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クライアントの発展

学習のポイント

企業での多くのパソコンは、ネットワークに接続します。そのときのパソコンをクライアントといいます。ここでは、クライアントの種類とその発展について理解します。

キーワード

TSS端末,クライアントサーバシステム,Webクライアント,HTMLクライアント,リッチクライアント


クライアントとサーバとの関係

コンピュータを用いてデータ処理を行うには、次の3つの機能が必要です。これを3層構造といいます。

データ
利用者情報や売上データベースなどの情報を保管して必要に応じて利用できる機能
ファンクション
利用者の指示により、データを処理する機能。プログラム群と理解してもよい。
プレゼンテーション
画面表示や入力など、利用者とシステムのインターフェースを行う機能

クライアントとサーバの関係は、基本的にはクライアントからの要求によりサーバが処理を行い、その結果をクライアントで表示する関係です。すなわち、データとファンクションはサーバが担当し、クライアントはプレゼンテーションを担当します。
 しかし、サーバが表示する画面まで作成して、クライアントはそれを表示するだけの形態もあるし、Webページ閲覧のように、サーバはデータだけをクライアントに送り、クライアントが実際の画面に組み立てて表示する形態もあります。さらには、通信回線を切断したオフラインの状況でもクライアントだけである程度の処理を行わせる形態もあります。
 クライアントにどのような機能をもたせるかにより、クライアントとなるパソコンの仕様が異なります。単に画面表示を行うだけならば、キーボードとマウス、ディスプレイだけがあればよく、OSも不要で磁気ディスクすら不要になりますし、クライアントで何らかの処理を行うのであれば、それに必要なハードウェアやソフトウェアをもつ必要があります。

クライアントの種類

クライアントの種類を、それが出現・普及した順序により掲げると、次のようになります。

メインフレーム環境での端末

TSS端末
1970年代に,1台のメインフレームに多数の端末を通信回線で接続して,TSS(Time Sharing System:時分割方式)により共同利用する方式が普及しました。
このときの利用では、すべてのデータやプログラムはメインフレームにあり、クライアントの指示により、すべての処理をメインフレームで行い、クライアントは入力をすることと結果を表示するだけの形式でした。メインフレームを本体だとすれば、本体とキーボードとディスプレイをネットワークで接続しただけの形式です。
→参照:「TSS端末」(hs-client-tss
パソコンのクライアント化
1980年代になると、パソコンが普及し、パソコンをTSSの端末として利用するようになりました。しかし,TSS端末としての機能とパソコンとしての機能は分離されており、TSS端末としては、上記の端末と同じでした。
メインフレームとパソコンの連携
パソコンの機能が向上するのに伴い、メインフレームのデータをTSSによりパソコンにダウンロードして、パソコンで多様な2次加工する形態が多くなりました。

クライアントサーバシステムでのクライアント

クライアントサーバシステムへの移行
パソコンの価格性能比はますます向上して、1980年代末頃から、クライアントサーバシステムへの移行が進みました。しかし、当初の環境では、個々のアプリケーションによりインタフェースが異なり,パソコン側にそれぞれのインターフェースのためのソフトウェアをインストール必要がありました。あるいは,データをサーバに置いておき,パソコン側のアプリケーションで処理する形式もありました。
イントラネット
1990年代の中頃から、インターネットが急激に発展して普及しました。それに伴い、クライアントサーバシステムでも通信プロトコルにTCP/IPを使うようになり、プレゼンテーションにWebブラウザを用いるアプリケーションが多くなってきました。このようにインターネット技術を社内ネットワークに適用した形態をイントラネットといいます。この環境になると、Webページを閲覧し、データを入力することで業務を行うことになり、クライアントにはWebブラウザ以外に特定のソフトウェアを載せる必要はなくなります(実際には無理がありますが)。

シンクライアントとリッチクライアント

シンクライアント
この間に、パソコンの機能は急速に発展しました。多くのソフトウェアが利用できるようになった反面、ハードウェアに高い性能が求められるようになりました。しかし、ネットワークにつながっている場合には、データやソフトウェアをサーバにおいて処理するのですから、クライアントには、画面表示機能(ブラウザなど)と入力機能だけをもたせるだけですみます。このような最小限の機能に絞ったパソコンをシンクライアント(thin client)といいます(それに対して、通常のパソコンをファットPC(fat PC:太っちょの意味)といいます)。
シンクライアントの採用には次の利点があります。
  • 余計なハードウェアやソフトウェアが不要になるので、クライアント費用が安価になる。
  • ソフトウェアのバージョンアップに際して、サーバだけを対象にすればよく、個々のクライアントについて行う必要がなくなる。
  • パソコンの故障によるデータ消失に対処するためにバックアップを励行する必要があるが、すべてのデータをサーバで保管するため、バックアップの必要がない。
  • データがサーバで一元管理されるので、情報の共有化が容易になる。
  • パソコンの紛失や盗難があっても、パソコンに情報が残っていない。USBメモリなどの補助記憶媒体が不要なので、データの不正持出しが防げるなどのセキュリティ効果がある(セキュリティに関しては後述します)
このような利点があったのですが、当時(1990年代後半)では、あまり普及しませんでした。その理由として次の事情があります。
  • 円滑な利用をするには、当時の通信回線速度が遅かった。
  • すべての処理をサーバで行うには、高性能なサーバが必要になるが、当時では非常に高価であった。
  • 普及が進まなかったので、この環境に対応した技術が発展せず、円滑な運用が困難であった。
  • 通常のパソコン価格が低下したため、価格メリットが相対的に低下した(これが決定的な理由)
→参照:(「シンクライアント」
近年、安価なパソコンとして、ネットノート(ミニノート)パソコンが普及してきました。シンクライアントが部品やソフトウェアを削除して安価にしているのに対して、ネットノートは性能の低い構成にして安価にしています。インターネット利用やモバイル用に用いられます。(→参照:「ネットノート」
HTMLクライアント
インターネット、イントラネットの普及により、クライアントにはWebブラウザだけがあればよいことになります。そのようなクライアントをWebクライアントといいます。
これはシンクライアントの一つだともいえますが、通常のパソコンを使うこともあります。また、Webクライアントというと、後述のリッチクライアントも含むこともあるので、それと区別するために、HTMLクライアントといいます。(→参照:「HTMLクライアント」
リッチクライアント
リッチクライアント(rich client)とは、ハードウェアの区分ではありません。「高い描画能力(表現力),高い操作性の作りこみ易さ,クライアントリソースの有効利用が可能,配布が容易,の4つの特徴を持つWebアプリケーションのクライアント技術」(野村総研)のことです。このような技術は、AjaxのようなWeb2.0技術の普及により、かなり実現されるようになりました。
リッチクライアントでは,パソコンで処理できることは,サーバに接続しなくてもクライアント側で処理できるようにします。そのため、ハードウェアとしては通常のパソコンが用いられます。クライアントにソフトウェアを搭載することになりますが、クライアントがサーバにアクセスしたときに,変更するべき新アプリケーションをダウンロードすることにより,配布問題を解決します。(→参照:「リッチクライアント」
セキュアPCとしてのシンクライアント
インターネットの普及に伴い、パソコンを携帯することが多くなり、その紛失や盗難により機密情報が流失したり、社員になりまして不正アクセスを受けることが多くなってきました。また、2005年に個人情報保護法が施行されましたが、個人情報流失事件が多く、社会的な問題になりました。
セキュリティを重視したパソコンをセキュアPC(secure PC)といいますが、これは基本的にはシンクライアントです。また、この間に通信回線の高速化、サーバの高性能化、サーバ技術などが発展して、シンクライアントの実用化のための環境が整ってきました。
そのため、現在では、社内のパソコンをシンクライアントにする企業が多くなってきました。(→参照:「シンクライアント」