車産業では,かなり以前から部品の在庫を減らすことに対処してきました。その代表的な生産方式が1970年代中頃に確立したトヨタのかんばん方式です。

従来の自動車生産は,ベルトコンベアで代表されるように,前の工程から流れてくる部品をして後の工程に渡す前工程押込方式でした。この方式では,前工程に部品や人員に余裕があると,それをフルに使って後工程に流すのが効率的です。その結果,作りすぎになりやすく,製品在庫が増大してしまいます。しかも、車種が多くなり、オプションが豊富になると、一つのベルトコンベア工程に異なる部品が必要となるので、ますます仕掛り在庫が増大します。
 それに対して,かんばん方式では,後工程で必要になったときに,必要な量だけを前工程に「かんばん」という表示板を渡し,前工程はそれに従って生産するという後工程引取方式を採用しています。

前工程押込方式と後工程引取方式

この方式により,「必要な部品が,必要なときに,必要な場所に,必要な量だけ」供給されますので中間在庫が発生しません。自動車産業は典型的な系列構造で,多くの子会社や下請企業がありますが,それらがすべて一糸乱れぬタイミングで供給するのです。このような方式をJIT(Jast In Time)ともいいます。この方式は,他の製造業だけでなく,小売業や卸売業などにも広く普及しました。SCMも,米国製造業がトヨタのかんばん方式を熱心に研究して,それを米国流に発展させたのだといわれています。


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