生成AIとは
生成AI(Generative AI)には、多様なツールやサービスがありますが、ここでは身近に利用できるサービスに限定します。
次のような場面で利用されています。
- チャット(テキスト)
通常の検索エンジンでは、与えたキーワードによく合致したWebページを表示するのに対して、生成AIでは、日常の文章での質問をすると、膨大な情報からAI技術を用いて、自然言語で回答します。チャットAIともいわれるように、即座に回答が表示され、それに関連した審問をするなど、AIと会話をしながら進めることができます。
- 言語翻訳
多くの生成AIツールは、多言語対応になっています。従来から言語翻訳サービスは普及してきましたが、生成AIでは不完全文章でも類推する機能が高いこと、不十分な部分を修正できること、日常会話や発表などの環境指定ができるなど、きめ細かい翻訳ができます。また、文章・音声変換も容易な特徴があります。
- 画像生成、音楽生成
「ネコとイヌが一緒に寝ているイラスト」、写真A・Bを掲げて「写真Aの顔を写真Bに変える」、「○○駅に適した4小節の発車メロディ」などに応じた写真や音楽が生成されます。
- プログラムの作成、修正
例えば「単一変数。一次式の最小二乗法のJavaScriptプログラム」と質問すると、ソースリストが表示されます。「二次式で」とか「独立変数が2個の場合」「C言語で」などの条件変化にも応じます。
未だ生成AIの厳格な定義はありませんが、従来のAIと比較して次のような特徴があります。
- 初心者でも使える
ChatGPT や Bard など、通常のインターネット環境で無料で使えるサービスが普及しています。質問の仕方に巧拙はあるにせよ、AIを全然知らない初心者でも回答を得ることができます。
- 自然言語での質問・回答
生成AIでは。自然言語解析の成果を反映しています。そのため、質問文章がある程度不明確であっても妥当な解釈をしますし、回答もかなりこなれた日常的な表現になります。また、先の質問・回答を記憶しているので、前の質問の続きで追加できます。さらには「ありがとう」に対して「お役に立ちうれしいです。またどうぞ」のような日常慣習まで組み込んでおり、違和感がありません。
- 事前学習されている
従来のAIでは、問題提起に応じてモデルの設定や教師あり学習などの個別学習が必要でした。それに対して汎用的な生成AIでは、継続的に大量情報の学習を行っています。そのため、初心者でも使え、応答時間が短かいのです。
生成AIへの期待
上述のように、生成AIは日常生活でも期待できますが、さらにビジネスや政治など広い分野での活用が期待されています。
- 調査・企画業務
文章を作成するのは面倒であり時間がかかります。生成AIの利用は単純な生産性向上につながります。さらに重要なのは。担当者の知識や固定観念を超えて、無視していた統計や観点を気づく機会になることです。社内外の法規や規程との整合性確認などはコンプライアンスの確保に重要でしょう。
- 研究業務
専門型の生成AIを用いることにより、分子構造や制御反応などの理論研究やシミュレーションなどへの適用が期待されます。
- 政策立案
さらには、教育、金融、経済。安全保障など国家レベルでの政策立案などにも利用できるといわれています。
生成AIのリスク
反面、生成AIは影響が大きいだけに、深刻なリスクの懸念があります。特にインターネットを基盤とした巨大国際企業の寡占状態になっており、一国での対応では限界があり、国際的な協調対策が必要です。2023年の広島サミットの重要課題の一つにもなりました.。
総務省 AI戦略会議「AIに関する暫定的な論点整理」2023年では、次のリスクを掲げています。
- 機密情報の漏洩や個人情報の不適正な利用のリスク
検索対象者の情報は、単なるキーワード検索よりも総合的な情報になる。
何を検索したかの情報がAIに取り込まれるリスクがある。
- 犯罪の巧妙化・容易化につながるリスク
生成AIにより生成された精緻な画像・音声や巧妙な文章が、オレオレ詐欺等に利用される可能性がある。
武器、大麻や覚醒剤、麻薬の製造法等の情報が犯罪につながる可能性がある。
- 偽情報等が社会を不安定化・混乱させるリスク
画像加工などディープ・フェイクが簡単にできる。
- サイバー攻撃が巧妙化するリスク
チェックツールで検知しにくい攻撃メールの作成などが増加する。
- 教育現場における生成AIの扱い
生徒の宿題や学生のレポートなどに使われるリスクがある。
- 著作権侵害のリスク
オリジナルに類似した著作物を生成する機会が増加する。
映像制作の効率化のため、クリエーターの権利が部分化される。
- AIによる失業者増大のリスク
文書作成、画像制作など、より広い分野・職種で(創作・創造的な業務においても)失業者が増える懸念がある。
その他、生成AIでの回答が断定的な口調なために、あたかも真実であるかのように誤解させる傾向があること、回答の基礎になる情報そのものに誤りがあったり、推測の方法で誤りを生じたりしても、検証が困難なことによるリスクがあります。