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情報サービス業の課題と対策 選択問題


  1. 多くの情報サービス業(特に受注開発ソフトウェア業)が抱える問題点として,最も不適切なものはどれか。
     ア 既に企業のIT化は成熟しており,長期的に需要増加が期待できない。
     イ 景気の動向や国の施策などにより,受注量の変動が大きく不安定である。
     ウ 発注企業からのコストダウン要請,労働単価の安い海外への発注など,受注金額の圧力が高い。
     エ 中小の情報サービス業では下流工程の下請業務が多く,付加価値が低い。

    【解答】

    正解:ア

    アは×。IT投資は基本的に増加傾向
    イは○。そのため下請発注が多い
    ウは○。オフショア開発が増加
    エは○。イに関連。多階層下請構造
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  2. 受注開発ソフトウェア業で、下請構造になりやすい原因として,最も不適切なものはどれか。
     ア 労働集約型産業であり、しかも受注変動が大きい。
     イ 受注の内容(上流工程か下流工程かなど)での付加価値の違いが大きい。
     ウ 下請の技術力が高く、元請開発よりも優れた製品が得られる。
     エ 顧客企業からのコストダウン要請が厳しい。

    【解答】

    正解:ウ

    アは○。そのため、自社人員を減らしたい
    イは○。低付加価値業務を下請へ
    ウは×。この関係が望ましいのだが
    エは○。下請発注により買いたたく(これが問題!)
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  3. 情報システム開発での多重下請構造による弊害として,最も不適切なものはどれか。
     ア 末端下請が低価格契約を強いられ、その従業員の待遇も悪くなる。
     イ 発注企業の視点では、ニーズの正確な伝達、セキュリティ確保などでの不安が生じる。
     ウ オフショア開発が進み、日本の技術力・開発力の空洞化が進む。
     エ 低価格、短期間開発を下請でカバーしようとするため、本来の技術力向上への努力が阻害される。

    【解答】

    正解:ウ

    オフショア開発も下請構造であり、下請へのコスト削減につながるが、これを弊害だとするのは短慮。
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  4. ソフトウェア開発における下請構造を減らす手段として,最も副作用もなく健全なものはどれか。
     ア 開発契約に下請を制限する条項を加える。あるいは、それを法的に義務付ける。
     イ 大規模開発案件は分割して、中小企業ベンダへ直接発注すべき比率を法的に設定する。
     ウ 中小ベンダの技術力向上を図る。行政は、それを支援する施策を講じる。
     エ ソフトウェアパッケージの開発・流通の向上を図り、下流工程の業務を減らす。

    【解答】

    正解:ウ

    アは×。下請制限条項は必要だが、下請企業の受注機会を減らす副作用が考えられる。
    イは×。分割発注は望ましいことだが、発注者にシステムインテグレータ能力が必要
    ウは○。それにより、元請と対等な取引ができる。現に施策を講じている。
    エは×。これも望ましいが、その前提として中小ベンダが上流工程受託能力をもつことが必要
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  5. 受託開発ソフトウェアの見積りに関する記述のうち,最も適切なものはどれか。

    • ア 能力により一定期間に作成できるプログラムステップには大きな違いがある。その能力を正当に評価するために、プログラムステップ数に平均的なプログラマの生産性とコストを考慮した見積り方法を採用するのが適切である。
    • イ 情報システムの効果や費用は、業務分析やIT適用の工夫など上流工程が大きく影響するし、プログラミング段階でも部品の再利用やロジックの工夫により、開発すべきプログラムステップは大きく変化する。そのため、プログラムステップをベースにした見積りは不適切である。
    • ウ プログラムステップ数ではなく、開発に必要な職種・能力をもつ技術者の人数と期間(工数)をベースにするのが適切である。職種・能力は資格や標準スキルで判断できるので、工数により開発するシステムの機能や品質がわかる。しかも、この方法ならば、能力向上のインセンティブにもなる。
    • エ 発注者としては、要求した仕様のシステムが、期間内に低価格で実現すればよいのだから、プログラムステップ数や工数などには関係なく、全体の価格だけを知ればよい。受注者は、全体として利益をあげればよいし、たまたま技術者に余裕のあるときは、給与より安くても仕事を得るほうか得策である。このような理由により、見積りに関する考慮は無意味である。

    【解答】

    正解:イ

    エは×。このようなブラックボックスの見積りでは、発注者は複数見積りの比較ができないし、将来への学習にならない。受注者は原価計算ができず、プロジェクト管理もできない。
    アは×。その理由はイ。
    ウは×。職種・能力と工数でシステムの機能や品質がわかるとはいえない。システム開発の方法論、ソフトウェアの標準化・部品化など技術者以外の要素も大きい。
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  6. ソフトウェア開発契約に関する記述のうち,最も不適切なものはどれか。

    • ア 情報システム開発では開発中に想定外のリスクが発生する。初期段階で完成まで一括した契約をすると、実際に要した費用や納期が契約と大きく異なり、発注者と受注者の間でトラブルが発生することが多い。
    • イ そのようなリスクを回避するためには、外部仕様書作成までの上流工程、プログラム作成および実装までの下流工程、運用工程などに分割して契約するのが望ましい。
    • ウ しかし、同一のベンダに全工程を一括して発注するほうが、事情をよく理解しているので、作業が円滑になることもある。リスクが小さいと思われる場合には、一括契約にするほうが適切な場合もある。
    • エ 一括契約にすれば、もし上流工程で誤りがあっても、ベンダの責任で下流工程で修正するので安心だというメリットもある。

    【解答】

    正解:エ

    ア・イは○。アのリスクを排除するためにイを行う
    ウは○。望ましくはないが、このような場合もあるのは事実
    エは×。これが危険なのだ。ベンダの責任か発注者の責任なのかでトラブルが発生する。
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  7. パッケージソフトウェアに関する記述のうち,最も適切なものはどれか。

    • ア パッケージソフトウェアとは、箱に入ったソフトウェアのことであり、一般的には、パソコンソフトのことである。
    • イ ERPパッケージとは、企業の業務全体を統合したパッケージのことである。1990年代から2000年代前半にかけて大企業を対象に普及し、近年では中堅中小企業を対象にした比較的低価格の製品が普及してきた。
    • ウ 注文服のほうがイージーオーダー服より高いように、パッケージソフトウェアよりも受託開発ソフトウェアのほうが付加価値が高い。それで、従来のパッケージソフトウェア業を脱却して、受託開発ソフトウェア業になるのが適切だといわれている。
    • エ 近年、SaaSやクラウドコンピューティングなど、情報システムの所有から利用へとの変化が生じつつある。パッケージソフトウェアの需要が低下するので、その対処のためにも、パッケージソフトウェア業から受託開発ソフトウェア業へ転進すべきである。

    【解答】

    正解:イ

    アは×。ここでのパッケージとは「出来合いの」という意味
    イは○。参照:「ERPパッケージ」
    ウは×。パッケージは複数のユーザに売れるので付加価値が大。受託開発ソフトウェア業からパッケージソフトウェア業へ
    エは×。これらは、パッケージの利用をベースにしている。
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  8. 情報サービス業の将来発展に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。
     ア システム開発の契約では、開発にかかる工数に立脚した標準見積方式の確立が期待される。
     イ パッケージソフトウェアよりも付加価値の高い個別ソフトウェア受注へシストすべきである。
     ウ 中小企業の情報サービス業は、専門技術に特化することが期待される。
     エ SaaSが注目されているが、中小企業の情報サービス業には不向きな分野である。

    【解答】

    正解:ウ

    アは×。人月ベースの見積が技術力向上意欲を妨げている
    イは×。パッケージソフトウェアのほうが付加価値が高い
    ウは○。コアコンピタンスをもつことにより対等なパートナーに
    エは×。開発規模が細分化できる
    参照:「情報サービス業の課題と対策」

  9. 情報サービス業に関する記述のうち,最も適切なものはどれか。

    • ア ユーザ企業がベンダ企業に最も期待している能力の一つは提案力である。
    • イ 情報サービス業が、最も不足しているとしているIT技術者の職種はプログラマである。
    • ウ 情報サービス業が、付加価値を高めるには、個別ソフトウェア受注の割合を高める必要がある。
    • エ 専門技術に絞り込んだ小規模情報サービス業は、受注を得る機会が少ないので、なるべく広い分野の技術を持つべきである。

    【解答】

    正解:ア

    アは○。だからコンサルタントなどの職種が重要
    イは×。プロジェクトマネジメント、上流工程職種が不足。
    ウは×。パッケージソフトウェア開発へ
    エは×。これでは大企業との競争で負ける。ニッチな分野で対等な関係を
    参照:「情報サービス業の課題と対策」