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手作業と情報システムの違い


手作業での処理と情報システムを利用した処理との違いを、会計処理を例にして説明します。
 手作業で、会計伝票が起票されてから,貸借対照表などの財務諸表が作成されるまでのプロセスと,そのプロセスにおいて作成される主な帳簿類を示すと、左図のようになります。また,会計処理の部分だけを情報システムにすると右図のようになります(対比を明確にするために、あえて他と連携していない、旧式なバッチ処理のシステムを示します)。

手作業処理でのプロセス 会計単独の情報システム

この二つの図を比較すると,次のことがわかります。これは会計システムだけでなく,一般の情報システムにいえることです。なお、会計計算手続きの基準等による規制については無視しています。

中間帳簿が不要になる
手作業で処理する場合には,総勘定元帳を作り,補助簿や試算表を作成し,それから財務諸表を作るというような順序で作業を進めます。それは,手作業では,一気に財務諸表を作成するのでは,仕訳や計算で間違いがあると最初からやり直さなければならないので,中間での処理で確認をしておき,手戻りの範囲を限定することが必要だからです。
 それに対して,コンピュータ処理の場合は,プログラムなどにエラーがない限り,データを正確に入力すれば,会計ファイルの内容は正確なのですから,それから出力される内容はすべて正確なはずです。手戻りが発生する危険がないから,直接に財務諸表を作成することもできるし,確認用の中間帳票としての会計帳簿は理論的には不要になります。
入力データの正確性が重要
手作業の場合には、多様な帳簿への転記・計算が行われます。それが非効率なのでシステム化するのでしょうが、反面、その過程において第三者によりデータの誤りが発見され、その影響が局所的な時点で修正することができます。
 ところが、情報システムの場合は、誤ったデータがコンピュータに入ってしまうと,その後のチェックが困難になります。しかも、他のシステムと連動している場合は、入力した瞬間に多くのファイルが更新されてしまうので、取消処理が複雑になります。
 それで,データ入力の段階で厳しいチェックを行い,入力ファイルには正しいデータだけを受け入れるようにすることが重要です。画面から入力する場合には,1件のデータを入力した時点で確認画面を表示したり,誤りのある入力には画面にエラー表示をして,その場で修正させるようにします。また、入力したデータをプルーフリストとして出力し、入力者あるいは上位者が確認するようにします。また,会計伝票を作成してから入力するのではなく,先にデータを入力して正しく入力されたことを確認してから,そのデータを用いて正式の伝票を印刷発行することもあります。
入力もれの危険
入力されたデータをチェックすることはできますが,実際に取引が行なわれたのに入力されなかったことをチェックするのは困難です。貸方データと借方データを独立に入力させて照合させれば発見できるかも知れませんが,それでは入力作業が二重になってしまいますので不適切です。これをどのようにして発見するかがシステム設計での課題になります。

理解度チェック: 正誤問題選択問題