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クライアント、TSS端末、シンクライアント、セキュアPC、ネットブック、ミニノート、Webクライアント、HTMLクライアント、MVC構成、リッチクライアント
1970年代に,1台のメインフレームに多数の端末(当時は「クライアント」といわず「端末(ターミナル)」といっていました)を通信回線で接続して,TSS(Time Sharing System:時分割方式)により共同利用する方式が普及しました。これにより,情報システム部門以外の人が直接にコンピュータを操作するEUC(End-user Computing)が普及しました。
当初の端末(クライアント)は,タイプライタに通信回線をつけたようなものでした(Silent 700の写真)が,すぐに、キーボードとディスプレイになりました。このときの利用では、すべてのデータやプログラムはメインフレームにあり、クライアントの指示により、すべての処理をメインフレームで行う形式でした。クライアントは入力をすることと結果を表示するだけでした。何もしないという意味でノンテリジェント端末ということもあります。
すべての処理をメインフレームで行うのですから、個別のアプリケーションごとに入出力画面をプログラムで作成する必要がありました。それで、アプリケーションごとに個別のファンクションキーを割り付けるなど,標準化されていない状態でした(反面、それなりに操作しやすい工夫はできましたし、また,あるアプリケーションを利用している間は,一つのセッションとして管理できたので,画面の切り替えやデータベースとのデータ交換などは,案外容易にできたのです)。
また、当時の画面は、現在のようなGUI(Graphical User Interface)ではなく、文字だけのCUI(Character-based User Interface)で,文字と枠だけの非常にシンプルなものでした(CUI画面の例)。
1980年代中頃になるとパソコンが普及し、メインフレームのデータをパソコンにダウンロードして、グラフ化やレポート化などの編集はクライアント側で行う利用方式が普及しました。
その後、ダウンサイジングが進み、現在のクライアントサーバシステムに移行しました。
パソコンを単独で用いるのではなく、サーバと連携したクライアントとして用いる場合、最小限の機能に絞ったクライアントのことをシンクライアント(thin client)といいます。
パソコンのワープロソフトや表計算ソフトなどのソフトウェアが充実し,その利用も広まりました。それらの機能が大きくなるにつれ,巨大なディスクが必要になり,性能を高めるために,大容量のメモリや高速なCPUが必要になりました。また、CD-ROMやUSBメモリなどの記憶装置との接続も豊富になりました。パソコンは、次第にファットPC(Fat PC:太ったパソコン)になったのです。1人に1台近いパソコンが設置されるようになりました。多数のパソコンに利用者を満足させるハードウェアやソフトウェアを提供するには,非常に多額の費用がかかります。
しかし、パソコンをクライアントとして用いるのであれば、処理はサーバで行うのですから、クライアントには画面表示機能(ブラウザなど)と入力機能だけをもたせるだけよいことになります。
1996年にオラクル社は、ネットワークにつながっているパソコンでは、最小限の機能だけをもたせればよく、それならば500ドルで提供することができるとして、ネットワークPCという呼称で発表しました。また、サン・マイクロシステムズ社もJava Stationと言う呼称で同様な概念のパソコンを発表しました。これらは通常のパソコンがfat(太った)パソコンであるのに対して、thin(やせた、スリムな)パソコンであるとしてシンクライアントといわれるようになりました。
ソフトウェアは機能拡充、性能向上のためにバージョンアップが行われます。パソコン台数は多く,事業所も散在している環境で,短期間でいっせいにバージョンアップするのは大変な作業になります。これらを円滑に行うには,多数のパソコンについて,ハードの仕様やソフトのバージョンを集中的に管理する必要があります。ところが,利用者が勝手にハードやソフトを購入していることもありますし,ディスクに大量のデータを保管しており空きスペースが不足しているために,単純にはバージョンアップできないこともあります。このように,ソフトの配布が大きな問題になります。
すべてのパソコンをクライアントとして用いることにすれば、サーバにあるソフトウェアだけをバージョンアップすればよいことになります。
しかも、そのクライアントをシンクライアントにすることにより、次のメリットが得られます。
なお、シンクライアントにすることは、情報セキュリティ対策として重要なのですが、これに関しては後述します。
このように、シンクライアントには利点があったのですが、現実にはあまり普及しませんでした。それには、次のような当時の事情があり、それまでパソコンに慣れていたユーザーの満足が得られなかったのです。
また、マイクロソフト社は、シンクライアントに類似した概念であるWBT(Windows-based Terminal)を発表しました。端末は通常のパソコンを想定したものであり、サーバの機能は進歩したのですが、パソコンがシンクライアントへ移行することにはなりませんでした。
2000年代中頃になると、セキュリティ対策の観点からシンクライアントが再注目されるようになりました。
モバイルコンピューティングが普及し、社員がノートパソコンを社外に持ち出して紛失や盗難にあい、重要な情報が漏洩したり、社員になりすました不正アクセス攻撃を受ける事件が増加しています。
自宅で業務を行おうとして、オフィスにあるパソコンから、必要な情報をコピーしたUSBメモリなどの紛失・盗難が多くあります。
P2Pウイルスに感染していた自宅パソコンから情報が流出する事件も多発しています。
2005年に個人情報保護法が施行になり、個人情報への関心が高まりましたが、個人情報漏洩は多発し社会的問題にまでなっています。個人情報漏洩の原因は、USBメモリの紛失や盗難、個人パソコンからのP2Pウイルスによる漏洩が大きな比率を占めています。
クライアントとして利用するのであれば、USBメモリやCD-Rなどを接続するコネクタは不要です。コネクタをもたないことにより、機密情報の持ち出しを防ぐことができます。
サーバで作成した画面情報をクライアントに表示するだけであれば、クライアントには内蔵ディスクすら不要になります。ディスクが必要な形態でも、サーバに接続したときにサーバから必要な情報をダウンロードし、切断したときに消去してしまえば、ディスクに情報は残りません。
このように、シンクライアントにすることは、セキュリティ対策として効果的な手段になります。このようにセキュリティの観点を重視したパソコンを、セキュアPC(sucure PC)といいます。
セキュリティを強化するためには、クライアントやサーバに、指紋認証などの本人認証手段の高度化や通信情報の暗号化などの対策が必要です。そのため、全体の費用では通常のパソコンよりも費用がかかる場合もあります。
しかし、セキュリティを重視すると、シンクライアントの採用が適切であると認識されることが多くなり、多くの企業がパソコンのシンクライアント移行を実施、あるいは検討をしています。
ネットブック(ミニノートともいう)とは、とは、インターネット利用を主目的にした、低価格のノートパソコンです。
2007年に台湾のASUSTeK Computer社の「Eee PC」を発売したのをきっかけに、多くのパソコンメーカーが参入するようになりました。
仕様は多様になり、高スペックのものも出現してきましたが、ほぼ次のようなものです。なお、デスクトップでも、この程度の仕様のパソコンがあります。
価格:5万円以下
OS: Windows や Linux の下位版
(パソコンと同様なアプリケーションが利用可能だが、Officeソフトなどは別売りが多い)
CPU:低価格で省電力(インテルのAtom、AMDのGeodeなど)、1.6~2GHz
(デュアルコアを搭載する上位機種も出てきた)
ディスプレイ:サイズ8.9、10インチ、解像度1024×600
メモリ:1GB程度
ディスク:小容量10GB程度と大容量160GBに二極化、SSD搭載機種が多い
無線LANボード内蔵(ブロードバンド対応)
バッテリー時間:3~6時間程度
重量:1kg 程度
通常のパソコンとして利用することもできますが、性能が低いため、ヘビーな利用には向きません。しかし、インターネットの利用や、出先での簡単な利用、プレゼンテーションなどには十分です。それで、次のような用途に適しています。
初心者用(子供用)の入門機
熟練者のセカンドマシン(実験用、外出用など)
モバイル端末(携帯電話やPDAよりもパソコン的な利用ができる)
この普及の背景には、インターネットサービスが発展して、ソフトウェアやデータをパソコンにもつ必要が少なくなったことがあります。パソコンにOfficeソフトがなくても、インターネットで同様なツールが無償で使えます。電子メールや画像もインターネットで無料保管できます。
このように一時は期待されたネットブックですが、その後ノートパソコンの軽量化や低廉化、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末の普及により、現在では特殊な目的以外には見られなくなりました。
これはハードウェアの区分ではありません。主にインターネットやWebブラウザを用いる利用形態です。
インターネット、その技術を社内ネットワークに応用したイントラネットの普及により、多くのアプリケーションが、Webブラウザをヒューマンインタフェースとして用いるようになりました。
そうなると、クライアントには、Webブラウザがあれば業務を行うことができます。このようなクライアントをWebクライアントといいます。
Webクライアントは、単純な機能で実現するHTMLクライアントと高度な技術を活用するリッチクライアントに区分できます。
Webクライアントのうち、Web閲覧を主とする場合、リッチクライアントと区別してHTMLクライアントといいます。
HTMLクライアントの利点、あるいは、クライアントをWebブラウザとしてアプリケーションを構築・利用する利点には、次のことがあります。
HTMLクライアントは,もともとWebページ表示用に作られたブラウザを、業務用のクライアントに応用するのですから,実際にはいろいろな限界があります。
上述のように、HTMLクライアントの環境では、クライアントよりもサーバに関する事項が重要です。それには、サーバをMVC構成にするのが適しています。MVCとは,Model(処理),View(表示),Controller(制御,入力)のことです。
リッチクライアント(Rich Client)といってもハードウェアが高級などではありません。は、通常のパソコンを用い、HTMLクライアントと同様にWebブラウザでサーバと連携して業務を行います。HTMLクライアントでの限界をWeb技術の発展により解決するものであり、そのためのソフトウェア製品を指すのだと理解するのが適切です。
HTMLクライアント、すなわち、従来のWeb閲覧環境では、業務として活用するには重要な欠点がありました。リッチクライアントでは、WebとファットPCの機能を組み合わせることによりHTMLクライアントの欠点を解決します。単純にいえば,ファットPCとHTMLクライアントとの「いいとこどり」をしたような方法です。
2000年中頃から、Webブラウザ本体だけでリッチクライアントを実現するAjax(注)が出現したこと、オープンソースのリッチクライアント開発環境が実用レベルに到達したことにより、リッチクライアントを容易に構築できるようになりました。
(注)Ajax(Asynchronous JavaScript + XML)とは、WebサーバからXMLのデータを読み込む機能のより、クライアントとサーバの間の通信を非同期に行なうことで、パソコン機能とWeb機能をシームレスに結合する方法です。この代表的な例がGoogle Mapsです。ページ全体を読み込むことなく地図を拡大したり,移動させたりすることができます。
通常のWeb環境では、処理がサーバで行われるため、応答性が悪いという欠点がありました。リッチクライアントでは、Ajaxの非同期通信機能を利用することにより、Webページを再アクセスすることなく、オフラインで利用できます。すなわち、リッチクライアントでは,パソコンで処理できることは,サーバに接続しなくてもクライアント側で処理できるようにします。
それにより,次のような効果が得られます。
Web2.0といわれるように、Web環境が発展してきました。特にAjaxを利用したGoogle Mapsのようなサービスが提供されており、しかもそのAPI(Application Program Interface:利用仕様)を公表しているものもあります。それを用いることにより、例えば地図上に自社店舗の情報を付け加えて、自社の店舗管理システムと連携させることが容易になります。
また、自社の情報をこのような形式で公開することにより、他社から利用してもらうことができます。
リッチクライアントは、その実現方法により、次のように区分できます。