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ERPパッケージ導入での失敗

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BPRの実現、保守費用、ノーリツの例


ERPパッケージが普及するのにともない、期待したこととは異なる状況が発生する事例が多く出てきました。

BPRの実現がなおざりに
ERPパッケージでのシステム構築はしたが,本来の目的であったBPRの実現ができていないという現象が多くあります。「日経コンピュータ」(2002年7月1日号)や「日経情報ストラテジー」(2002年7月1日号)でそれを特集しています。このような特集が組まれること自体が,ERPパッケージに期待した目的が達成されていないこと,アプローチに問題があったことを示しています。
 ERPパッケージによるシステム開発は、その経験がないこと、対象が大規模であることなどにより、多くのトラブルがあり苦労します。予定したよりも費用がかかり納期が遅れるがちです。担当者も経営者も、ともかくシステムを構築することに関心が集まり、本来の目的を見失うことになるのです。
ERPパッケージの保守費用
ERPパッケージに限らず一般にソフトウェアは買取費用だけでなく保守料がかかります。これはERPパッケージそのものの機能アップを対象としたもので,個々の企業での業務アプリケーションの機能改善のためではありません。ですから,当初開発したものに全然手を加えなくても発生するのです。
 保守料はERPパッケージによりまちまちですが,なかには買取価格の20%以上のものもあります。ですから5年ごとに新しいERPパッケージを購入しているようなものです。高価なERPパッケージの場合には,毎年1億円以上の保守料を払うようなケースもあります。
 また、ERPパッケージのバージョンアップにより、サーバ、クライアントのOSやネットワークシステムを最新のものに変更する必要が生じることもあります。このような費用は多大なものになります。それが重荷でバージョンアップが行えないという現象もあります。
アドオンによる費用
大手の給湯器メーカー(ノーリツ)は、1996年から4年がかりで構築したERPパッケージ(SAP社R/3)によるシステムを、運用に入る直前に、全面廃棄にして16億円の特別損失を計上しました。
 同社は生産管理や受注管理で優れた方式をもっていました。それで、ERPパッケージを導入するのに、自社の優れた方式を取り込もうとして、多くの外付けシステム(アドオン)を開発しました。それで開発費用が大きくなったのです。さらに、ERPパッケージをバージョンアップするときには、外付けシステムの動作検証や修正にさらに数億円の追加費用がかかると予想されました。その費用をかけるのであれば、自社でカスタムメイドするほうが安上がりだと判断したのです。