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Web2.0(Webの進化)

学習のポイント

Web2.0とは,特定の技術やサービスを指すものではなく,Web利用環境の第2世代というような意味で使われます。ここでは,Web2.0の技術面ではなく,Webの利用面やビジネス面での変化について考えます。
 ・ブログなど参加型のWeb利用が増加する
 ・パソコン機能がWeb化する
 ・マッシュアップにより多様なサービスを組み合わせたサービスが容易になる
 ・Webビジネスにおけるロングテール現象とは何か
 ・インターネット広告が大きく変化している

キーワード

Web2.0,ブログ,SNS,Ajax,マッシュアップ,Webサービス,ロングテール現象,検索連動型広告,アフィリエイト


参加型Web

Web2.0の特徴の一つに,利用者参加型のWebが増大してきたことがあります。従来からもWebページでの掲示板などがありましたが,近年ではブログ、SNS、動画共有サイトなど双方向型の利用が急速に増大しています。

ソーシャルメディア
ソーシャルメディアとは、個人や組織が、インターネットなどを用いて、多様なコンテンツを、グループに所属する個人や組織に伝える双方向的なコミュニケーション環境です。商用のものも非商用のものもあるし、非常に限定した狭いグループもあれば実際には不特定多数の参加できるものもあります。
これに対して、従来の新聞、テレビ、映画など、膨大な経営資源をもつ企業が一方的に伝えるメディアを産業メディアといます。大衆を産業メディアでのコンテンツ消費者をソーシャルメディアではコンテンツ生産者へと変えるものだといえます。
ソーシャルメディアを形成する要素にUGCとCGMがあります。
UGC(User-Generated Contents)
ソーシャルメディアで、利用者(大衆)が制作・生成されたコンテンツのこと。SNSでの発言、共有サイトでの投稿などです。
CGM(Comsumer Generated Media)
UGM(User-Generated Media)ともいいます。UGCを主とするサイトのことです。ブログ、SNS、動画共有サイトなどが利用されます。

ブログ

ブログとはWebとログ(記録:log)を略した言葉で,Web上に残される記録というような意味です。多くのプロバイダなどから無料でのブログ開設サービスが提供され,簡易Webページとしても普及してきました。
 ブログでは,読者との双方向コミュニケーションを容易にする機能が多くあります。

パーマネント(恒久・不変)なリンクの意味です。一般にWebページのリンクはページ単位なので,ページの内容が変更されると目的の記事が閲覧できません。パーマリンクは,個々の記事を単位としてURLを割り当てるので,その記事がWeb上に保存されていれば,リンクをたどってその記事に到達することができます。
また,個々の記事にたいしてトラックバックやコメントを与えることだできます。
コメント
ブログ画面では,記事を読んだ人がコメントを書き込む機能が標準装備されています。従来の掲示板に似ていますが,各記事の画面から直接にコメントを書いたり読んだりすることができます。
トラックバック
他のブログとの相互リンクの自動化機能です。自分のブログで相手の記事のURLを指定してトラックバックを送信することにより,自分のブログと相手のブログの両方にリンクが自動的につけられます。
コメントやトラックバックにより,この記事を閲覧する人が多数の人による関連情報も閲覧することができますし,自分の意見を書き込むことができます。
RSS
RSS(Rich Site Summary)とは,Webサイトやブログの見出し,URL,要約,更新時刻などを要約して配信するXML文書フォーマット、フィードはRSSによって作成された文書です。
RSSリーダというソフトを用いて各サイトを巡回してフィードを収集しブラウザに表示することができます。

その他の参加型のWeb

SNS
SNS(Social Networking Service)とは,限定されたメンバでのブログのことです。
wiki
ブラウザから誰でもWebページの作成や更新ができるシステムです。共同作業で文書を作成するのに向いています。その典型的な例として,このシステムを使って,不特定多数が編集しているフリーの百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」があります。

Webシステムの変化

ポータルサイトの変化

検索エンジンやバーチャルモールなどのポータルサイトは,Web利用で重要な存在ですし,無料の乗り換え,地図サービスやグループウェアサービスなどは既に一般化していますが,それがさらに高度化,多様化してきました。

Ajaxの活用
Web2.0を支える重要な技術にAjax(Asynchronous JavaScript + XML)があります。
通常のWebアプリケーションでは,ブラウザ画面からデータをブラウザに送り,サーバからデータを受け取ってブラウザを再表示することにより処理を進めています。
Ajaxでは,指定したURLからXMLドキュメントを読み込むJavaScriptの機能を用いて,サーバと非同期に通信を行ないます。それにより,サーバを意識しないでWebアプリケーションの操作をすることができます。この機能は以前からあったのですが,それをうまく利用した典型例として,Google LocalGoogle Earthが発表され(画面例),それに刺激されて多様なサービスが提供されるようになりました。
ソーシャルタギング
タグ(分類のためのキーワード)による検索方法は,大きく二つあります。その一つは,タグを単なる文字列として取扱い,それと一致した文字列が存在するページを探す方法です。これでは「京都」を探すと「東京都」も含まれてしまいますし,「京の都」は見つかりません。
もう一つの方法は,キーワードをその言葉の意味から関連語や上位語などの体系化を行い,それによって検索する方法です。しかし,通常は検索エンジンの運営者によって設定され体系化されているので,どうしても一面的になります。
それに対して,ページを閲覧した人がそのページに自由にタグを付けることを,ソーシャルタギング(social tagging)とかフォークソノミー(forksonomy)といいます。これを利用することにより,多様な観点からの検索ができますし,現在話題になっているキーワードを知ることもできます。

パソコン機能のWeb化

さらに,これまでは自分のパソコンに装備しなければならなかったハードウェアやソフトウェアが,Webで無料で利用できるようになりつつあります。
 この動向が進むと,情報環境が通信回線のこちら側(パソコン)から向こう側(Web)へと大きく変化することになります。ソフトウェア業界に大きな影響を与えるし,社会的にも大きな影響を与えるでしょう。

無料オンラインストレージサービス
容量・保管期間の制限がありますが,無料でデータを保管してくれるサービスが出現しています。なかには2GBのものもあり(Gdrive),パソコンデータのバックアップとしても利用できます。
ワープロ・表計算ソフトサービス
Writely(Googleに買収)は,Web上で Wordのような文書作成を作成するソフトウェアです。作成した書類はWritelyのサーバに保存され,一覧画面で管理できるし,デスクトップにダウンロードできます。Word,OpenOffice,PDFなどに変換できます。
Google Spreadsheetsは,Web上でのExcelのような表計算ソフトです。
これらは,Ajaxの応用例でもあります。
Webワープロソフトの例
(http://www.writely.com/より)
Web表計算ソフトの例
(http://spreadsheets.google.com/より)

マッシュアップ

Webサービスとは,ビジネス取引の自動化を目指した技術で,ネットワーク上に分散した複数のサービス要素の集合を一つのサービスとして提供するものです。
 例えば旅行の計画をするとき,列車予約と旅館予約の両方が必要になりますが,JRや私鉄,個別の旅館のサイトをいちいち調べるのでは大変です。また,それを統合するサイトとしては,鉄道会社や旅館からデータを提供してもらい,それを編集してWebページにする作業は大変です。
 これを解決するには,各社が予約サービスのインタフェースを標準化しておくこと,各社の予約サービスの存在をまとめたデータベースがあること,それを簡単な操作で利用できる標準化がなされていることなどが必要になります。このようなシステムをWebサービスといいます。

SOA(Service Oriented Architecture)という用語があります。SOAとは,本来,情報システム構築方法の一つで,例えば販売システムを在庫検索,発注,決済などの要素サービスの集合と考え,個々の要素サービスを互いに結合することによりシステムを構築する方法ですが,Webサービスをさらに一般化したものとして使われるようにもなりました。

Webサービスの特徴は,他人のシステムを組み合わせたり編集したりして独自のシステムを構築することにあります。Web2.0では,それが急速の発展をしてマッシュアップと呼ばれ,Web2.0の特徴の一つになっています。

Google Maps API
Googlは,地図サービス「Google Local」(http://local.google.co.jp/)を提供とともに,そのシステムとのAPI(Application Programming Interface)も公開しています。それを利用することにより,その地図上にレストランの位置を表示したり,他のサイトから該当する場所の地図を表示させるなど,新しいサービスを簡単に構築することができます。
Amazon E-Commerce
Amazon.comは,図書などの取扱商品のデータベースをアクセスするAPIを公開しています。これにより,図書名,著者,出版社,書評,ランキングなどのデータを取得できるので,特化した分野での図書紹介などのサービスを構築することができます。

Web2.0とビジネス

ロングテール現象

「売上の80%は,上位20%の商品により得られる」ことは,80:20の法則あるいはパレートの法則としてよく知られています。それで,従来のマーケティングでは,上位20%の商品を重点にするべきであり,残りの80%の商品(長い尾の意味で,ロングテールという)を在庫するのは無駄であるといわれてきました。いわゆる売れ筋・死に筋の考えかたです。

パレート曲線

確かに,スーパーやコンビニなどで有形の実商品を取扱うのであれば,この販売政策は正しいのですが,インターネットでソフトウェアや音楽などの無形のデジタル化された商品を販売するのであれば,その在庫費用も販売費用もあまりかかりません。書籍でも,それがデジタル化されていれば同じです。また,有形の商品の販売でも,インターネットで取次ぎをするだけならば,商品種類が多くても費用はあまりかかりません。
 インターネットのように,多様な関心を持つ多数の顧客を対象にしたときには,ロングテールの売上比率がかなり高いことが知られており,それをロングテール現象といいます。
 その有名な例がAmazon.comの書籍販売の例です。同社のインターネット販売では,通常の書店で取扱っていないロングテールの書籍が全体の1/3を占めているといわれています。

インターネット広告の変化

全体の広告費が景気に左右され伸び悩んでいるのに対して,インターネットによる広告費は毎年増加しています。
 特に,検索キーワードに関連性の高いテキスト広告を検索ページに表示する検索連動型広告やWebページ内容に関連性の高いコンテンツ連動型広告,携帯電話などのモバイル端末に対応した広告のシェアが増加しています。

アフィリエイト
アフィリエイト(affiliate)とは加入,提携の意味で,Webページやブログなどに自分で選んだ広告を載せます。閲覧者がその広告を経由して商品を購入したりサービスを利用したりした場合に広告主が広告料を支払うシステムです。Amazonアソシエイトが有名です。
アドワーズ広告
あらかじめキーワードを設定しておき,Googleの検索エンジンでそのキーワードが検索されたときに,その表示画面に掲載される広告です。その費用は,設定するキーワードの単価と掲載位置,クリック率で計算されます。
Googleアドセンス
逆に,Web作成者が利益をあげるために広告コーナーを掲げる手段です。Googleは,そのWebページに適したアドワーズのキーワードを配信して広告料を支払います。

●Googleでの各種サービス

Googleでは,単なる検索サービス以外に,Web2.0での多様なサービスをしています。それに関しては,
インターネットマガジン「Googleサービス徹底解剖」 (http://internet.impress.co.jp/rim/)
を参照してください。


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