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TCO(Total Cost of Ownership)と「見えない」費用


一般に投資において、初期の購入費などをイニシャルコスト、その後の運用や保守に係る費用をランニングコストといい、購入から廃棄にいたる総費用(イニシャルコスト+ランニングコスト)をTCO(Total Cost of Ownership)といいます。情報システムでいえば、情報システム開発の企画から構築、維持運営、廃棄にいたるまでのライフサイクル全体に要する費用がTCOです。

例えば、パソコン購入でのハード・ソフトなどの直接費用は10~20万円程度ですが、それの管理費用、ネットワークへの接続、ソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策、利用者への教育や支援などを考慮すると、それの数倍かかるといわれています。しかも、それらの大部分は利用部門やIT部門の人件費などの割合が大きいのです。

情報システムの開発では、ベンダへの支払費用以外に、IT部門はもちろん、利用部門にも多くの労力がかかります。それには、開発での打ち合わせやデータの整備など明確な活動以外に、業務の変更や社外との折衝などがあります。
 開発した後でも、運用にかかる多様な費用がかかります。より使いやすくするとか、環境が変化するなどにより、改訂が必要になります。それらのため、システムを構築してから廃棄されるまでの維持費用は、開発時に要した費用よりも大きくなることもあります。
 さらに、ポイントカードやWeb販売での特典にかかる費用も含めれば、その費用は非常に大きいものになりましょう。

このように、情報システムにかかるTCOのうち間接費用が占める割合は非常に大きいのですが、これらの費用は「見えない」ので、投資案を検討する時点でこれらの費用を明示することは稀でしょう。「投資検討時点では大きな利益が得られると期待したのに、いっこうに収益が改善されない」のは、この「見えない」費用が大きな原因の一つです。
 また、この「見えない」費用には「測定できない」特徴があります。特に利用部門の活動を前もって算出するのは困難ですし、事後でもそれを記録する制度になっていないでしょう。
 「見えない」から「見なくてもよい」のではありません。かなり雑でもよいから項目として列挙してなんらかの数値をあげておくことが必要です。それによって「見えない」事項に関心をもつでしょうし、事後測定をする体制になり、それを継続するうちに、「見える」ようになるのです。