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顧客満足とマーケティング

学習のポイント

企業が成長発展するには,自社製品やサービスが売れることが必要です。売れるには顧客の満足を得ることが前提になりますので,すべての経営活動は顧客満足を獲得するためであるといってもよいでしょう。ここでは,顧客満足をいくつかの観点から理解します。
マーケティング戦略を策定するたもの技法については、「マーケティング戦略技法」で扱います。

キーワード

顧客満足,顧客志向マーケティング,市場細分化,CRM,1to1マーケティング,SCM


マーケティング理念の変遷

企業は製品(サービスも含む)を売って利益を得るのですから,いかに売るか,すなわちマーケティング戦略が経営戦略の最大の要素になります。消費経済の変化によりマーケティング戦略も変化してきました。

生産志向マーケティング
戦後間もない頃では,生活必要物資ですら欠乏していました。その頃は,ともかく生産を上げることが企業の任務でした。
それほどではなくても,需要に対して供給が追いつかない状況では,企業戦略の基本は,よい製品を低価格で提供することであり,そのためには大量生産をすることでした。
販売志向マーケティング
需要と生産がバランスするようになると,一定のパイを奪い合う競争になります。それで販売力の強化が経営戦略での重要な要素になります。販売では価格と品質が決め手になりますので,ここでも大量生産・大量販売が競争優位を得る基本です。それを規模の経済といいますが,工業化社会は規模の経済に適した社会でした。大量生産・大量販売には市場を画一的なものだとする考え方があります。それをマスマーケティングといいます。
顧客志向マーケティング
現在では,生産が需要を大きく上回っており,生活に必要なモノは既に十分にあります。このように消費経済が成熟化すると,顧客のニーズは高度化し多様化します。単に品質や価格だけが購買の評価基準ではなく,顧客のニーズに合致した製品でないと売れません。しかも顧客ニーズは多様ですから,従来の大量生産・大量販売の戦略は成立しません。このように,顧客満足を得ることを志向したマーケティング戦略を顧客志向マーケティングといいます。
社会志向マーケティング
さらに,環境保護などの視点から,顧客満足を生活全般の満足であるとして,生活者志向マーケティングとか環境志向マーケティングなどがいわれ、社会志向マーケティング(ソーシャルマーケティング)と総称されています。
 社会志向マーケティングによる製品開発や社会貢献活動などの企業の社会的責任(CSR(Corporate Social Responsibility)であり、それによる企業イメージの向上が販売成果や株価向上につながっていると認識されるようになりました。

顧客満足への対応

顧客満足を得るということは,顧客ニーズを迅速に正確にキャッチして,新製品を提供することですが,顧客ニーズには次の特徴があり,それに対応することが必要です。

ニーズが多様である
ある人は価格に敏感でしょう。性能が高いとか丈夫であるといった品質にこだわる人もいます。デザインやブランドにこだわる人もいます。このように,人によりニーズが異なりますので,市場を画一的にとらえることはできません。対象を絞った市場細分化が必要です。
また,細分化した市場全体をカバーする製品群を提供することは困難です。それよりも,自社の得意とする分野に集中するのが,競争優位を得ることになります。
変化が激しい
ある商品がある時点で非常に売れたとしても,すぐに見向きもされなくなります。一般商品が流行商品化したともいえます。売れるからといって生産をあげたら売れなくなり,過剰設備や不良在庫で大きな損失を招くことがよくあります。
これに対処するには,市場動向を常にキャッチして,迅速に対応できる仕組みを作っておかなければなりません。

情報システムの活用

多様で変化の激しい顧客動向を迅速に正確に得るためには,情報システムの活用が効果的です。近頃構築されている情報システムの多くが顧客動向の把握と対応に関係しています。

顧客行動の把握
市場細分化をするには,顧客の特性や購買行動を把握すること,すなわち「顧客が見える」ことが必要です。それにはPOSなどで得たデータをデータベースに蓄積して,それを分析してマーケティングに活用することをデータベースマーケティングといいます。データウェアハウスやデータマイニングなどの技法が用いられます。
 また,細分化を徹底すれば個人になります。それを「個客」といいますが,個客の購買行動を把握してマーケティングすることを1to1マーケティングといいます。これを実現するには,クレジットカードや会員カード、Web販売などにより個人情報のを収集することが行われています。しかし,個人情報を他の目的に利用したり第三者に漏洩することによるトラブルを避けるために,個人情報保護法を遵守することが重要です。
企業間のデータ共有による連携
顧客満足を実現するのに,一企業だけで実現できることには限界があります。小売業-卸売業-製造業がデータを共有することにより協力するQR/ECR,部品メーカー-組立メーカー-配送業など供給を構成する企業がデータを共有して協力するSCMなどの情報システムが活用されています。
CRM
CRM(Customer Relationship Management)とは,顧客との関係を向上させるための情報システムです。顧客関係を向上させるためには,顧客情報と購買情報,これまでのアプローチなどを収集・蓄積し分析することが必要です。また,顧客からの問合せやクレームなどに適切に対応する仕組みも必要になります。

理解度チェック: 正誤問題選択問題