J-SaaSとは、国がSaaSのプラットフォーム(ポータルサイト)を用意し、民間ベンダからSaaSシステムでのソフトウェア部品を提供してもらい、主に従業員数20人以下の小規模企業に、財務会計や給与計算、電子申請などのアプリケーションを、格安な費用で利用できる環境を提供するサービスです。
経済産業省は、中小企業のIT化推進政策をとってきましたが、2008年から「中小企業経営革新プラットフォームシステム開発事業」を開始しました。それを具体化したものがJ-SaaSです。2009年からサービスを開始しました。
→J-SaaSのスタートページ(利用できるアプリケーションやベンダの一覧、利用料金などが掲載されています)
J-SaaSの目的(利点)
従業員が20名以下の中小企業がIT化を進めるには多様な壁があります。J-SaaSは、その壁を低くすることを目的としています。
- 費用の低減
中小企業では、IT化の費用が高い、特に初期費用がかかるためにIT導入をためらうことが多いのですが、J-SaaSでは、パソコンを購入してインターネットと接続するだけで、各種のアプリケーションが利用できるので、初期費用が低減できます。
また、利用料金は、一つのアプリケーションあたり数千円/月の月払いですので、運用費用も低額になります。月別契約ですので、自社にとって不都合ならば途中でやめることも簡単なので、導入リスクを小さくできます。
- 利用操作の容易化
中小企業では、パソコン操作に習熟した人が少ないので、多様なアプリケーションを使いこなすのが困難なことがあります。J-SaaSでは、すべてのアプリケーションがWebブラウザで利用できます。パスワードもシングルサインオンが採用されているので、アプリケーションの切り替えのたびに、パスワードを入力する煩雑さが低減されます。
- 申告等との連携
国は、青色申告の徹底、税処理の自力化(税理士に頼らず自分で申告書を作成)、オンライン申告(e-Taxの活用)の普及を推進していますが、J-SaaSを用いることにより、日次の売上や経費などを入力すると、自動的に財務会計や給与計算を行い、法人税や、従業員の所得税などの申告をオンラインで行うことができます。
- 人材の支援
中小企業では、ITを活用する人材に乏しく、ITを経営の改善に結び付けることが不十分です。それを解決するために「J-SaaS普及指導員」があります。この指導員は、IT経営応援隊とITコーディネータですので、経営診断を行い、どのようなアプリケーションを利用すればよいか、その処理結果をどう活用すればよいかなど、経営やITのコンサルタンティングもしてくれます。
- セキュリティ対策
インターネットの利用ではセキュリティ対策が重要ですが、J-SaaSでのプラットフォーム(サーバ)を経由することにより、サーバ側でセキュリティ対策を行うので、ユーザ側の対策が低減されます。この分野の対策が不十分な中小企業にとっては、むしろ安全性が高くなるともいえます。
J-SaaSの体制
J-SaaSの運営は、民間が行っています(構成図)。
- 経済産業省は、IT基盤開発業者に基盤開発を委託し、IT基盤業者はJ-SaaSのプラットフォーム(ポータルサイト)を開設・運営します。
- アプリケーションベンダは、各アプリケーションをプラットフォームへ提供します。この場合、アプリケーションそのものをプラットフォームに置くケースと、ベンダのWebサイトに置くアプリケーションを呼び出す情報だけをプラットフォームに提供するケースがあります。
- ユーザ企業は、プラットフォームにアクセスしてサービスを受けます。
国は、IT基盤開発業者への基盤開発費、アプリケーションベンダにSaaS適用のためのアプリケーション開発費を援助します。
ユーザ企業は、利用代金をアプリケーションベンダに支払います。
アプリケーションベンダは、IT基盤業者にプラットフォーム利用料を支払います。
普及や指導は、地方自治体、商工会議所、中小企業団体などが、J-SaaS普及指導員を活用して行ないます。
当初の計画では、2010年度までに利用企業を数十万社程度に普及し、ビジネスとして成立するようにして、民間に移行するとしています。