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コンピュータグラフィックス

キーワード

コンピュータグラフィックス、CG、モデリング、ワイヤフレームモデル 、サーフェイスモデル、ソリッドモデル、スイープ、ポリゴン、OpenGL、レンダリング、スキャンライン、レイトレーシング、シェーディング、ラジオシティ、マッピング、アニメーション、モーフィング、モーションキャプチャ、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)、代替現実(SR)、仮想空間、プロジェクションマッピング

関連:「マルチメディアの取り込み・編集」「画像処理」


静止画像や動画像をコンピュータによって作成する技術を総称して、コンピュータグラフィックス(Computer Graphics、CG)といいます。ここでは、その基本技術を取り扱います。
 CGにはモデリングレンダリングの二つの作業があります。

モデリング(modeling)

モデリングとは、画像にする物体に関する数値データを作成することです。単純には、3次元物体の形状を模型化することです。

ワイヤフレームモデル
物体の頂点と稜線だけを示しています。記憶容量は少なくて済みます。配管図面など接続関係を示すには十分ですが、面の情報がないので、どれが陰線・陰面かが不明確です。
サーフェイスモデル
見える面に注目した方法です。曲面を複雑な形状のときは、多角形の面で近似します。それをポリゴンといいます。陰線消去、陰面消去ができます。しかし、物体の内部構成を知ることができません。
ソリッドモデル
物体を、いくつかの単純な形状(部品)の集合として扱う方法です。直方体、球などの典型的な形状の部品について、形状、表面積、体積などをデータベース化しておき、それらを組み合わせて物体を組み立てます。そrにより、表面積や体積、重心などが自動的に計算できます。
スイープ表現
例えば長方形を上下に移動すれば直方体になりますし、直角三角形を回転させれば円錐になります。このように、2次元図形の移動・回転などにより3次元物体を表示する方法です。
ポリゴン表現
複雑な形状をした物体や2次曲面や自由曲面は、小さな多面体が集まったとして近似するとき、その基本的な多面体のことをポリゴンといいます。個々のポリゴンごとに色彩や陰影を与えることにより、現実感のある画像にすることができます。
  • ボクセル:立方体のポリゴン
  • メタボール:球体のポリゴン

OpenGL(Open Graphics Library)

GPUを対象にした2/3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)のAPIの標準規格です。
 主として、ポリゴンなどの基本的多面体をリアルタイムに順序をもって画素化して合成して3DCGを描画する操作を対象にしています。
 GPUが持つ基本機能を直接呼び出せるだけでなく、プログラミング言語GLSL(OpenGL Shading Language)により複雑な機能も記述できます。OpenGLは、それらの機能をAPIライブラリとしてまとめ、OSSとして公開したものです。
 オープン仕様のため、多くのOSやプログラミング言語に移植または互換GLが提供されています。


レンダリング(rendering)

レンダリングとは、CG映像作成における最終段階として,物体のデータをディスプレイに描画できるように映像化する処理です。
 モデリングで得た物体に関する情報(物体の形状や頂点座標など)から画像を生成する技術です。視点の位置から陰面消去したり、光源の方向から陰影付けなどを行います。
 これらをデータだけで行うのですから、立体の三角関数を駆使した複雑で膨大な計算が必要になります。ここではそれには立ち入らず、代表的な手法を紹介するだけにします。

クリッピング(clipping)
画像表示領域にウィンドウ(表示枠)を定義して,ウィンドウの外側を除去し、内側の見える部分だけを取り出す処理です。
スキャンライン(scanline)
陰面消去の方法です。陰面消去とは、視点と物体との間に透明なスクリーンを置いたとして、そのスクリーンに見える2次元画像にすることです。
スキャンライン法では、視点と物体を結ぶ走査線の長さを求め、同一線上に複数の物体位置があるときは、最も短い長さの部分が「見える」とし、それをスクリーンにプロットします。
レイトレーシング(ray tracing)
レイトレーシング法は、逆に視点とスクリーンの各画素を結んだ線上に最も近い物体の要素を見つける方法です。陰影消去が主な目的ですが、このとき、光の方向による陰影情報などを同時に計算できるので、シェーディングも同時に行えます。広く用いられている方法です。
シェーディング(shading)
シェーディングとは、立体感を生じさせるために,物体の表面に陰影をつける処理のことです。例えば、物体の前方右上に光源があるとき、光の当たる面、陰になる面に濃淡や色の変化をつけることです。面が曲面だとか反射光も考慮するとなると複雑になります。
曲面をもつ物体を多面体で近似したとき、陰影を曲面らしく滑らかに見せる方法をスムーズシェーディングといいます。
 シェーディングを行うツールをシェーダといいます。まず頂点シェーダにより、モデルを構成しているポリゴンを三角形の連続としてとらえ、モデルの頂点の位置を、画面上の位置に変換します(ラスタライズ)。そして、ピクセルシェーダはにより、その三角形な内部の画素(ピクセル)に表示する色を付けます。
ラジオシティ(radiocity)
シェーディング方法の一つです。複雑な反射光を考慮した陰影付けの計算をすることにより、微妙な明るさの変化を表現できます。
テクスチャマッピング(mapping)
物体の表面に模様や画像を張り付ける技術です。
  • バンプマッピング
    張り付ける画像(テキスチャという)を先に用意しておき、その画像を物体表面にマッピングします。物体表面の見える角度や面の凹凸などを考慮する必要があります。
  • ソリッドテキスチャ
    バンプマッピングでのテキスチャは2次元画像ですが、それを3次元にしたのをソリッドテキスチャといいます。例えば、木材の木目を表現したいとき、どのような形状でも自然な木目にしたいようなときに使います。
  • 環境マッピング
    物体の周辺にある風景を取り込む方法です。例えば、対象物体がバックミラーの場合、バックミラーに映る風景を取り込むような場合に使います。臨場感のある画像になります。

アニメーション(animation)

アニメーションとは動画を生成する技術です。静止画像を連続させて動画像にする技術と、実際の人間の動きなどを分析して画像にするライブアニメーションがあります。

モーフィング(morphing)
複数の静止画を1枚ずつ連続表示することによって、動画が作成できますが、ある画像から他の画像へスムーズに変化するように中間になる画像を作成することにより、静止画の枚数を減らす技術です。二つの画像で変化する部分と変化の少ない部分、変化するときの特徴などを考慮することにより、自然な動きにすることができます。
From/To/By法
開始画面での位置(from)と終了画面の位置(to)および動きの方法(by)を与え、その間の画面に相当する部分はコンピュータが自動作成します。
キーフレーム法
From/To/By法を部品化して発展させた方法です。開始や終了の画面ではなく、目や口などキーとなる部品をオブジェクトとしてもち、それらの部品ごとに変化の時間や推移方法を指定します。個々のオブジェクトで終了画面までの枚数に相当する時間を変えることができます。
モーションキャプチャ(motion capture)
ライブアニメーションの一つです。例えば、運動選手の頭や手足などにセンサーを取りつけ、実際に運動しているデータを取り込みます。それを、CGで作成した人物に取り込んで、実際の動きに似た動きにすることができます。

XR(eXtended Reality)

近年、ディスプレイやセンサーの発展により、ディスプレイを組み込んだゴーグルやメガネ、センサーを組み込んだグローブなどを使って、視覚・聴覚・触覚を与えることにより、現実にはない世界を体験させる技術が発展してきました。それらの技術は、以下のように区分されますが、次第にその境界はあいまいになってきました。そのため、これらを総称したXRという概念も出てきました。

仮想現実(Virtual Reality、VR)
VRとは、「表面上は現実ではないけれど、その本質的な部分では現実」という意味です。ITにより利用者にとって現実感を伴う仮想的な世界を提供する技術のことです。現実世界を遮断した状況であり、ヘッドマウントディスプレイやVRゴーグルなどを使用します。
典型的な例に、フライトシミュレーション、医療や加工などの技術訓練、宇宙旅行疑似体験などがに使われます。バーチャル住宅展示場として、利用者はグーグルをかけて住宅内を自由に見て歩くというような利用も多くなってきました。
拡張現実(Augmented Reality、AR)
「周囲を取り巻く現実環境に、情報を付加・削除・強調・減衰させることによって、人から見た現実世界を拡張するもの」と定義されています。
ARもVRと似たような技術ですが、VRが仮想世界だけを対象にするのに対して、ARは、現実世界にITによる仮想世界を付加する技術です。現実世界と仮想世界の両方を同時に見るので、スマートフォンやARメガネなどの利用が一般的です。
例えば、VRでは平安時代の京都旅行という内容になりますが、ARでは、実際に五条大橋に行ってスマートフォンを見ると、現在の橋とともに牛若丸や弁慶が写っているというような内容になります。
大流行したスマートフォンゲームのポケモンGOは、スマートフォンのカメラを通した現実の景色の中にポケモンが登場するという、ARの例だといえます。
複合現実(Mixed Reality、MR)
ARが「現実世界を主とした風景に仮想世界を投影する」のに対して、MRでは「仮想世界に現実世界が入り込む」技術です。VRとも似ていますが、VRでは主に仮想世界が一方的に投影されるのに対して、MRは現実世界からの操作介入を重視しています。
MR用のメガネをかけると、目の前に設計した機械の3Dモデルが現れます。それに直接に手を触れることにより操作することができます。また、現実世界の位置情報を計測した仮想空間に実寸大の仮想機器を重ね合わせて表示し多様な角度から見たりする技術もあります。
代替現実(Substitutional Reality、SR)
ヘッドマウントディスプレイにより、現実の世界と仮想の映像を混同させて、本来実在しない人物や事象が実時間・実空間に存在しているかのように錯覚させるシステムです。ARと似ていますが、ARでは現実世界と仮想世界の境界が比較的明確なのに対して、SRでは混然とした状況を作り出します。
プロジェクションマッピング
プロジェクタのような映写機器を用いて、CG作品を建物、家具など凹凸のある立体物に投影する技術です。
通常は単なるCG放映ですが、歴史的な建物に、関連する人物や物語を投影することによって、複合現実などの効果をあげることができます。

メタバース(Metaverse)

仮想空間(Virtual Space)技術の発展による応用形態です。VRやARなどの技術を高度に組み合わせた3D仮想空間のことです。ゴーグルなどを使用する形態が主ですが、すでに設定してある仮想空間での簡単な操作をパソコンから操作する形態までも含むこともあります。
 アバタ(仮想空間での自分の分身)を介して、空間内を移動したり、他者のアバタとコミュニケーションしたり、店舗での買い物ができたりします。

通常のユーザが利用するには、メタバースへの参加料や取引代金などがかかります。その決済方法は、
   決済方法機能を切り離して、通常のネット販売のシステムで行う。
   暗号資産(仮想通貨)の仕組み(ブロックチェーン、NFT)を利用する。
   特定の仮想空間内でしか通用しない貨幣を用いる。
などまちまちです。

仮想人生は非常に危険な側面を持っています。浸りきるうちに、仮想人生こそが真実だと思い込んでしまい、それとは異なる現実世界が誤っているので破壊しようという行動になるかもしれません。自主的洗脳です。
 これは現実に起こっています。SNSなど情報発信が多様になると、ある集団は権力者Aを支持する情報だけを選択し、それのみが真実であると思い、他の情報に接してもすべて反対者の陰謀によるフェイク情報だとする傾向があります。権力者Bの支持者も同様だとすると、現実社会は深刻な対立・敵視の社会へと進んでしまいます。