━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ IT Pro Executive Radar by 日経情報ストラテジー     2004/01/14 ……………………………………………………………………………………………… 〜 IT経営に関するニュースやトレンドを毎週お届けします 〜 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コ┃ラ┃ム┃ 木暮仁の「情報化の法則」(経営情報におけるマーフィーの法則) ━┛━┛━┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「CIO論議の自己矛盾」 日経情報ストラテジー2004年2月号で「次世代CIOを育てる」という特集があ った。それに関するマーフィーオロジストの見解。 ●「次世代CIOを育てる」の矛盾  営業部門出身者や経理部門経験者がいない経営陣は想像できない。ところが,IT 部門経験者が経営陣に1人もいない企業はザラにある。営業担当役員や経理担当役員 をどう育てるかの話題はあまり聞かないのに,CIOだけが話題になること自体が奇 妙である。もし,その企業にとって,ITがマーケティングや財務と同様に重要であ るならば,経営陣の全員が自社の販売政策や財務状況を理解している程度には,CI Oになれる程度のITへの認識を持っているのが当然である。あえて「CIO」を育 てる必要があるというのは,そのような素質を持つ経営陣がいない証拠である。  なぜいないのか? それには二つの仮説が考えられる。 仮説1:情報技術の活用は経営にとって重要であるのに,経営者がそれに気づいてい     ないか,気づくのが遅かったのだ。  経営と情報の関係に関しては,経営者が新入社員だった頃ですら言われていたし, SIS,BPR,IT革命など5年おきに大騒ぎしてきた。経営者が環境変化を認識 することが最大の任務であるのに,それに気づかなかったというのは,経営者失格で ある。CIOを育てる前に,現在の経営陣にご引退いただくべきであるし,そうしな い経営陣は背任行為である。次の株主総会に期待しよう。 仮説2:本当は,その企業では,情報技術の活用はマーケティングや財務ほど重要で     はないのだ。経営者はそれを知っているから,限られた経営陣にIT経験者     を加えないのだ。  そうだとすれば,「情報化が重要だ」とか「経営者が積極的に参画せよ」と経営者 を脅迫して,むりやりに情報化に関心を持たせるのは,本来の任務をなおざりにさせ, 経営を誤らせることになる。ベンダや情報システム部門の陰謀か?  陰謀だとすると,経営者へのアンケートで「情報は企業経営の武器だ」とか「情報 システム部門は戦略部門になるべきだ」という回答が多いが,これは経営者のホンネ ではなく調査者へのお世辞なのか? これすらIT部門がウソの代筆をしているのか? ●系:IT投資論議の自己矛盾  情報化投資の採算性が大きな問題になっている。その理由は,経営者にとって店舗 投資や生産設備の投資とくらべて,情報化投資がわかりにくいからであろう。わかり にくい理由は,自分が情報化に関して経験知識がないからだ。情報化投資の評価が経 営上重要なのならば,それができる者を経営者にすればよいのだから,少なくとも情 報化投資が問題だという経営者は,経営者にはそのような経験知識は不要だといって いるのであり,情報化は経営には相対的重要度が低いといっているのと同じである。 ●系:IT部門戦略部門化の自己矛盾  これにも矛盾がある。経営陣やゼネラルスタッフにITを認識できて,ガバナンス を確立できる人材がいるのであれば,あえてIT部門を戦略部門にするのは屋上屋を 重ねることになる。そのような人材がいないということは,上記の理由により,IT 部門が形式的に戦略部門になったにせよ,実質的な活用をするだろうか? これらの系については,別機会にもっと掘り下げたい。